みなさんは、髄膜炎菌とはどのようなものかご存知でしょうか。髄膜炎菌は特別な細菌ではなく、健康な人も持っているものです。髄膜炎菌による髄膜炎菌感染症に感染、または発症してから重症化するまで非常に早く、意識が無くなったり、最悪の場合命にかかわることがあり大変危険です。一命を取り留めたとしても、後遺症が残る患者が約20%といると言われています。
髄膜炎菌感染症は、集団生活をしている人なら誰でも罹患するリスクがあるので、予防が不可欠。特に10代の子どもは感染率が高いとされており、注意が必要です。
そこで今回は、髄膜炎菌について詳しくご説明いたします。大切な人の命を守るためにも、感染症の症状や予防法を知りましょう。
髄膜炎菌感染症の症状とは?

髄膜炎菌感染症は、発症してから12時間以内に頭痛、吐き気、発熱といった症状が表れます。風邪とよく似ているので、この段階だと単なる風邪だと判断して病院に行かないことが多いかもしれません。そのため、初期段階で治療するのが難しくなります。
次に、症状の進行について詳しくみていきます。髄膜炎菌感染症は発症してから13~20時間経つと、風邪のような症状に加えて皮下出血、発疹、息苦しい、光過敏症と言われる光がまぶしいなどの症状が表れます。さらに症状が進行すると意識障害、けいれん発作、最悪の場合、命にかかわるくらい危険な状態になるのです。過去にはショック状態に陥り、突然死するケースもありました。
髄膜炎菌感染症が恐ろしいのは、発症してから1~2日で急速に悪化してしまうので、致死率が高いということです。世界保健機関によると、侵襲性髄膜炎菌感染症にり患して治療を行わなかった場合、感染した約50%の人が死亡するという結果が出ています。治療を受けても、発症してから24~48時間以内に死亡する患者は約5~10%だと言われています。
日本でも、髄膜炎菌感染症を発症した人も約19%が亡くなっています。治療を行っても、約20%の人が麻痺、けいれん、手足の切断、耳が聞こえにくい、神経伝達の障がいなど様々な後遺症が残るとされています。
髄膜炎菌感染症の主な感染ルートは、咳やくしゃみといった飛沫感染です。そこから鼻やのど、気管の粘膜に感染します。
ただし、健康な人も髄膜炎菌を保有しています。免疫力が低下しているときや疾患があるときは、血液や髄液に細菌が侵入してしまう危険性があります。髄膜炎菌は他の細菌より100~1000倍の毒素を出し、免疫機能では排除されにくいうえ増殖しやすいので、血液や髄液に侵入するとかなりのスピードで全身に細菌が回ってしまうのです。
症状が悪化すると、菌血症や敗血症、髄膜炎というように急速に進行していきます。
髄膜炎菌感染症の感染状況とは

感染状況について次にまとめました。
・2011年 宮崎県
高等学校で集団感染が確認されました。寮の学生と職員の5名が侵襲性髄膜炎菌感染症を発症し、そのうちの1名が亡くなりました。症状が出て搬送され、病院に到着してから4時間で命を落としてしまったのです。
・2015年8月 山口県
第23回世界スカウトジャンボリーで参加者4名(北スコットランド隊が3名、スウェーデン隊が1名)の感染が確認されました。スカウトジャンボリーとはボーイスカウトの世界大会です。世界各国から参加者が集まり2週間キャンプを行うのですが、感染者は帰国途中の感染だったので日本国内では感染しませんでした。
・2017年7月 神奈川県
全寮制高校で集団感染が確認されました。1名の男子学生が、医療機関を受診してから数日後に亡くなりました。男子学生は熱っぽさを感じ、翌日の朝に発熱と紫斑(内出血で出る痣)という症状があったようです。
神奈川県のケースでは、髄膜炎菌の保菌者は他に10名いましたが、男子学生が髄膜炎菌感染症に感染したこととの因果関係は分かっていません。
まとめ
・髄膜炎菌感染症の進行は早く、発症してから1~2日程度で命を落とすことがある
・治療しても後遺症が残ることが少なくない
・感染ルートは飛沫感染
・健康な人も髄膜炎菌を保有している