あなたは福祉避難所を知っていますか?
はじめて聞いたという方もいるのではないでしょうか。
正直なところ、筆者も昨年の熊本地震の報道まで、その存在を知りませんでした。筆者は80代の両親と一緒に暮らしているので、高齢者の防災関連ニュースには関心の高い方だと思うのですが、それでも福祉避難所という名称をあまり目にすることはありません。
昨年の熊本地震で4万人近くが避難した熊本市でも、福祉避難所の利用者がとても少なかったことが明らかになっています。その存在を知らない人が多かったそうなのです。
今回はそんな福祉避難所についてご紹介します。
福祉避難所とは
福祉避難所とは、災害時に、一般避難所では避難生活が困難な、高齢者や障害者、妊婦など、災害時に援護が必要な人たちに配慮した市町村指定の避難施設のことを言います。災害時に、一般の避難所や在宅での生活が困難となった人を受け入れる、二次的な避難所です。災害時に開設され、自治体が災害救助法に基づき、福祉施設や公共施設などを指定します。
福祉避難所はどんな人が利用できるの?
福祉避難所を利用できる人は、主に、要介護高齢者、障害児者、妊産婦、乳幼児、病弱者など、避難所生活において特別な配慮を必要とする人とその介助者等です。
その中から必要性が高い人を優先します。
一般の避難所と福祉避難所の違い
一般の避難所としてよく利用されるのが学校や体育館、公民館等です。それに対して、福祉避難所はその80%以上が社会福祉施設(老人福祉施設、身体障害者更正援護施設など)です。このことからわかるように、福祉避難所は手すりやスロープ等のバリアフリー化がされており、対象となる利用者には生活しやすい施設になっています。また水や食料などの通常の備蓄に加え、車椅子や歩行器、紙おむつや医薬品、補聴器や人工肛門等装具も備えられていることが多いようです。
福祉避難所の歴史
福祉避難所の必要性は1995年の阪神大震災でクローズアップされ、2007年3月の能登半島地震ではじめて設置されました。その後は自治体によって取り組みに差が生じ、全国的には整備が十分進まないうちに、残念ながら東日本大震災が起きてしまいました。この震災で高齢者を中心に多くの震災関連死が起きたことを受けて、福祉避難所の重要性が再認識され、「福祉避難所の指定」「生活相談員の配置」などが義務づけられたのです。
熊本地震であまり機能しなかった理由
熊本市が福祉避難所を開設できたのは、受け入れ先とされていた176施設のうち34施設だけだったそうです。その主な理由として、「施設に問い合わせが殺到し、現場が混乱する」として市民に広く開設を知らせなかったことを挙げています。
内閣府が昨年4月にまとめたガイドラインには、福祉避難所に指定された施設などの場所を、あらかじめ要支援者や住民などに周知するよう明記されているので、今回の経験を踏まえ、今後は福祉避難所を広く周知する対策がとられるとは思いますが、住民側からも自治体に問い合わせをし、いざという時に備えておくことが大切ですね。
以上、意外と知られていない福祉避難所についてご紹介してきました。
知られていない割りに、災害時には必要となる人は多いのではないでしょうか。これを機会に、お住いの自治体の福祉避難所がどうなっているのかを確認しておきましょう。
また、親と離れて暮らしている人は、親の住んでいる自治体の福祉避難所についても調べておくことをおすすめします。
まとめ
・福祉避難所とは、災害時に、一般避難所では避難生活が困難な高齢者や障害者、妊婦などに配慮した避難施設
・一般の避難所や在宅での生活が困難となった人を受け入れる、二次的な避難所
・平常時から、住んでいる自治体の福祉避難所についての情報を知っておくことが大切