北朝鮮のミサイル実験が続いています。
核による直接的な攻撃は当然のことながら脅威でありますが、もう一つの脅威を認識しておかなければなりません。
4年ほど前にアップした記事を、再度紹介させて頂きます。
以下「防仁学2017年記事」
産経ニュースによると、「朝鮮中央通信が2017年9月3日、北朝鮮が行った水素爆弾の核実験で電磁パルス(EMP)攻撃まで加えられると主張した。」との報道がありました。
「電磁パルス攻撃とは、一体どのようなもので、電磁パルス攻撃を防ぐためには何をしていかなければならないか」についてまとめてみました。
電磁パルス攻撃とは
先進国に対する攻撃兵器
電磁パルス攻撃とは、超高高度(地表から数十キロ~数百キロ)で核弾頭を爆発させる事によって、数百キロ~千キロ、更にそれ以上の広大な地域に対して強力な電磁波による攻撃を仕掛けるものであります。
簡単に言えば、日本全体を電子レンジに入れてスイッチを入れるようなものであり、広範囲にわたって威力ある雷被害が及ぶようなイメージです。
通常の核兵器の脅威は熱線、爆風と放射能によるものですが、電磁パルス攻撃は人体に対して直接の影響は無いか、あっても極わずかなものとされております。
では、電磁パルス攻撃の恐怖とは一体何なのでしょうか。
仮に江戸時代の日本が電磁パルス攻撃を受けたとしても、その後の環境に対する影響を除けば殆ど影響は無かったと言えるでしょう。
しかし、社会インフラの整備された現代国家が電磁パルス攻撃を受ければ、殆どの機能がマヒしてしまいます。
防御されていないネットワークは使えなくなり、国の社会活動自体が停滞してしまいます。
発電所の機能も停止し、当然の事ながら金融システムにも影響が出て、ATMも使えなくなるでしょう。
鉄道や車、航空機等の交通機関にも影響が出てきます。
電子制御されているエンジンは全て停止してしまいます。
皆さんが使用している携帯電話も使用出来なくなるばかりではなく、ショートによる発火の可能性もあります。
病院の機能が停止してしまえば、手術中の方や治療中の方の命にも関わる事態となるでしょう。
電磁パルス攻撃の被害を抑えるためには
電磁パルス攻撃を防ぐためには、どの様にすれば良いのでしょう。
基本的には、シールドする事です。
二重、三重にシールドする事によって、その遮蔽効果は高まって来ます。
しかし、自分の保有している物を遮蔽しているだけでは不十分です。
電線やケーブルによって接続されている機器は、電線等を伝わって影響を受けてしまいます。
日本は、先進国の中でも電磁パルス攻撃に対しての対策が遅れていると言われています。
日本における対策の遅れを国会の場で追求したのは、小池百合子議員(現東京都知事)のみであり、極めて脅威あるものと認識しつつも、殆ど対策が進んでいない事が現状と言えるでしょう。
自衛隊の装備品を見ると、一定の対策は取られているようです。
戦闘機のキャノピー(風防ガラス)を見ると、コーティングされたような色に見えますが、これも対策の一つです。
当然ながら、エンジンの制御部や、配線等もシールドされております。
電磁パルス攻撃を受けた時、エンジンが停止したり、操縦系統が使えなくなったら大変です。
操縦系統については、過去の人力をケーブルや桿で伝える方式から、伝達部分を電気信号に置き換えたフライバイワイヤー方式に進化してきましたが、電磁的影響を受けにくいフライバイライトという光ケーブルを使って操縦信号を伝える物に変化してきました。
自衛という観点からは、限られた装備品や施設を改修して行けば事足りますが、国全体を守る事を考えれば、国家としての意志が必要となります。
電磁パルス攻撃を防ぐためには
対象国の電磁パルス攻撃を防ぎ、地上に被害を出さない為には、どの様な方法があるのでしょうか。
電磁パルス攻撃であれば、弾頭部分が大気圏に再突入する時の技術を持っていなくても攻撃可能であります。
このミサイルを迎撃する為にはどの様なものがあるのでしょうか。
現在、自衛隊に配備されているPAC-3は、迎撃高度が約15kmのため、電磁パルス攻撃を行おうとするミサイルに対しては迎撃する事が出来ません。
日本のミサイル防衛は低高度におけるPAC-3だけではなく、イージス艦に装備されたSM3が高高度の要撃を担っております。
現在、韓国に配備されると報道されているTHAADミサイルは、PAC-3とSM3の中間部分を担当する事になります。
また、ミサイル防衛の精度向上のためレールガン等、新たな技術も開発されてきています。
(参考、防仁学記事「北朝鮮、ミサイル発射に引き続き第6回目の核実験を実施か!」)
相手が攻撃を仕掛けてくる前に、地上で破壊してしまう事も一つの選択肢ですが、現在の日本には策源地を行う能力を持っておりません。
外交上の努力はどこまで通用するのか
軍事的な対処がエスカレートすれば極東地域が戦禍に巻き込まれる可能性が出てきます。
これを回避するには北朝鮮に核を放棄させるための、国際社会の一致した外交努力が必要となります。
では現北朝鮮政権はこれに応じる可能性はあるのでしょうか。
現在のところ、難しいという見方が大半を占めております。
大きな理由は「北朝鮮の現態勢を保持する」事にあると言えましょう。
歴史的に見れば、NPT(核兵器不拡散条約)で認められた5か国以外で保有しているのはインドとパキスタンです。
この2か国は反対される中、核兵器保有の既成事実を作ってしまっております。
核兵器保有を途中で放棄してしまったイラクのフセイン政権の様に崩壊させられるよりは、インドの様に既成事実化した後に存続する道を選択していると考えられるからです。
北朝鮮に核兵器を放棄させるための努力は、並大抵のものではありませんが、国際社会が一致協力して説得していく事が重要です。
まとめ
・北朝鮮は第6回目の核実験で電磁パルス攻撃の能力を持った可能性がある
・電磁パルス攻撃は電力や社会インフラに対し広大な範囲に甚大な被害を与える
・電磁パルス攻撃の被害極限には大きな努力が必要
・電磁パルス攻撃は大気圏再突入の技術が無くても可能な攻撃法である