昨日(3月27日)「栃木県那須町湯本の那須温泉ファミリースキー場で雪崩が発生し、登山をしていた高校生ら13人が巻き込まれ、8名の若い命が奪われました。」という報道がありました。
桜の便りが聞こえる季節は雪解けの季節でもあり、雪崩が発生し易い時です。
雪崩は、どのようにして発生するのでしょうか?
雪崩のメカニズムとそのパワーを調べてみました。
雪崩のメカニズム
地形や気象環境によって起こりやすくなる
雪崩は山の斜面に積もった雪が重みによって勢いをつけて崩れ落ちてくる現象です。
種類としては大きく分けて2種類あり、斜面に積もった雪がごっそりと滑り落ちる全層雪崩というものと、押し固められた積雪の表面に積もった雪が滑り落ちる表層雪崩に分けられます。
雪の量が少なくても泡雪崩という雪煙が時速200km以上という猛烈なスピードで斜面を下ってくる、強烈な破壊力を持った表層雪崩を起こす事もあります。
雪崩が起きやすい条件としては、急激な気温の変化により積もった雪の中で温度の差が生じて雪同士の繋がりが弱くなり崩れやすくなる事があげられます。厳寒期や春先の暖かくなる時期は特に発生し易くなります。
積雪量が通常より多くなる事も原因の一つです。
地形も重要な条件で、大きな雪崩は35°~45°の傾斜をもつ急な斜面で起こっている事が多く、1918年1月9日に現在の新潟県湯沢町で発生した三俣の大雪崩も豪雪によって積もった雪が最大40°の傾斜を持つ斜面を崩れ落ちた事が原因と考えられています。
加えて雪庇(せっぴ)という山の尾根や法面に風が吹く事で雪が突き出るように溜まる現象があり、非常に崩れやすいため雪崩を引き起こす原因となります。
三俣の大雪崩でも、雪庇が形成されていたと言われています。
雪崩の威力
雪崩は一撃で集落を壊滅させる能力がある
雪崩が持つエネルギーは高さによって変動しますが、人の背丈ほどある雪崩が押し寄せるエネルギーは1平方m当たり大型トラック一台分の圧力が掛かると言われています。
例えば、1938年12月27日に現在の富山県黒部市で発生した泡雪崩では近くの黒部ダム建設に関わっていた作業員が宿泊する鉄筋コンクリート宿舎の3階と4階が600mも吹き飛ばされ、84人の死者を出しています。
雪崩の被害は広域に及ぶ場合もあり、三俣の大雪崩では集落が丸ごと飲み込まれて民家28軒と学校1棟が埋まり、犠牲者155名を出す日本で最も被害が大きい雪崩災害となっています。
広域に被害を及ぼしやすい雪崩として面発生雪崩という発生地点が広域に及ぶものがあり、一点から発生する点発生雪崩と区別されています。
雪崩に巻き込まれた場合、巻き込まれた瓦礫によるケガや衝撃による背骨の骨折といった高エネルギー外傷、雪に埋もれる事で窒息と低体温症という危険があります。
どの危険も早急な応急処置と救助が必要になり、生存者による捜索救難が大切になってきます。
雪崩への対応策
雪崩が起きた場所には近寄らない
対策方法として最もよいのは発生する場所に近寄らない事です。
雪崩は同じ様な場所で起こっている事が多く、発生したという情報がある場所は避ける事が大切です。
また、大雪が発生した直後も雪崩が起きやすいので天気予報にも注意しましょう。
雪崩被害に遭う状況としては、ウィンタースポーツを楽しんでいる時以外にもスキー場への道筋などで起こる事もあります。
雪山に面した高速道路などでは予防柵という雪崩を抑える柵を設けたり、スノーシェッドという雪崩の通り道になる屋根を設けて対応しています。
スキー場などではアバランチコントロールという人工的に小さな雪崩を起こして被害を抑える方法や雪庇を人力で崩す事で雪崩を予防する処置が行われます。
万が一、雪崩に巻き込まれた場合には出来る限り雪崩から離れるように山の斜面を横へ移動するように逃げましょう。雪に飲み込まれても出来るだけ浅い位置へ行けるようにもがいて浮上しましょう。それでも埋もれてしまったら口元に手でスペースを作るといった呼吸を楽にする処置をとるようにして、救助を待ちましょう。
周囲の人も出来るだけ早く救助を始める必要がありますが、雪崩は立て続けに起こる場合があり、二次災害に巻き込まれないように注意する必要があります。
少しでも見つかるのが早くなるように、雪山登山では雪崩ビーコンという自分の位置を知らせる機器を取り付けるといった対策を事前に行う事も大切です。
雪崩によって埋もれた場合、生存率は60%ほどと言われています。
少しでも助かる可能性を上げるには多大な努力が必要ですが、出かける前に天気をしっかりチェックして、雪崩の危険がないかを確認するだけでも、安全性は全く変わってきます。
正しい雪崩の知識をもって自分の身を守って行きましょう。
まとめ
・雪崩は地形や天候によって起こりやすさが変わる
・雪崩のエネルギーは集落を壊滅させるほどの威力を持つ
・雪崩に対する対策は「事前に起こりやすい場所を避ける方法」と「管理者側で予防処置をとる方法」がある。
参考サイト
◆雪崩で死なないための10の法則
◆雪崩に関する基礎情報_雪崩はなぜ起こるのか
◆首相官邸 雪害では、どのような災害が起こるのか