ノロウイルスの流行シーズンに入りました。ノロウイルスは感染力が強いウイルスであることから、家族がノロウイルスに感染した時は家庭内で蔓延しないように、看病や消毒に気を配る必要があります。
ノロウイルスの消毒を行う時はアルコールではなく、次亜塩素酸ナトリウムを用います。今回は次亜塩素酸ナトリウムによる消毒の方法についてご紹介します。
ノロウイルス胃腸炎

ノロウイルスによる胃腸炎は、ノロウイルスに感染することによって起こります。主な症状は吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・発熱で、1~2日続きます。後遺症などはありませんが、乳幼児・高齢者・持病による体力が低下している人は、脱水症状や嘔吐物を詰まらせることによる窒息に気を付ける必要があります。
ノロウイルスの潜伏期間は24時間から48時間です。感染力が非常に強く、わずかなウイルスが体内に侵入しただけで感染・発症するといわれています。
主な感染経路は経口感染・接触感染・飛沫感染です。経口感染は、ノロウイルスに汚染された食品を食べた時や、ノロウイルスに感染している人が調理した食品を介して感染することがあります。接触感染は、ノロウイルスに汚染された物を触った手・指を介して感染します。飛沫感染は、患者の汚物が放置されている時や間違った手順で処理した際に、ウイルスを含んだ有機物が舞い上がることによって起こります。患者の便や吐しゃ物には大量のウイルスが含まれていることから、汚物の処理を正しい手順で適切に処理し消毒を行うことは、感染を防止するためにとても重要なのです。
消毒を行う際に、一般的にはエタノールや逆性石鹸が用いられます。ところが、これらの薬剤はノロウイルスに対する効果が薄いと言われています。ノロウイルスを無力化するためには、次亜塩素酸ナトリウムを用いて消毒を行います。
次亜塩素酸ナトリウムを使った消毒液の作り方
次亜塩素酸ナトリウムは難しい名前をしていますが、ドラッグストアなどで購入することができる市販の塩素系漂白剤に含まれています。ここでは市販の塩素系漂白剤(濃度5パーセント程度のもの)を使用した消毒液の作り方をご紹介します。
消毒液を作る時は、500ミリリットルのペットボトルを準備しておくと簡単です。ドアノブや手すりなど患者が触れた場所を消毒する時は、水2.5リットル(500ミリリットルのペットボトル5本分)に対し10ミリリットルの塩素系漂白剤(ペットボトルのキャップ2杯分)を混ぜた消毒液(濃度0.02%)を使用します。便や吐しゃ物などが直接かかった場所を消毒する時は、水0.5リットル(500ミリリットルのペットボトル1本)に対し10ミリリットル(ペットボトルのキャップ2杯分)の塩素系漂白剤を混ぜた消毒液(濃度0.1%)を使用します。
消毒液を作る時は換気を十分に行い、手や目を手袋やゴーグルで保護しましょう。また、消毒液の効果は時間とともに薄れてしまうので、作り置きはせず、その都度作るようにしてください。
消毒の方法

嘔吐物等を処理する時や嘔吐物等に近づく時、消毒をする時は、必ずマスク・手袋・ゴーグル・使い捨てのエプロンを着用し、感染防止対策をしてから行います。
便や嘔吐物がある場合は使い捨ての雑巾やペーパータオルを利用します。あらかじめ消毒液に浸しておいた雑巾やペーパータオルを汚物にかぶせ、外側から内側にふき取っていきます。ふき取った雑巾類はビニール袋の中に入れ、消毒液を吹きかけてから口を縛って処分します。
その後、便や嘔吐物があった場所の周囲2メートルの範囲を、消毒液を用いて消毒をします。やり方は、汚染された場所を消毒液に浸したペーパータオルなどで覆います(時間は10分程度)。金属など塩素で腐食しやすい場所は、ペーパータオル類をどけた後に水拭きをしてください。汚物の処理や消毒を行うときに床に膝をつくと、衣服が汚染される恐れがあります。なるべく中腰で行うようにしましょう。
患者が触れた場所(ドアノブなど)を消毒するときは、消毒液を浸したタオルやペーパーで拭き、その後ぬれタオルでふき取ってください。
嘔吐物などが付着した衣類は、他の衣類とわけて洗濯します。そのまま洗濯機を用いると洗濯機が汚染されてしまうため、たらいで下洗いしたのち、濃度0.02%の消毒液に10分浸し、消毒をしてください。ただし、次亜塩素酸ナトリウム消毒液を用いたつけ置きは色落ちしてしまうため、そのことも考慮したうえで行ってください。
まとめ
・ノロウイルスは感染力が強いウイルスである
・感染拡大防止のため、汚物の処理や消毒は適切に行う
・消毒には次亜塩素酸ナトリウムを用いた消毒液を使う
・消毒は感染防止対策をとったのち、正しい手順で行う
参考サイト
◆厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」
◆国立感染症研究所「ロウイルス感染症とその対応・予防」
◆広島県「ノロウイルス対策用消毒液の作り方」
◆広島市医師会だより「第488号」