災害が発生した時に起こるのが、帰宅困難者いわゆる帰宅難民と呼ばれる現象です。特に、日中は何事もなく過ごしていたのに、昼間、もしくは夕刻に大きな地震が起きると、高い確率で帰宅困難者が多く出てしまいます。そんな事態に備えて、帰宅困難者を支援する「災害時帰宅支援ステーション」が設置されています。今回は、この災害時帰宅支援ステーションの役割を解説します。
帰宅困難者が発生する原因とは
先ず、帰宅困難者が発生する原因について確認してみましょう。災害別にみれば、圧倒的に地震によるところが多いです。台風などは、予め進路予想や台風による被害の予想をしやすいモノです。ですから、台風が通過する数日前から運休や間引き運転をする告知が、各鉄道会社、フェリー会社などから発表されます。その発表を受けて、企業側もテレワークなどに切り替えたり、休日を振り替えたり対策を講じることができます。ですから、出社時から規制されているので、帰宅困難者が出ることは少ないです。一方で、地震は突然起こります。仮に早朝に起きた地震であれば、出社する混雑は避けられませんが、ある程度のコントロールはできるはずです。ですが、昼間や夕刻に起きた地震の場合、多くの帰宅困難者が発生することとなります。その理由は、大量に人を運ぶ鉄道が運休となり、大勢が移動できなくなるからです。
どのくらいの人数が動けなくなるのか
公共交通機関で最も人を多く運ぶ手段は、鉄道です。例えば、首都圏のJRでは1車両の定員は約160人と言われています。山手線を例にとると、11編成で全52本の車両数は572両となります。人数計算すると、160人×572両=91,520人になります。あくまでも定員での計算なので、帰宅時のピーク時を考えると10万人を超えるでしょう。山手線だけでこの人数です、JRの他の路線や私鉄各社を合わせると数百万人規模となります。
東日本大震災では500万人超!首都直下型地震では約650万人
首都圏で実際に起きた、最も帰宅困難者が多い災害は、東日本大震災です。この時には、首都圏全体で約515万人、都内で約352万人が帰宅困難者となっています。また、30年以内に70%オーバーの確率で起きるであろうと言われている首都直下型地震では、約650万人の帰宅困難者が発生すると予想されています。
帰宅困難者をサポートする「災害時帰宅支援ステーション」とは
先に説明した東日本大震災時の帰宅困難者の発生を教訓に、政府、自治体が取り組んでいるのが、災害時帰宅支援ステーションです。これは、災害が起きて帰宅困難者となった方を支援する取り組みで、災害時の徒歩帰宅者を支援するために「水道水」、「トイレ」、「道路情報などの情報」の提供を行います。
関西圏・首都圏とも多くの企業が協定している
自治体と企業が協定を締結することで、災害時帰宅支援ステーションとなります。例えば、関西であれば、「滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、三重県、徳島県、京都市、大阪市、堺市、神戸市」で構成される、関西広域連合と各企業が協定を結び、「災害時帰宅支援ステーション」が多く設置されています。首都圏では、東京都および九都県市首脳会議において、「災害時帰宅支援ステーション」の取り組みを進めています。
関西で「災害時帰宅支援ステーション」となる企業
関西広域連合と協定しているのは、コンビニ6社・外食事業者13社・その他6社の合計25社です。
コンビニでは、「株式会社セブン-イレブン・ジャパン、山崎製パン株式会社、株式会社ファミリーマート、株式会社ポプラ、ミニストップ株式会社、株式会社ローソン」が締結。
外食事業者では、「味の民芸フードサービス株式会社、株式会社壱番屋、株式会社イデアプラス、サガミレストランツ株式会社、サトフードサービス株式会社、株式会社ストロベリーコーンズ、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ、株式会社ダスキン(ミスタードーナツ)、チムニー株式会社、株式会社モスフードサービス、株式会社吉野家、ロイヤルホールディングス株式会社、ワタミ株式会社」が締結。
その他の企業は「株式会社オートバックスセブン、株式会社スギ薬局、株式会社第一興商、株式会社ユタカファーマシー、損害保険ジャパン株式会社、AIR オートクラブ」が締結しています。
全てのコンビニ・ファーストフード・ファミレスが対応
先の締結先を見れば、全てのコンビニ・ファーストフード・ファミレスが、「災害時帰宅支援ステーション」となります。登録店舗数は、12,136 店舗(令和3年9月23日現在)にも上るので、サポートは手厚いと言えるでしょう。
あくまでも「水道水・トイレ・道路情報などの情報」のみサポート
災害時帰宅支援ステーションには、全てのコンビニ・ファミレスが含まれるため、勘違いされる方も多いです。コンビニでは、店内で販売しているミネラルウォーターが支給されると勘違いしたり、ファミレスでは食べ物、飲み物が無償提供されたりすると勘違いされる方がいます。そうではなく、あくまでも「水道水・トイレ・道路情報などの情報」のみのサポートとなります。もちろん、お金を支払っての購入や飲食であれば何ら問題ありません。
地震時には水道水およびトイレは使えない可能性が大きい
災害時帰宅支援ステーションのサポートの中に、水道水・トイレとありますが、地震による被災地域では断水や、下水道の破損によって、水道水やトイレは使用できないケースもあります。このことは、利用する際にはしっかり把握しておかないといけません。また、ステーションはあくまでもボランティアです。利用する際には、紳士的に利用することを心がけてくださいね。
まとめ
・昼間や夕刻の地震によって帰宅困難者が発生する
・首都圏では首都直下型地震時に約650万人の帰宅困難者を予想
・災害時帰宅支援ステーションは帰宅困難者をサポートする
・サポート内容は「水道水・トイレ・道路情報などの情報」のみ
・被災地域では「水道水・トイレ」が使用できないケースもある
・あくまでもボランティアなので、紳士的対応が求められる
参考サイト
◆関西広域連合 関西広域での災害時帰宅支援ステーションの普及・定着
https://www.kouiki-kansai.jp/koikirengo/jisijimu/bosai/1193.html
◆東京都防災ホームページ 帰宅困難者に対する支援
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/kitaku_portal/1000050/1000282.html
◆今後の帰宅困難者対策に関する検討会議 報告書
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/005/167/houkoku1.pdf
◆首都直下地震の被害想定と避難者・帰宅困難者対策の概要について
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/senmon/shutohinan/1/pdf/shiryou_2.pdf