自動車の免許取得講習などで救急救命講習を受けると、必ず心肺蘇生法の実技訓練を行うかと思います。
その時に、人形を使って実際に息を吹き込んだり胸骨圧迫を行うのですが、この人形にモデルがいる事をご存じですか?
今回は救急救命講習の訓練に使う人形の由来を調べてみました。
モデルの人物
水死した少女
救急救命講習に用いる人形にはいくつかのタイプがありますが、そこで世界中で使われるLaerdal社のサイトを訪れると、20世紀初頭にまで由来を遡ってくれています。
フランスはパリにあるセーヌ川にて一人の少女が水死体となって引き上げられました。
特に危害を加えられた様子もなく自殺と考えられましたが、身元引受人が見つからなかった為、当時の慣習に則りデスマスク(顔を石膏などで型取りした物)が作成され埋葬されました。
彼女が人形のモデルとなっています。
作られた目的
悲劇を繰り返さない為
それから月日が経ち、1950年代にノルウェーで出版社と木製の玩具を販売していたアスムンド・レールダル氏はソフトプラスチック製の玩具やマネキン人形の製造を開始します。
その頃にセーヌ川で亡くなった少女の事を知り、溺れた人が居ても助けられる人が増える様にと、人工呼吸法の練習用マネキンとして彼女の顔を用いたマネキンを作る事を決めます。
レサシアンと名付けられた人形は1960年代に入ると救急救命医療の重要性から注目される様になり、心肺蘇生法の練習用人形へと発展していきます。
レールダルの会社は今では救急救命医療機器のメーカーとしてレサシアンやAEDといった医療機器の販売をおこなっています。
人型の重要性
救急救命のリアルさを求めて
レサシアンには幾つかのタイプがあり、下半身と腕がない最低限の部分のみを再現した「リトルアン」や全身モデルの「レサシアンファーストエイド」などがあります。
赤ちゃんを模したものやより小さな子どもの姿をしたモデルもありますが、全てに求められているのはリアルな状況での救急救命です。
単純に胸骨圧迫を訓練するだけなら人間の胸部と同じ構造と硬さを持った箱を用意すれば動作を学ぶことは出来ますし、人工呼吸も唇の形をしたケースがあればよいでしょう。
しかし、実際に倒れている人を見た時に同じ事が出来るとは限りません。
マスク等の機器を用いても人工呼吸を行うのは躊躇いが起こりますし、胸骨圧迫も充分な力を加えられないかも知れません。
手足があれば安全な場所まで運ぶ際に、周囲と助ける相手にどんな配慮が必要か想像もしやすくなります。
レサシアンは救命救急講習を通して、適切な行動が出来る様になるには欠かせない存在なのです。
まとめ
・セーヌ川で亡くなった少女がモデルになった
・レールダル氏は彼女の死を悼み救急救命の練習用人形を開発した
・練習用人形が用いられるのはリアルな状況を再現して、本番で躊躇しない為