熊本地震では、前代未聞の震度7が2回、夜9時頃の発生時刻、車に避難した方々のエコノミークラス症候群など、いままでの震災ではあまり見られなかった新たな要素や課題が浮かび上がりました。
いつ、どこで起こるかわからない大地震に対して、有効に備えるためにはどのような具体策があるのかについてお伝えします。
震度7が2回発生という衝撃と危険性
熊本地震は、2016年4月14日夜に前震、4月16日未明に本震と、震度7を二回も記録した前代未聞の地震となりました。
そのため、14日の地震ではなんとか倒壊は免れた建物も、16日の本震で倒壊してしまったという事例が多くみられました。現行の建築基準法では、「極めてまれに発生する地震に対して1回だけ耐えればよい」という、ギリギリの規定しかされていません。それ故、基準法ギリギリに作られた木造住宅は、2回もの震度7には耐えられなくて当然のことだったのです。
そして、14日の地震のあと、一旦自宅に戻った方が16日の本震で倒壊した家屋の犠牲になった、という事例もありました。
このような事実から、倒壊しかけた家屋には近づかない、たとえご自宅であっても、地震活動が落ち着くまでは決して中に入らないことが重要です。
地震発生時刻により異なる備えの効果
1回目の震度7を記録した地震の発生時刻は、21時26分頃。まだ寝ている人は多くなはく、寝る前の団欒をしていたお宅も多かったことでしょう。また、4月半ばで暖房器具を利用しているお宅も少なかったこともあり、幸いに火災は発生しませんでした。
この時間帯であったからこそ、多くの方は避難することができ、時期的にも火の発生源がなかったと言えます。
しかし、一方で考えられるのは、良かれと思って講じた策が裏目に出てしまうというケースです。
例えば、地震の揺れを感知してブレーカーを切ってくれる「感震ブレーカー」。これは、阪神・淡路大震災において「通電火災」が大きな問題となり開発されたものです。今回の熊本地震の場合、日もすっかり暮れた夜の9時過ぎ、地震の揺れで感震ブレーカーが働いて突然電機の明かりが切れたとすると・・・すぐに停電になった場合は別ですが、そうでない場合、真っ暗の中で家族の安否確認をしたりしなければならず、非常に不便になってしまう場合もあります。
ブレーカーを切るのはできれば家を出て避難をする場合がよいでしょう。そして、ブレーカーを切らずとも、転倒した暖房器具などをもとに戻したり、燃えやすいものから遠ざけたり、コンセントを抜いたりすることで、通電火災を防ぐことが可能です。
2回目の震度7は、午前1時過ぎと、多くの住民が眠っている時間帯でした。この睡眠の時間帯は、人間が一番無防備な時間帯であり、地震対策が非常に重要になってきます。
具体的には、寝室に転倒しやすい大型家具を置かないことが鉄則です。家具を置かなければならない場合は、配置を工夫して、家具が転倒しても寝ている人に当たらないようにしましょう。それも無理な場合は、しっかりと家具固定をすることをお勧めします。
また、耐震性に不安のある場合は、耐震補強をすることがベストですが、それがすぐに叶わない場合、寝室を2階にすることで、犠牲になる可能性を少しでも減らすことができます。(木造2階建て住宅の場合、1階部分がつぶれるパターンが多いため)
このように、地震が発生する時間帯によって、人に与える影響は変化します。
「この時間帯に地震が来たらどうなるか?」という想像をすることで、有効な地震対策を生み出すことができます。
ぜひ、1日1回でも、地震が起こった時の「想像」をしてみてください。いざというとき、必ず役に立つでしょう。
避難場所の考え方
今回の熊本地震では、車で避難生活を送る方々を始めとして、「エコノミークラス症候群」の症状が見られました。この症状は、熊本地震に限ったことではなく、新潟県中越地震や東日本大震災など、災害時にはよく見られた現象です。
避難生活の最中は、日常生活のように動くことが極端に減り、環境の変化により脱水しやすくなることで、発症しやすくなると言われています。
避難所の環境を改善することが必要だと言われていますが、まずは、自分自身で予防をすることが先決です。
予防策としては、
・肢の静脈血流を良くするために数時間毎に歩く。
・ふくらはぎをマッサージする、弾性ストッキングを履く。
・血液が濃くならないように水分を補給する。
・車中泊を避ける。
・足のケガは早めに治療し、打撲したら包帯や弾性ストッキングで圧迫しておく。
等があります。
また、発想を変えると、車中泊をするのであれば、地震活動が落ち着くまで遠方に避難する、ということも有効だと考えます。
避難生活は、環境の変化でただでさえストレスがかかることです。そこへさらに余震が来ることで、恐怖とストレスの多重苦生活になってしまいます。
そこで、せめて余震の恐怖から逃れ、食料やトイレが不足した状況から解放されるために、遠方の親戚などを頼ったり、ホテルや旅館などを利用して避難する、ということも心理的に有効なことではないかと考えられます。
避難の方法は様々あります。自宅が全く無事であれば、そのまま暮らすこともできます。しかし、自宅が倒壊、または危険な状態であれば、避難せざるを得ません。
避難の仕方は様々あります。避難所生活で、身も心も疲弊してしまっては、せっかく助かった命があるというのに、とてももったいないことです。少しでも快適な避難生活を送るにはどうすればよいか、今のうちにぜひ、考えてみましょう!そして、いざというとき、家族が無事に避難できる方法を考え、話し合いを行ってみてはいかがでしょうか?
まとめ
・倒壊しそうな建物には近づかない・入らない!
・時間帯によって発生する被害は異なる!それぞれの時間帯で大地震が起こった時の被害を想像し、対策を考えることが大切!
・避難は、避難所や車中泊だけではない。様々な可能性を考え、快適に避難生活を送れるように、考えてみよう!
引用文献・サイト
◆検証熊本大地震 / 日経BPムック pp.34~57
◆みんなの防災ハンドブック / ディスカヴァー・トゥエンティワン p.51、p.190
◆NHK オンライン 視点・論点 2016年07月13日 (水) 「災害後のエコノミークラス症候群を防ぐために」
◆気象庁 「平成28年(2016年)熊本地震」について(第38報)
◆産経ニュース 熊本地震 自宅戻り本震で犠牲も 「前震では…」念頭に行動を