南海トラフ巨大地震について、11月より「新情報制度」が導入されることになりました。
そもそも南海トラフ地震とは、どこで発生して、どんな地域に、どんな災害をもたらすのでしょうか?そして、その具体的な対策はどうすればよいのでしょうか?
情報が色々とありすぎて、わかりにくくなっている南海トラフ地震について、
①どの地域でどのような被害が起こるとされているのか?
②具体的な備えの方法は?
③『新情報制度』とは何か?その情報をどのように活用すればよいのか?
の3回シリーズで考えて行きます。
第2回目の今回は、前回の代表的な被害想定(津波、家屋倒壊、長周期地震動)をもとに「今できる具体的な備え」についてまとめてみます。
津波対策
南海トラフ地震による津波は、地震発生から数分で到達してしまうことから、避難は一刻を争います。避難経路は常に確認し、地震発生時にどこにいたとしても確実に避難できるような準備が不可欠です。外出時は、津波の避難経路を看板等で常に意識しておきましょう。高台の方向が分かるだけでも安心です。
また、自宅や職場からの避難経路は必ず複数計画しておくべきです。大地震発生後は、その避難経路が建物の倒壊などで道が塞がれ、とても通行できないような事態も考えられるからです。大地震後は近隣の様相が一変することを考慮に入れ、避難経路を見直すことも大切です。逃げる時は、より高い場所に逃げるという意識が大切です。津波の規模は、東日本大震災のように想定をはるかに上回ることがあります。指定の避難場所についたからと安心せず、本当にここで大丈夫か?という意識を持つことで、危険を素早く察知することができます。
そして、津波対策として重要なのが「家屋の耐震化」です。意外に思われる方も多いと思いますが、耐震化されていない建物が倒壊することによって、避難経路が絶たれ、住民の避難を妨げることになりかねないからなのです。家屋をしっかりと耐震化することは、自分の家族の命だけでなく、近隣住民の命をも守る行動であるということを認識していただきたいと思います。
家屋倒壊
各自治体において耐震化の普及率は異なりますが、南海トラフ地震に特に密接な地域では、家屋の耐震化が進んでいることと思います。
しかし、震源から遠い地域であったり、過去に大地震が発生したことのない地域では、住民の耐震化に対する関心は非常に薄いのも事実です。地震は自然現象であり、たとえ震源から遠い地域であっても激しい揺れが観測される可能性もあります。
日本全国、どこでも大地震の可能性を秘めていると心得て、必ず家屋の耐震化を進めていくべきでしょう。
木造住宅に関して言えば、特に注意すべき住宅は『昭和56年5月以前に建てられた住宅(旧耐震基準で建築されており、耐震性はほぼ無いと考えてよい)』です。
この年代に建築された住宅は、ぜひ耐震診断を受診し、必要な耐震補強工事を早急に行うことをお勧めいたします。
また、個人住宅だけでなく、近年の震災においてはいわゆる「家賃の安いアパート」が倒壊の被害に遭うケースが多く、若い学生さんの命が多数奪われています。アパートのオーナー様には、ぜひ、構造的な安全を確保した住宅を提供し、地震で若い命が奪われないような取り組みをしていただきたいと思います。
家屋倒壊と同時に、「大型家具の転倒」にも十分配慮する必要があります。阪神淡路大震災では、家屋や大型家具の下敷きとなって窒息死した方が8割を占めました。
耐震性を確保したうえで、寝室には大型家具を置かない、転倒しても出入口を塞いだりガラスに命中する位置に配置しない、といった配置換えの工夫や固定をしましょう。さらに、大型家具の転倒やモノの落下の心配がない部屋を一つ作り、その部屋をシェルター部屋とし、地震の際はシェルター部屋に逃げるというルールを作っておくのがベストです。
家具の配置換えであれば、固定する手間やお金もかかりません。ぜひ、今すぐ始めましょう。
長周期地震動対策
首都圏では、高層ビルなどがゆっくり揺れ続ける「長周期地震動」が想定されています。
高層マンションの高層階(おおむね10階以上)にお住まいの方は、家具の固定は必須です!
家具がどのような動き方をするのか、こちらの実験映像をご覧下さい。
防災科学研究所(Youtubeチャンネル)
いかがでしたでしょうか?
長時間揺れ続けることにより、重いテレビや冷蔵庫がずっと暴れまわっていましたね。
じつは、長周期地震動で恐ろしいのは、「重い家具がずっと暴れ続ける」ということなのです。そして、地震後の部屋は足の踏み場もなくなり、部屋から避難することも困難になることが予想されます。
このような理由から、高層階では特に、重い家具(食器棚、本棚、冷蔵庫など)の固定は必ず行いましょう!
さらには、テーブルなども滑って動き回るため、よく学校の避難訓練などで「テーブルの下に隠れなさい」と教わった方も多いと思いますが、この場合、それは全く意味を成さないことも想像がつくと思います。
長周期地震動対策としても、前述したような「シェルター部屋」を作ってそこに避難するというルールをぜひ作ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
・津波対策
どこにいても避難可能なように、常に避難経路を確認する。
自宅や職場などからの避難経路は複数持っておく。
避難はより高い場所に!常にアンテナを張る。
建物の耐震化も津波対策の重要なポイント。
・家屋倒壊
昭和56年5月以前に建築された住宅はすぐに耐震診断を!
家屋倒壊は自分の命だけでなく、近隣住民の命をも奪う可能性があると心得る。
家屋倒壊プラス大型家具の固定または配置換えで、命を守る。
・長周期地震動対策
暴れ続ける大型家具の固定は必須!
モノを置かないシェルター部屋を作って、そこに避難しよう。
参考サイト
◆内閣府:「南海トラフ巨大地震の被害想定について(第二次報告)資料2-1」
◆防仁学:「3.11特集 東日本大震災を教訓に 高層階の地震対策、できていますか?」
◆防仁学:「地震への備えには優先順位がある! 阪神大震災に学ぶ「正しい備え」とは」
◆南海トラフ巨大地震について知ろう!① どこでどんなことが起こるのか、知っていますか?