羆嵐(クマアラシ)という小説をご存じの方はいるでしょうか?
これは三毛別事件という1915年12月に北海道で実際に起こったクマによる事件を元にした作品です。2016年5月にも秋田県鹿角市にて4人が犠牲になり1がケガを負う事件がありました。
クマは本来山の奥に生息して人に近づこうとはしない動物ですが、どうしてこの様な事件が起きたのでしょうか?
その理由を調べてみました。
どんなクマがいるの?
ヒグマ
日本には主に二種類の野生のクマが生息しています。
一つはヒグマと言われる種類で、主に北海道に生息しており、国内では一番大型の雑食野生動物です。体重は300kgから大型の個体では500kgまで大きくなる場合もあります。性格は賢く、自分が得た獲物に執着するという習性があります。
その為、敵対すると非常に危険な存在で、特にヒグマが得た食物などを奪い返すとしつこく狙われる事になります。
食害という、人が食べられてしまった事件の多くはヒグマが原因とされる事が多いのですが、これは人の味をヒグマが覚えてしまい、エサとして狙ってくる様になるからと言われています。味を覚えたヒグマは人間が集団で行動していても狙ってくる場合があり、過去の事件では1970年7月に北海道で登山を行っていた福岡大学の学生3人が犠牲になった福岡大ワンゲル同好会事件というものがあり、彼らは5人で行動していたものの、ヒグマが漁ったリュックを取り返してしまった事で狙われてしまったとされています。
同様に農作物を食べたり、生ごみを食べて味をしめ、人里に降りてくる例もあります。
ツキノワグマ
もう一つの種類はツキノワグマです。
こちらは日本各地に生息しており、体格も120kgほどと比較的小さくなります。
雑食性で比較的おとなしい性格ですが、人を襲う事が無いわけではありません。
力も強く、鋭い爪で大ケガを負うという事件が報告されています。
近年では、ヒグマと同じく人をエサとして食べる場合がある事が知られており、最初に書いた秋田県の事件でも被害者4人に食べられた跡が確認されています。
どちらのクマにも共通してあげられる性質に、仔グマがいると逃げずに戦おうとする事です。
クマは冬の間は冬眠しますが、春から秋に掛けて活動している間は、仔クマを連れている可能性もあり危険な存在です。
逆に冬は安全かというとそうでもなく、三毛別事件では冬眠出来なかったヒグマがエサを求めてさまよった結果起きた事件でした。
対策はどうすればいいのか?
クマは基本的に人の傍には寄ってこないとされています。その為、自分がそこにいるとアピールする事が大切です。
例えば、鈴をつける事で音を出して近くに寄せ付けないといった対策です。
クマが先にこちらの存在を確認したら、人をエサと考える個体でない限りクマから離れて行ってくれます。
しかし、それでも遭遇してしまう可能性はあります。その場合は、刺激しないでゆっくり離れて行くようにしましょう。くれぐれも背中を向けて駆け出すというような事はしないで下さい。
クマは狩猟を行う動物なので、背中を見せて逃げるものに興味を持って追いかける習性があります。クマが走るスピードは時速50kmほどと言われ、山道で人間が逃げられるものではありません。
加えてクマは仔クマを守ろうとする習性があるので、クマのテリトリーに入らないようにするのも大切な対策です。
例えば、クマが生息する場所の木には、クマが付ける爪痕などのマーキングがあります。場合によってはエサを埋めた場所を示している場合があり、その近くは大変危険です。
エサを横取りに来たと思われて襲われる事もあります。
マーキングを見つけたり、市町村がつけたクマ出没注意の標識を見たらその場から離れる様にして下さい。
そしてクマの姿やマーキングを見かけた際には、近くの役所などに連絡をして情報を共有する様にして下さい。余りに人里から近い場所の場合は、猟友会が駆除に来る事もあります。
クマの被害は毎年確認される様になり、2004年からはひっきりなしに報告されています。
その為、猟友会も駆除に出る事も多くなり、2015年には1787頭のクマを殺しています。
しかし、ヒグマもツキノワグマも世界的には個体数が減少傾向にあり、絶滅危惧種でもあるので、完全に駆除する事は出来ません。
しかし、遭遇すると危険である事に変わりはないので、うまく共存出来る環境をつくっていく必要性が考えられています。
山のレジャーの際には、クマの出没情報をチェックして安全な場所で楽しみましょう。
まとめ
・日本に生息するクマには大きく2種類いる
・クマの被害を無くす為には、人の存在のアピールと生息場所に近づかない