死亡事故が起こるのは、外出先だけとは限りません。事実、年間で多くの人が家庭内事故により命を落としています。自宅は安全な場所だと油断していると、思わぬところで怪我をしたり、最悪の場合命にかかわる事故に見舞われるかもしれません。ましてや幼いわが子や高齢者は自宅で過ごす時間が長いので、特に気をつける必要があるのです。
自分の身を守るためにも、そして大切な家族の命を守るためにも、まずは家庭内事故の実態を知ることから始めましょう。自宅のどこに危険が潜んでいるのかを知ると、普段から危機管理の意識が高まります。
家庭内事故の実態
厚生労働省平成29年(2017)人口動態統計(確定数)の概況によると、平成29年に不慮の事故で死亡した40,329人のうち、家庭内事故での死亡者は14,671人にのぼりました。これは全体の約36%にあたります。
前年の平成28年では、不慮の事故による死者数は38,306人、そのうち家庭内事故の死者数は14,175人となり、29年と28年を比べても死者数はほぼ変わりないようです。
このように家庭内事故で亡くなる人は多くいるのにも関わらず、対策がなされていないとも言えるかもしれません。むしろ死亡者数が500人近く増えているので、自宅で過ごす際の危機管理への意識を高めていくべきなのではないでしょうか。
次に年齢別で見ていくと、0歳から14歳までの家庭内事故の死亡者は136人、そのうち0歳児が64人となります。そして、15歳からは年齢を重ねる毎に死亡者が増え、65歳から79歳までは4,741人、80歳からは実に7,942人にのぼるのです。
統計を見ていくと、65歳以上の高齢者の死亡者数は12,683人となり、全体の約86%にあたることが分かります。80歳以上の高齢者だけでも全体の半数にあたるので、自宅で不慮の事故に見舞われ、命を落とす危険性が最も高いのは高齢者だというのは歴然ですね。
また、全体の中で5歳から9歳まで、10歳から14歳までという順で、家庭内事故による死亡人数は少ないです。高齢者の次に子供が事故に遭いやすいと思われる方が多いかもしれませんが、5歳から14歳までの児童は、不慮の事故に関わらず年齢別で見ても死亡数が最も少ないのです。
家庭内事故による死亡事故の原因
家庭内事故による死因を詳しく見てみると、平成29年では不慮の溺死及び溺水が5,941人となり、浴槽内での死亡事故が最も多いことが分かりました。年齢に着目すると80歳以上が3,352人で、全体の約56%という結果が出ています。65歳から79歳までの2,156人と合わせると、浴槽内の事故によって亡くなった高齢者の割合は全体の約92%となるのです。高齢者が家庭内での不慮の事故に遭うとき、1番気をつけなければならないのは浴槽だということが分かりますね。
その次に、家庭内事故の死因で多いのは死者数が3,795人となる不慮の窒息です。その中でも食物の誤えんは2,622人となり、食事の際に食べ物をのどに詰まらせる事故が最も多いようです。こちらも不慮の溺死同様、65歳以上の高齢者が90%以上となります。
転倒・転落・墜落による死亡事故もそれに続き、多く発生しています。死亡人数は2,685人で、やはり65歳からの事故が過半数をしめているのです。階段からの転落よりも、平面上での転倒による死亡が多いのは、驚きの結果かもしれません。
このように、5人に1人は70歳以上と言われる高齢者社会の今、高齢者の家庭内事故を減らす為には、他人事だとは思わず事故に対する意識を常日頃から持つことが大切です。また、高齢者に関わらずどの年代にも家庭内の事故で命を落とす人は多くいるので、命を守るための対策をとる必要があります。
まとめ
・不慮の事故のうち家庭内事故の割合は全体の約36%
・65歳以上の高齢者による事故が最も多い
・浴槽内の事故、食物による窒息、転倒・転落・墜落という順で家庭内事故が起こっている