前回は、普段の生活空間の中で患者に取り付く前までの環境と状況の評価(チェック)を書かせて頂きました。今回は、取り付いた患者自身の身体の評価(チェック)について紹介します。
国際ガイドラインの確認方法

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基本的な流れは下記のとおりです。
①意識の確認→②呼吸の確認→③脈の確認
現在の国際ガイドラインではこうなりました。
①意識の確認→②素早く顔と胸を見て普通の呼吸をしているか確認(目視で行います。)
このように2つを比べてみると、国際ガイドラインの方が簡単で、あっさりしています。
でも、基本的な流れの方でも問題はありません。慣れているやり方や、教わっている方法でよいのです。
医療従事者向けの病院内心停止対応コースなどでは、気道確保しつつ脈・呼吸の確認をします。その理由は、1秒でも早い胸骨圧迫(心臓マッサージ)と除細動(AEDやカウンターショック)が救命率を劇的に上げることが確認できたからです。
呼吸の確認は10秒以内、呼吸の無い場合人工呼吸1秒に1回を2回、脈の確認10秒以内、脈の無いのを確認して胸骨圧迫です。
どうでしょう?倒れている人を見付けてから単純にでも20秒強かかることがお判りでしょうか。それを気道確保しつつ一度にやります。
医療関係者や手練れの方たちならいざ知らず、2、3年に1度の講習だけの一般の方たちでは、この動作の確実性と救助者本人のストレスは強く、たまったものではないでしょう。
“ただ寝てるだけ?”“息してるの?”“見て、聞いてもわからないよー!”と花畑を歩いていたら、突然、断崖絶壁にでくわすような心理状態で、意識・呼吸・脈を確認するのは相当なストレスにさらされると思います。私も最初はそうでした。
脈を計るときに自分の心臓のドキドキを患者の脈と勘違いしてしまった事があるほどです。今でしたらどちらの方法でもO.Kですが、教え伝えるなら国際ガイドラインの方が、救助者側の心理的ストレスが少ないと感じます。
迷ったら、先ず実行
国際ガイドラインでも、救助者側の心理で、呼吸・脈の確認で、自分の判断が本当に正しいのか不安で、10秒以上計測に時間を掛けてしまい胸骨圧迫までの時間が遅くなってしまうとのデータがあり、それがABCからCABになった根拠の一つとなったようです。
もっと簡単にいえば、普通、胸を強く押されれば(胸骨圧迫時は50キロ以上の力で押しています。)非常に痛いです!
痛いから当然抵抗します。(この前の段階の意識の確認の再チェックになりますね)
抵抗があるのは、少なくとも脈・呼吸があるということです。その時は、次にやることは、呼吸・脈の“観察”となります。観察の仕方は、また後日ご紹介しましょう。
以前は、動いている心臓に胸骨圧迫をすると不整脈が出るとか悪い影響が出るからやるな!と言われてましたが、世界的な膨大なデーターによって検証された結果、多少の悪影響が出るかもしれないが蘇生率・救命率に影響を与える事は非常に少ないとの結果が国際ガイドラインに反映されています。
だから私の様なMFAの指導員は、“迷ったら脈の確認無しで次に進みましょう”と指導します。
最初の意識の確認で、自分の判断に自信が無くても二の矢、三の矢で、その判断の評価(チェック)されていることがご理解いただけたでしょうか?
心肺蘇生法を習ったけど自信ないな、と思われている方の少しでも心の拠り所になればと思います。
次回は、意識の確認をして、受け答えは無いけど呼吸・脈があった場合のやり方を書こうと思います。ここに、先程書きました“観察”が入ってきますので、その方法も紹介したいと思います。