厚生労働省の「平成28年人口動態調査」によると、平成28年の14歳以下の子どもの不慮の事故による死者数は289人です。そのうち最も死亡数が多いのは窒息事故で、死者数は94人となり、91人という交通事故の死者数よりも多いという結果が出ています。
このことから見ても子どもの窒息事故は、最悪の場合命に関わるほど危険な事故だということが分かりますよね。特に乳幼児は何でも口に入れてしまうため、身近にいる大人たちが注意しなければなりません。もし万が一、のどに物が詰まったときは速やかに対応が求められます。
そこで今回は、子どもの窒息事故による正しい対応についてご紹介します。
子どもが窒息したときの正しい対応
子どもの喉に異物が詰まった場合は、直ちに吐き出させる必要があります。顔色が悪い、息ができない、親指と人差し指をのどに当てるといった窒息のサインが出たらすぐに対処しなければなりません。
子どもに反応がある場合は、速やかに背部叩打法(はいぶこうだほう)を試しましょう。
背部叩打法は、背中を叩いて異物を取り除く方法です。1歳未満の場合は片腕を身体に通して、頭が向こう側になるようにうつぶせにさせます。乳児の頭が低くなるように身体を支え、あごを突き出すような体勢にさせるのです。そして、身体を支えていない方の手で、背中の真ん中を迅速に強く5回程度叩きます。
1歳以上の子どもの場合は自分の方に向けて横向けにさせ、手のひらの付け根で肩甲骨の間を5回程度強く叩きましょう。
背部叩打法で異物を取り除くことができなければ、次に年齢に応じて胸部突き上げ法か腹部突き上げ法(ハイムリック法)を試します。
1歳未満の乳児であれば、胸部突き上げ法です。頭を低くした状態のあおむけにさせ、胸の間に2本の指を置いて5回程度圧迫させます。
1歳以上であれば、腹部突き上げ法(ハイムリック法)を試します。方法は、子どもの後ろに回り、抱きかかえるようにしてください。そしてみぞおちの下で手を繋ぐようにして握りこぶしを作り、そのまま素早く腹部を上に圧迫させるのです。腹部突き上げ法は内臓を損傷する危険性があるので、妊婦や乳幼児には行いません。
それでも吐き出させることができなかったのであれば、反応が無くなるまでこれらを交互に試しましょう。もし反応がない場合はただちに心肺蘇生法を試し、119番通報してください。
子どもが窒息事故を起こさないための予防策
平成26年東京消防庁管内の統計によると、窒息の原因は年齢によって異なります。上位3つを見てみると、0歳の窒息原因として1番多いのは包み・袋となり、次に玩具、タバコの順です。1歳児はタバコ、薬剤、玩具で、2歳児は薬剤、玩具、魚の骨。3~5歳は玩具、あめ玉、ビー玉となります。順位は違いますが、どの年齢でも玩具による窒息事故が見られますね。また、タバコや薬剤といった大人の注意不足が原因と思われるものもあるようです。
それ以外にも、スーパーボールやミニトマト、ピーナッツによって重篤になった事例がありますし、ボタン電池や灯油は肺炎を引き起こし、最悪の場合、大動脈に穴が開いて死亡する危険性があります。
窒息事故を起こさないための予防法としては、子どもの目線になって家の中をチェックすることです。6ヶ月以上になると握ったものは何でも口の中に入れるので、誤飲の危険性が高まります。子どもは、トイレットペーパーの芯を通るくらいの大きさであれば飲みこめると言われているので、このくらいのサイズには特に気をつけなければなりません。
もし、子どもが口の中に何かを入れていたら、大きな声を出して注意することは止めましょう。びっくりしてそのまま飲みこんでしまう可能性があるからです。
子どもを窒息から守るためにも、日頃から整理整頓を心掛け、事故を未然に防ぎましょう。
まとめ
・窒息のサインが見られたら直ちに背部叩打法を試す
・次に年齢に応じて胸部突き上げ法か腹部突き上げ法を試す
・子どもの目線で家の中をチェックして窒息事故を引き起こしそうなものを排除する
参考サイト
◆日本医師会「救急蘇生法」
◆東京消防庁「STOP!子どもの「窒息・誤飲」」
◆消費者庁「子どもの事故の現状について」
◆防仁学「1月11日は鏡開き! お餅を詰まらせた時の対処方法とは」