65歳以上の高齢者による事故原因の約8割が転倒です。平成29年中には東京消防庁管内で55,614人が転倒して受傷し、救急搬送されています。高齢者の転倒事故は重大な損害や死亡事故に繋がりやすく、年齢があがるほど死亡者数が増加しています。死亡事故は防げても、転倒事故でケガをしたことが原因で介護状態となる高齢者も多くいます。
高齢者の転倒事故は、命にかかわるほど重大な問題なのです。それでは、事故を防ぐにはどのような対策をとればいいのでしょうか。
高齢者の転倒事故の実態とは

65歳以上の高齢者の転倒事故による救急搬送人数は、年々増えています。東京消防庁管内では平成25年に44,252人が救急搬送されていますが、平成29年には55,614人まで増加しています。1日で考えると、約152人の高齢者が運ばれていることになるのです。
事故の発生場所は住居が最も多く、全体の56.3%です。1番安全だと思いがちな家で、転倒事故が多発していることになります。
次に受傷の程度ですが、救急搬送された高齢者の約6割が軽症で済んでいるようです。ただし、約4割の高齢者が入院を要するという診断を受けています。消費者庁の調査結果を見てみても、高齢者の転倒事故による死亡者数は、5歳年齢があがるごとに急増しています。65~69歳が人口10万人当たり4.5なのに対し、70~74歳は6.6。80~84歳は25.1、85~89歳は50.9、90歳以上は123.3というように、死亡人数が5歳毎に倍増しているという結果が出ているのです。また、死亡事故に至らなくても転倒事故をきっかけにして介護が必要になる高齢者は多くいます。
事故状況を見てみると、家の中で敷居につまづいて転倒し太ももを骨折したケース。自転車を降りるときに転倒して、腕を骨折したケース。風呂場で転倒したとき、プラスチック製の椅子に腹部を強打し、亡くなるという痛ましい事故も起きています。
高齢者の転倒事故は、若い世代と違って命の危険に直結する可能性があることが分かりますよね。
転倒事故を防ぐ対策とは

高齢者の転倒事故を防ぐためには事故が起こりやすい場所を知り、それぞれ対策をとる必要があります。
例えば、コンセントのコードや布団、カーペット、敷居につまづいて転倒することを防ぐには、家の中の段差にスロープをつけてなだらかにしたり、動線に何も置かないようにしましょう。また、階段を踏み外したり、玄関で靴の脱ぎ履きをするときに転倒しないように、階段や廊下などに手すりをつけるといいでしょう。他にも、足元を明るくして見えやすくすることも効果的です。浴槽内では、石鹸やシャンプーのぬめりで転倒しないようによく乾かしましょう。手すりをつけることも転倒防止になります。
それから、日頃から適度な運動をすること、焦って行動すると転倒事故に繋がりやすいので、時間に余裕を持って行動する心がけも事故を防ぐ対策となります。
高齢者の事故は、本人の危機管理で防ぐことができることが多いです。運動量を過信している高齢者ほど油断しやすいので危険ですよ。加齢による身体機能が低下していること、薬の副作用などが引き金となって転倒事故が起きてしまう可能性があることを知りましょう。
もし、身近なところで高齢者の転倒事故が起きてしまったら、まずは本人の状態を観察します。意識がなかったり、呼吸がない場合は速やかに救急車を呼びましょう。事故直後に問題がなくても、あとから異常が出てくる可能性もあるので、しばらく様子をみることも必要です。
まとめ
・高齢者の転倒事故は年々増加傾向にある
・年齢が5歳あがる毎に死亡人数が倍増する
・転倒事故によって介護状態になる高齢者は多い
・家の中に転倒する要因がないかチェックして対策をとる
・転倒事故が起きたら本人の状態を注意深く観察する
参考サイト
◆消費者庁「御注意ください!日常生活での高齢者の転倒・転落!」
◆消費者庁「高齢者の転倒・転落事故、こんなところで起きています!」
◆東京消防庁「STOP!高齢者の「ころぶ」事故」