災害は時と場所を選びません!24時間いつでも起こる可能性があります。
今年で発災から6年前の「東日本大震災」は昼間に発生しましたが、平成7年の「阪神淡路大震災」は早朝に発生しました。
では、寝静まっている時間帯に災害が起こったらどうなるのでしょうか?
今から35年前の深夜に発生した「ホテルニュージャパン火災事件」を振り返り「不意の災害」から身を守る教訓を学び取ってみます。
火災の状況
起きている人が少なかった
1982年2月8日の午前3時24分頃、東京都千代田区ホテルニュージャパンの9階にある客室より出火し10階まで延焼、死者33名負傷者34名という痛ましい火災事件が起こりました。
火事の原因は「たばこの吸い殻」と推測されており、客室内での喫煙が許されているホテルなら何処でも起きる可能性のあったものでした。
しかし、被害を拡大したのは他に大きな理由があります。
火災が最初に発見されたのは、偶然仮眠を取りに9階まで上ってきたフロント係で、臭いと煙が客室の隙間から出てきているのを確認しています。
つまり火災警報器や自動火災報知器が全く機能していなかった事になります。
従業員は初期消火を試みていますが、消火器では消し止められなかったのは仕方ないとしても、せっかくホースを伸ばして使おうとした屋内消火栓が設備側のトラブルで使用できない状況だったのは不幸としか言いようがありません。
更に被害を大きくしたのは、スプリンクラーや防火扉などの消火設備の不備に加えて、従業員が非常事態に関する教育や訓練を受けていなく適切対処が出来なかったことであります。
深夜に起きた火災で殆どの利用者が寝てしまっていた為、避難が遅れてしまいました。
避難を促す放送設備も充分に機能しませんでした。
取り残された人々は消防隊の到着によって救助が行われるのを待つ必要がありましたが、迫りくる熱と煙に耐えられなくなり、飛び降りて亡くなられた方もいらっしゃいました。
残された教訓
防災訓練の徹底と声掛け
「ホテルニュージャパン火災事件」は、防火設備の改善を消防庁から求められながら改善していなかった社長の責任が追及され、業務上過失致死傷で実刑判決を受ける事になりました。
従業員への避難誘導訓練も行われておらず、初期対応に大きな遅れが出てしまいました。
この事件に於ける教訓は防火設備だけでなく、「防災訓練が行われていなかった事」が被害拡大に繋がったと考えられます。
いくら防火設備が優れていても、利用者の避難が確実かつ迅速に行われなければ被害者を出してしまう可能性があるのです。
例えば、放送設備に不具合があった場合は、客室ひとつひとつをノックして回るだけでも、火災の危険性を知らせる事に一役かった事でしょう。
しかし、火災の恐怖が迫るなか、訓練を行っていない従業員に最善の行動を求める事は難しかったと考えられます。
防火訓練を行う事によって、従業員の動きがスムーズになると共に施設等の不備や規則類の問題点も把握する事が出来て、改善につながって参ります。
そこで、従業員の方々へ防災訓練を徹底する事が重要となりますが、同時にホテル等の利用者となる私たちも地元の防災訓練などに参加する事をオススメします。
火災が起こった時は周囲がざわついたり、物が焦げる臭いがしてきます。
その様な兆候を感じ取ったら、素早く避難出来るようにするには日頃から訓練を重ねるしかありません。ホテルに着いたら「くつろぎたい」と思いますが、先ずは「非常口と避難経路の確認」が大切ですね。部屋に案内された時、従業員の方から説明を受ければ「この宿泊施設の防災教育はなされている」と確認する事が出来て安心すると思います。
旅行先でも自宅でも、火災などの災害は常に身近な場所に潜み、24時間いつでも発生する可能性があります。
日頃から火元の始末を徹底すると共に、万が一の時に避難出来る心構えを持っておきましょう。
業者の安全管理と利用客の声
防災設備の後回し
ホテルニュージャパンはそもそも「防火対策」などの「宿泊機関が本来行っているべき安全対策」を行っておりませんでした。
そして、運営会社は現在も継続しているもののホテルニュージャパンは再建の目途が立たないまま、2002年に森ビルが建設したプルデンシャルタワーが出来るまで跡地は放置されていました。
ホテル側は内装・装飾品に資金を充当してホテルのステータス向上を狙っており、防災設備に関しては再三の勧告があったにも関わらず後回しにしておりました。
保険と同様に、「どの程度の資産を防災に回すのか」という判断は経営サイドが決定するものですが、「宿泊施設の格付け」は安全面を含めて、我々利用者がしていくものであります。利用客からのアンケート等により全般的な安全性が高まってくるものと思います。「見た目だけの華やかさ」に惑わされないようにする事が必要ですね。
宿泊した時「何気なく置いてある一枚のアンケート」、安全面を含めた皆様の声を合わせれば、経営者の感覚も変わってくるものと思います。
まとめ
・ホテルニュージャパン火災事件では防火設備の不備や避難誘導の不徹底で被害が拡大した
・深夜の災害は気が付く事が困難な為、防災施設の整備だけでなく防災訓練を徹底する必要がある。