降り積もった雪が溶けはじめ、春の温もりが感じられる季節となりました。この時期に気を付けたい災害の一つに雪崩が挙げられます。雪崩は積雪の多い1~2月だけでなく、3~5月にかけても発生します。2017年3月には登山講習会に参加していた高校生および教員8名が、雪崩に巻き込まれて命を落とす事故が発生しました。今回は雪崩がおきる仕組みと起きやすい場所についてお伝えしますので、雪山などにレジャーに行く時は十分に気を付けてください。
雪崩はなぜ起きるのか
雪崩は斜面上にある雪が崩れて流れ落ちてくる現象のことです。斜面に積もっている雪は雪同士で結合していますが、気温や圧力など様々な要因によって雪同士の結合力が弱まると、斜面に積もった雪が重力で一気に落下します。この時に発生するのが雪崩です。雪崩には大きく分けて2種類あります。
表層雪崩
1つ目は「表層雪崩」です。表層雪崩は既に雪が積もっている斜面に新たな雪が降り積もり、新雪層(新たに降り積もった雪の層)が滑り落ちてくることによって発生します。表層雪崩は積雪が多い1~2月に発生しやすく、既に降り積もった雪の上に大量の雪が降り積もった時は注意が必要です。表層雪崩の速度は時速100キロ~200キロと非常に速く、被害の範囲がより広範囲であるという特徴があります。
全層雪崩
もう1つは「全層雪崩」です。全層雪崩は気温の上昇や雨によって雪と地面との間の摩擦力が弱まり、積雪層全体(底面から表面までの雪全体)が滑り落ちてくることによって発生します。全層雪崩は気温が上昇する3月~5月(融雪期)にかけて発生しやすく、雪が降った後に気温が急上昇する日や雨が降った後は注意が必要です。速度は40キロ~80キロであり、表層雪崩と比較するとやや遅いものの、雪が固まりとなって襲ってくるため油断はできません。
雪崩が起きやすい場所とは?
雪崩は急な斜面で発生しやすいです。斜面の角度が30度以上になると雪崩発生の危険があり、特に傾斜が35度から45度の斜面が最も危険であるとされています。
傾斜条件に加え、木がまばらに生えている場所は雪崩が発生しやすいと考えられています。草地は裸地と比較すると雪崩が起きやすいです。
この他にも以下のような兆候がある場所は雪崩の危険があります。
・雪庇(せっぴ)と呼ばれる庇状の積雪がある場所
・雪崩予防柵から雪が張り出している場所
・雪が降り積もり、斜面の地形が解らなくなるほど平らになっている場所(表層雪崩の前兆)
・雪の固まりが落ちている場所
・雪が積もった斜面に亀裂がある場所(全層雪崩の前兆)
・雪が積もった斜面にシワができている場所(全層雪崩の前兆)
雪崩は山肌だけではなく住宅地の裏山や道路などの生活区域でも発生します。雪が積もっている時は安心せず、上記の雪崩の前兆を参考にして被害に巻き込まれないようにしましょう。
まとめ
・雪崩は斜面に積もっている雪同士の結合が弱まって発生する
・雪崩には2種類あり、表層雪崩は1~2月に、全層雪崩は3~5月に発生しやすい
・雪崩は傾斜が35度から45度の斜面が最も起きやすい
・雪崩の前兆が見られる場所には近づかない