本日2017年7月4日午前9時39分頃に北朝鮮西岸から弾道ミサイルが発射され、我が国のEEZ内に落下したとの報道がありました。
また昨年2016年8月24日午前5時、北朝鮮東部の咸鏡南道(ハムナンギョ)に面する新浦(シンポ)市の沖から潜水艦発射型弾道ミサイルを発射し、日本海上を約500km飛翔した日本の防空識別圏の範囲内に着弾しました。
これは2日前の8月22日より韓国で行われた米韓共同演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」に対抗したものと考えられています。
今回の弾道ミサイル発射は、24日行われた日中韓外相会談を意識しているともいわれて、安倍総理大臣も今回のミサイル発射に北朝鮮へ抗議を行った旨を記者団へ語っています。
では、今回北朝鮮が発射した弾道ミサイルはどの様なものなのでしょうか? その実態へ迫ってみました。
潜水艦発射型弾道ミサイルとはなに?
水中から静かに目標を狙うミサイル
潜水艦発射型弾道ミサイルとは、水中から密かに弾道ミサイルを発射するシステムで、冷戦時にソビエト連邦が開発したシステムです。
特徴として密かに弾道ミサイルを発射できるというだけでなく目標の傍までミサイルを運ぶ事が出来るので、比較的射程距離の短い弾道ミサイルでも遠くの国へ影響を与える事が出来ます。
北朝鮮のものは、ディーゼルエンジンとバッテリーで動く通常動力型の潜水艦を改造して作られたとされています。
北朝鮮はかつてソ連が運用していたゴルフ型弾道ミサイル潜水艦(629型潜水艦)を1993年にスクラップとして輸入しており、それを参考として建造されたと考えられています。
北朝鮮の弾道ミサイル潜水艦がゴルフ型に準ずる性能だった場合、弾道ミサイルを3発搭載している事が考えられ、観測されているデータから北朝鮮の潜水艦は大きさもゴルフ型に近いと言われています。
ただ、ゴルフ型弾道ミサイル潜水艦は、発射装置を水上に出さなければミサイルを発射出来ませんでした。
今回発射された弾道ミサイルが潜水中に発射されたのか、浮上している状態から発射されたのかは不明ですが、いつ何処から放たれるか分からないミサイルを保有しているという点でかなりの脅威であると言えます。
北朝鮮はどんな目的で持っているの?
北朝鮮の生存戦略
北朝鮮は金正日が亡くなり、息子の金正恩へ政権が交代した事で政情が不安定になっていたと考えられています。
その為、側近の有力者ら70人以上が処刑されたと報じられており、その中には金正日時代に活躍していた人たちも含まれています。
外交方面でも国内の不満を外に逸らすため強硬的な方向へ進めていると考えられています。
金正日体制の時も、恫喝外交を行って食料品の援助などを引き出すといった手法が用いられてきました。
一方で食料事情などは金正恩体制に移行してからは解決しつつあるという話があり、弾道ミサイルの発射や核兵器の使用といった手段に出るのは内政面とは別の理由があるとも考えられます。
それでも北朝鮮が弾道ミサイル潜水艦を保有する最大の理由として考えられるのは、他国との軍事力に差があり、ミリタリーバランスを保って生き延びるには生存性の高い報復手段が必要だからだと考えられます。
弾道ミサイル潜水艦の保有は、戦争になった場合に生存する可能性が高い核兵器の運搬手段です。
核戦略の用語では「第二撃能力」といい、核攻撃を受けた場合も生き残って相手国に報復を行う能力がある事を示します。
北朝鮮は世界で第2位の規模を誇る軍隊を持ちますが、装備の近代化が進んでいないため核兵器を中心とした戦略打撃能力でしかアメリカといった大国に対して対抗できないのです。
また、「イラクの様に滅ぼされては!」と考えているのかも知れませんね。
その様にして考えると、北朝鮮にとって重要な存在である事が分かります。
北朝鮮に対しては外交面で解決が図られ、一刻も早く恫喝的な外交が止められる事が望まれます。
まとめ
・潜水艦発射型弾道ミサイルは密かに弾道ミサイルを発射できる。
・北朝鮮にとって軍事上、外交上の生命線である。
参考サイト
◆朝鮮 弾道ミサイル発射可能の新型潜水艦建造=韓国筋「聯合ニュース」
◆金正恩第1書記の側近、公開処刑 反逆罪で「産経ニュース」
◆北朝鮮、実は食糧自給率100%に近い?「東洋経済」