「天高く馬肥える秋」という言葉があるほど秋は晴れ渡り天気が良くなる印象があります。
しかし、実際には曇り空や雨の日が多く、9月~10月に掛けて悪天候が続き、東京の日照時間の統計を見ると8月が169.0時間に対して9月は120.9時間で10月は131.0時間と短かくなっております。
ある程度知識がある人は「天気図を見ると、高気圧に覆われているのに、何で晴れないの?」と感じた方もいるかと思います。高気圧の気象環境では雲が出来難くなり晴れる事が多くなるにも関わらず悪天候が続く事に疑問を覚えるのです。
そこで、高気圧に覆われているのに天気が晴れない秘密を紹介します。
北半球の高気圧は時計回り
9月沢山訪れた台風を含めた低気圧性の渦は、北半球において高気圧性の渦は時計回り、低気圧性の渦は反時計回りとなります。南半球においては逆回転の渦となりますが、これはコリオリの力によるものであります。
2014年に日本で公開された映画「大脱出」の中で、シルベスター・スタローンは監禁された船内において位置を特定する為、即席の六分儀に併せて、トイレを流す時の渦で判断し「反時計回りだから北半球だ!」とシュワルツェネッガーに説明していました。トイレの形状や大きさ水流の初期の動き等、様々な要素があり常に反時計回りと断定は出来ないという説もありますが、状況を判断していく中で種々の情報を分析していく思考過程においては、一つの判断要素になると考えられます。
高気圧に覆われているのに雨?
天気図を見て、一見高気圧に覆われているのに天気が悪くなる要因は3つあります。
西高東低の冬型気圧配置
第1は西高東低と呼ばれる冬型の気圧配置であります。
冬季シベリア高気圧が張り出してきた時、太平洋側は乾燥した晴天が続く事が多くなりますが、日本海側は雪の降り続く日が多くなります。これは高気圧から低気圧に吹き込む風が日本海を渡る時、水分を補給し日本の脊梁山脈で強制的に上昇する為に雲が発達し雪を降らせるものであります。
上空の寒気
第2は、上空に寒気が入り込んだ時であります。
上が冷たく下が暖かければ、対流現象という性質の違う空気が入れ替わろうとする現象が発生し、下方の空気に水分が含まれていれば雨雲が発生して雨を降らせる事になります。一般的には地表の気温と上空で500hPaの気圧となっている部分(高度約6000m付近)との気温差が40℃あると大気の擾乱が発生して雷雨や竜巻等の悪天になると言われております。
ゲリラ豪雨もこれが影響しており、夏場であれば地上気温が40℃まで上昇すると上空に0℃以下の寒気が、冬場であれば地上気温0℃でも上空に-40℃以下の寒気が入れば不安定な天気になる事が予測出来ます。
西高東低の冬型気圧配置の時、普通であれば山岳地帯を中心に雪が降りますが、上空に寒気が入って来た時は、「里雪(さとゆき)」と言われるように日本海側の平野部に大雪を降らせる事になります。
また北陸地方では、夏の積乱雲の様に上空まで発達しなくても、低高度の雲中で激しい対流現象が起きるため「一発雷」と呼ばれる雷が発生する事があり、冬季に日本海よりの小松空港や富山空港を離発着するパイロットは非常に気を使っております。
北高型
第3は、「北高型」と呼ばれる気圧配置であります。
低気圧の通過後に移動性高気圧が張り出してきた時、関東付近に雨雲の原因となる前線や低気圧が無くてもヒンヤリとした風が吹いて低い雲や発生し霧雨の降る事があります。
これは高気圧の中心が北に偏る為に起こる現象で、高気圧の回りに時計回りの風が吹いている為起こる現象です。
関東地方の太平洋側では北に偏った高気圧の影響で、北東方向からの冷たい風が太平洋の暖かい海上を移動してくる時に水分を多く吸収し、陸地に上がった時に霧や層雲そして霧雨を発生させます。
この影響が強ければ、沿岸部のみならず関東平野の内部まで季節外れの冷たい風と共に霧雨が降ってくる場合があります。
ヒンヤリとした北東方向からの冷たい風が吹いている時のお出掛けは、霧雨にご注意下さい。
この様にテレビの天気予報などで見かける天気図を詳しく見ると、天気の流れを読み取る事が出来ます。
秋の風物詩を楽しむ為に出かける時は、事前に天気図をチェックしてみるのも良いですね。
まとめ
・高気圧が来ていても、天気が良いとは限らない
・気象庁のデータにより、ゲリラ豪雨を含めた悪天の予測がある程度可能となる