「緊急事態が起きたら、110番や119番に連絡する」――――このような認識は、極めて正しいものです。通報をためらったために命や財産の危険にさらされてしまったり、脳や心臓に負担がかかっている状態で救急車を呼ぶことをためらったために死亡したり後遺症が残ったりしてしまっては大変です。「危ない!」と思った時に通報をすることは、とても大切なことです。
しかしながら、現在は、「緊急性のない通報」が増えているのも事実です。
本当に急ぎの通報なのか、事前に確認しておきたい事を紹介します 。
110番への通報、緊急性を要しないものが21.6パーセント
私たちにとって、もっとも身近な通報番号は、「110番」と「119番」でしょう。しかし近年、ここにかかってくる電話が「本来ならば110番や119番にかける必要のないもの」によって必要な通報が受けられないという問題が起きています。
警察庁が出した統計では、平成27年の通報のうち、実に5分の1にもあたろうとする21.6パーセントが「緊急性の認められないもの」だということが分かっています 。これは非常に大きな数字だと言えるでしょう。(平成25年は23.9パーセント)
また、消防へと繋がる「119番」の場合は、もっと状況が悲惨です。2016年1月に読売新聞が報道した内容によると「そもそも呼ぶ必要がない」「救急車などを呼ぶほどの事態ではない」という件数が67パーセント にものぼっているのです。つまり、「緊急性のある通報」の方が、「そうでない電話」よりもずっと少ないというわけです。しかもそのうちの6パーセントはいたずらや間違い、24パーセントは問い合わせなどです。
いたずら電話や「何気ない電話」がされることのリスクとは
緊急性のない110番や119番が乱発されることには、大きなデメリットがあります。それが、「本当に緊急性のあるものが、そうでないものによって届きにくくなる」ということです。
警察の場合、110番を受けて駆け付けるまでの時間は約7分 だと言われています(平成26年度警察白書より、警察本部にある通信指令室が、110番通報を直接受けた際にかかる時間) 。しかし警察官の数は有限であり、一晩に何度も何度も「特に急いでいない電話」が繰り返されると、「すぐに助けに行かなければならない電話」に割ける人員が少なくなってしまいます。その結果として、平均して7分の「到着時間」がもっと遅れてしまうこともあるでしょう。
たしかに、「本当に緊急かどうか」ということを見分けるのは難しいものです。ただ、あきらかに「明日でも間に合う」「自分で車を飛ばせば、夜間受け付けの病院に連れて行ける」という場合は、110番や119番通報を行うべきではありません。あなたがかけたその「緊急性のない電話」が「命の危険にさらされている人からの電話」を妨げ、文字通り人の命を奪うことにすらなりかねないからです。
「呼ぼうかどうか迷っている」を受けつける窓口もある
ただ、「今すぐどうこう、ではないけれども、だれかに相談をしたい」というときもあるでしょう。特にDVやストーカーなどは根が深い問題です。「たった今殴りかかってこられているわけではないけれど、前にけんかになったときに殴られた。次回はどうなるか……」という場合や、当事者同士での解決が難しくなっている近隣トラブルなどのために、警察では、#9110(但し、受付時間帯等は、管轄する警察によって異なる場合があります。)という番号を用意しています。
ここにかけると、生活全般の不安を聞いてくれますし、場合によっては警察が相手を検挙したり、専門の窓口を紹介してくれたりします。
ちなみに、救急相談センターの場合は#7119(全国共通ではなく、自分の住んでいる地域の連絡先や対応時間を事前に調べておく必要があります。)です。ここにかけると、「今すぐ救急車を呼ぶべきか」「病院にすぐに連れていくべきか」などの判断について教えてくれます。「今は大丈夫そうだけど、朝まで待っていいのかどうか」を迷うときはこちらにどうぞ。
まとめ
・緊急性のない通報は、119番では約70パーセント、110番では約20パーセント
・緊急性のない通報は、緊急性のある電話の妨げになる
・トラブルに対してどうすればよいか分からない時は、119番ならば#7119に、110番ならば#9110に電話しよう
参考サイト
◆東京消防庁「救急相談センター」
◆平成26年版 警察白書 「2 事件・事故への即応」
◆政府広報オンライン「警察相談専用電話 #9110へご相談ください」
◆統計局「なるほど統計学園」
◆平成27年中の110番通報状況
◆110番するほどではないけど相談したい! 警察に相談する時に使う「#9110」とは
◆救急搬送に時間が掛かる! 事故が起きた時の搬送先とは?