家庭内事故で命を落とすのは、高齢者が最も多いです。平成29年の家庭内事故による死亡者数を見てみると14,671人のうち、65歳以上の高齢者の死亡者は12,683人となり、全体の8割を超えています。前年度と比べても割合に変化はないので、事故に対する対策がされていないのかもしれません。
このように高齢者の場合、自宅だからとって油断しているとふとしたきっかけで命を落とす事態になりかねないので早急に対処していく必要があります。
それでは、家庭内事故での高齢者の怪我や死亡事故を防ぐ為には、どのような対策をしていけばいいのでしょうか。
高齢者による家庭内事故の実態
2010年12月から2012年12月末までの2年間に行われた独立行政法人国民生活センターによる家庭内事故の調査によると、20歳以上の事故は1,631件報告されています。そのうち、65歳以上の高齢者の事故は669件となり、全体の41%にあたるのです。
また、高齢者による家庭内事故の件数には性別による差はありませんが、男女とも75歳以上になると事故が起きやすくなるという結果が出ています。そして、75歳以上は重症化するリスクも高くなり、平成29年では65歳から79歳までの家庭内事故の死亡者数4,741人に比べ、80歳以上の死亡者数は7,942人になると報告されているのです。
次に、事故内容についてですが、65歳以上では階段での転落や転倒による事故が多く見られます。その他にも玄関の段差でつまづいたことで尻もちをつき、骨折したというケースやベットから転落して骨折というケースがあります。
このように75歳以上になると、骨の構造が弱くなる傾向があるため、転倒すると骨折しやすくなるのです。若い世代であれば骨折しても回復が早いのですが、高齢者の骨折を甘く見てはいけません。高齢者は骨折によって寝たきりになったり、骨折したことに精神的にショックを受け、外出しなくなることがあるからです。すると、家に引きこもることで心肺機能が衰え、身体機能に影響をもたらしたり、認知症も進行すると言われています。
このように、高齢者が自宅で転倒するということは命にかかわる事態になりやすいということなのです。
高齢者が家庭内事故で命を落とさない為の対策
階段から転落するという重大な事故を起こさないためにも、手すりや滑り止めをつけたり、足元を照らす照明器具をつけるといいでしょう。また、転倒事故は居間や寝室で起こることも多いので床に物を置かず、常に整理整頓しておく必要があります。それから、ほんの僅かな段差もつまづく原因となるため、段差をなだらかにするといった工夫をすることも大切です。
高齢者の多くは年齢を重ねると、同時に2つのことを行うのが困難になります。今行っていること以外に注意を向けることが難しくなるので、些細なことがきっかけで転倒や転落に繋がってしまうのです。自分自身ではできているつもりでも、年齢による身体機能の衰えには抗えないものです。身体能力を過信することなく、普段から注意することが大切です。可能であれば電球を変える、高い位置にある物をとる等、脚立を使う作業は自分自身でするのではなく家族にしてもらうようにしましょう。
まとめ
・高齢者は年齢があがるほど家庭内事故で重傷化しやすい
・階段からの転落事故が最も多い
・高齢者は骨折したことによる心身的な後遺症が大きい
・階段に手すりや照明器具をつける工夫が必要
・高齢者は同時に2つのことを行うのが困難になるので作業する際は注意が必要
参考サイト
◆独立行政法人国民生活センター:「医療機関ネットワーク事業からみた家庭内事故-高齢者編」
◆厚生労働省:「人口動態統計年報 主要統計表(第18表)」