さまざまなものを一瞬で奪い取ってしまうのが火事の恐ろしさです。
だれもがこれを恐れていますし、これが起きないように慎重に対策をしています。
しかし、子どもの行動というのは、常に大人の上をいきます。
たとえば、子どもの遊びで火事が起きてしまった場合、親の責任はどうなるのでしょうか?
法律で定められている「親の責任」
火事と子どもの関わりについて見る前に、まずは、「法律では、保護者の責任をどのようにして判断しているか」について見ていきましょう。
日本では法律によって、10歳までの子供の場合、責任を問うことはできません。まだ本人が小さいため、そもそも責任能力や判断能力がない、という考え方をしているのです。また、11歳から14歳の場合でも、刑法においては責任能力がないとされております。
※参考:刑法第41条(責任年齢)十四歳に満たない者の行為は、罰しない
これに対して親は、これらの年齢の児童の監督責任を負うことになります。
つまり、子どもがなんらかの行為によって人の財産を害した場合は、親がその責任を負うことになるのです。
実際の例について
もっとも、その責任のすべてを親に対して課す、というのはそれほど現実的なことではありません。
親の保護責任については、「親が子どもの監督をきちんとしておらず、その監督において重大な過失があったと認められる」とされた場合のみ、賠償責任を負うことになります。
しかし、いくら保護者といっても四六時中、子どもから目を離さずにいられるわけではありませんし、大人では想像もつかない行動によって火事を起こすこともあります。
火事の場合、「重大な過失があった」と認定することは非常に難しいため、実際の裁判においては、親の責任を問うことはほとんどありません。
逆に、子どもが年齢的に「責任を負える年齢」であるときに火災を起こしたとしましょう。
この場合、子どもに責任があるとはいえ、15歳程度の子供に損害賠償ができるわけではありません。また、親の責任がまったくない、とまで言えるわけではありません。そのため、子どもが「この火事に対して責任がある」とされた場合は、親にも損害賠償する責任が発生します。
また、火事は、人の人生そのものをも奪いかねないものです。たとえ法律的に責任が問われなかったとしても、親にはやはり、社会通念上の「責任」が求められます。特に、「家でいたずらをしていて火事が発生、となりの家までをも焼いてしまった」というような場合、まったく何の賠償もしない状態で、この土地に住み続けるのは難しいと思われます。
このため、責任の有無に関わらず、子どもに「火事を起こさないための教育」をしていくことは非常に大切です。
まとめ
・11歳未満の子供には責任能力がない。親は保護者として監督責任を負う
・子どもが火事を起こした時、親の責任の立証は困難である。そのため親が損害賠償を負うことは基本的にはない
・社会通念上、まったく賠償を負わないというのは難しいこともある