間違った方法で液体ミルクや粉ミルクを取り扱っている人が多くいます。初めて子育てを始める親御さんだけではなく、第二子第三子を育てる親御さんも慣れによって油断しやすいので注意が必要です。ミルクは赤ちゃんの大切な栄養源です。取り扱い方法を間違うと、赤ちゃんの健康を害するかもしれません。大切な赤ちゃんのためにもミルクは正しく安全に取り扱いましょう。
今回は、液体ミルクや粉ミルクの取り扱い方法や注意点についてご説明いたします。
粉ミルクの正しい取り扱い方

現状では、赤ちゃん用のミルクと言えば粉ミルクが一般的ではないでしょうか。赤ちゃん用のミルクを粉ミルクで作るときは、使用する器具は全て清潔に保つことを心掛けましょう。洗い残しがあると、そこから雑菌が増殖するので注意が必要です。
粉ミルクを溶かすときに使用するお湯は、70℃以上でなければなりません。ミルクは低温でも溶けるのですが、70℃以上のお湯で作るのには理由があります。
WHO(世界保健機構)とFAO(国連食糧農業機関)「「乳児用調整粉乳の安全な調乳、保存および取扱いに関するガイドライン」」が公表されたことにより、2007年6月に厚生労働省から指導がなされました。ガイドラインには、調整粉乳は無菌ではないということが記載されています。調整粉乳に含まれる細菌は、Enterobacter sakazakii(エンテロバクターサカザキ)と呼ばれるもの。エンテロバクターサカザキは、乳幼児の髄膜炎、腸炎の発生に関わり、細菌に感染した場合、20~50%が死亡という報告があります。調整粉乳の中に細菌が混入した経緯や、細菌の重大性など詳しいことは現時点では判明していません。ちなみに、健康的な成人であれば症状は軽度で済むようです。
上記の細菌は70℃以上の温度で不活化すると言われているので、ミルクを作る際はお湯の温度が重要となります。
そうとはいえ、熱湯で溶かすとミルクの営巣素が損なわれるのではないかと、気になる人もいるはず。結論からお話をすると、国内で販売されている調整粉乳は、高温で溶かしても含まれるビタミン類やタンパク質など、営巣素がほとんど損失しない作りになっているので安心してくださいね。
70℃以上のお湯で粉ミルクを溶かしたら、40℃程度の一肌に冷まして飲ませます。ミルクは作ってから、2時間以内に飲ませて飲み残しは捨てましょう。細菌の増殖につながるので、ミルクの作り置きは絶対にしてはいけません。
抵抗力が低い乳幼児が、細菌によって健康を害するリスクを軽減させるためにも、粉ミルクを溶かす温度と、作ってから飲ませるタイミングに注意することが大切です。
液体ミルクとは

液体ミルクは、2018年8月8日に日本で製造や販売が解禁されました。食品衛生法の乳等省令、健康増進法の特別用途食品制度で基準が定められています。
外出時、粉ミルクであれば熱湯や白湯、哺乳瓶や小分けにした粉ミルクなど、いくつもの持ち物が必要になりますよね。それに比べて液体ミルクは、お湯で溶かす必要がなく、哺乳瓶に移し替えるだけなので簡単。泣いている赤ちゃんを待たせずに済みます。ちなみに、付属のストローは直接飲むためではなく、容器に移し替えるためのものです。
また、災害時には粉ミルクを溶かすための清潔なお湯が手に入らないことがあるので、液体ミルクをストック用として何個か保管しておくと安心です。常温保存できるのも便利ですね。祖父母に赤ちゃんを預かってもらうときにも、液体ミルクなら失敗なく作れるでしょう。
液体ミルクに否定的な意見もあるようですが、母親にとっても赤ちゃんにとってもメリットが多いのが事実ではないでしょうか。
まとめ
・粉ミルクには細菌が含まれている可能性がある
・細菌は70℃以上で不活化するのでミルクを作るときは温度に気をつける
・作り置きはせず、作ったらすぐに飲ませる
・液体ミルクは常温保存が可能
・液体ミルクは哺乳瓶に移し替えるだけでいい
参考サイト
◆江崎グリコ「日本初の液体ミルクについてもっと知りたい!製品開発を進めるGlico 研究員にインタビュー」
◆厚生労働省「育児用調製粉乳中のEnterobacter sakazakiiに関するQ&A(仮訳)」
◆厚生労働省「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドラインの概要」
◆一般社団法人日本乳業協会「育児用ミルクの調乳はなぜ70℃が適切なのですか?」