いよいよ昨日2016年12月12日から南スーダンに派遣されている自衛隊に「駆けつけ警護」が実行可能となっています。
南スーダンの情勢が安定して「駆けつけ警護」の機会が訪れないことを祈るばかりです。
今回も前回に引き続き、自衛隊が国境超えて活躍してきた歴史を振り返ってみたいと思います。
前編「自衛隊の国際派遣(1)」ではPKOと災害時の派遣について振り返りましたが、今回は外交政策としての自衛隊海外派遣の取り組みに関してご紹介します。
外交政策としての海外派遣
自衛隊の国際派遣の切っ掛け
1991年6月5日「自衛隊法第99条(機雷等の除去。現在は第84条の2)」に基づき、湾岸戦争が終了した直後のペルシャ湾へ海上自衛隊の掃海艇部隊が派遣されました。
機雷除去作業などを行っています。
1950年~1953年まで行われた朝鮮戦争で海上保安庁を中心に参加した日本特別掃海隊を除けば、自衛隊は戦後初めての国際派遣を経験しました。
この実績が国際的に認められ、以後の日本・自衛隊による国際貢献へ大きな一歩をしるした事は間違いありません。
2001年に9.11同時多発テロが発生すると「テロ対策特別措置法」が定められ、海上自衛隊補給艦よりイラク戦争に参加する多国籍軍への補給支援がインド洋上にて行われました。
2008年にもテロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法(新テロ特別措置法)が定められ、補給活動は継続されています。
2004年から2008年に掛けては「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(イラク復興特別措置法)」に基づき、陸上自衛隊の復興支援業務隊と航空自衛隊の航空輸送隊が派遣されました。
戦闘状態が続くイラク国内で地元住民の支持を得ながら活動を行いました。
2009年からはソマリア沖のアデン湾に「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律(海賊処罰対処法・海賊対処法)」に基づいて派遣されています。
海賊行為を取り締まり、日本のシーレーンを守るという役割も果たしています。
海上自衛隊の護衛艦及び哨戒機を中心に、海上保安官や航空自衛隊輸送部隊がジブチへ派遣され、陸上自衛隊による警備も行われています。
今後の自衛隊国際派遣
在外邦人の保護が重要
近年行われた外交的判断による自衛隊の海外派遣活動の幅は広がる傾向にあり、任務は危険を伴う内容が多くなってきています。
しかし紛争環境下やテロリストの脅威がある場所で、自衛隊の他には同じ任務をこなせる組織が日本に存在しない事も事実です。
在外邦人の緊急輸送は自衛隊の任務です。
2004年にイラクで日本人が人質となる事件を受けて、自衛隊は現地の報道関係者をクウェートまで緊急輸送しました。
2013年のアルジェリア人質事件や2016年7月3日のダッカ・レストラン襲撃事件で不幸にも亡くなられた方々のご遺体を日本まで送ったのも航空自衛隊が運行するC-130輸送機及び政府専用機でした。
今話題となっている南スーダンでも2016年7月11日に日本大使館員の避難を行うといった活躍をしており、在外邦人の保護は自衛隊にとって重要な任務の一つとなってきています。
それを受けて近年では自衛隊内で邦人保護関連の訓練が増えてきています。
2015年にはブッシュマスターという爆発物などに強い耐久性を持つ装甲車が輸送防護車として中央即応連隊に配備され、訓練面でも装備面でも不測の事態に備えています。

ブッシュマスター VanderWolf Images / Shutterstock.com
法律面でも自衛隊の海外での活動の幅を広げる傾向ははっきりと表れています。
2016年9月30日に平和安全法制と呼ばれる「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律(平和安全法制整備法)」と「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律(国際平和支援法)」が定められました。
自衛隊法などの法律も改正され、今話題となっている南スーダンPKOに於ける駆け付け警護を行える法的環境づくりがされてきました。
現地の自衛隊が活動しやすいようにと法整備されているわけですが、一方で自衛隊の担う役割・責任が重くなっているとの指摘もあります。
万が一発砲する事態が起きたときに備えて、隊員へのウェアラブルカメラ装着といった法的な問題を解決する為の取り組みが行われつつあります。
自衛隊が海外の派遣先で戦闘を行う可能性があるという事に関しては賛否があります。
しかし危険にさらされた日本人の命を守るという責務を全うするために、訓練・装備・法律それぞれの面で不測の事態に備え、自衛隊では日夜努力を重ねています。
南スーダンPKOの交代部隊が無事にケガもなく帰還出来る様に祈りつつ、更なる活躍を期待しましょう。
まとめ
◆自衛隊の海外派遣は3パターン。国際連合によるPKOに参加するもの、災害時の国際緊急援助活動によるもの、外交政策によるものがある
◆いずれも自衛隊以外では実行できない非常に困難な役割を担っているため、訓練・装備・法律それぞれの面で不測の事態に備えている
◆今後も活動の幅が広がり、それに伴い危険な任務が増えて行く事が予想される