2016年11月19日、北海道札幌市にある定山渓ビューホテルに宿泊した客115名がノロウイルスに感染するという集団食中毒事件が発生しました。
同じ日には新潟県の小学校で児童110名が下痢やおう吐を訴える食中毒事件を起こしており、今後も全国で同様の事件が起こる事が考えられます。
というのも、ノロウイルスは冬場に感染力が強まるとされており、毎年12月~1月が感染のピークになっています。
プロの調理人でも対策が難しいのがノロウイルスです。
今回は調理師監修のもと、ノロウイルスに注目して食中毒の予防方法を紹介します。
(2016/12/11追記)
2016年12月9日、陸上自衛隊富士駐屯地で隊員ら約350人が下痢や吐き気などの症状を訴えました。
ノロウイルスや食中毒が原因の可能性があり、保健所が原因を調べています。
(2016/12/14追記)
12月11日に国立感染研究所が「直近1週間のノロウイルス感染人数が10都県で1医療機関あたり20人を超えた」という発表がありました。
1医療機関で20人以上が確認される状態は、「警戒」するべきレベルとされています。
ノロウイルスが猛威を振るうシーズンに突入しました。
対策をしっかり行い、十分にご注意ください。
参考リンク:国立感染研究所ノロウィルス等検出状況
ノロウイルスとは
感染力が強いウイルス
1968年にアメリカ・ノーウォーク州にある小学校で集団食中毒事件が発生しました。
この時、患者の糞便から新型のウイルスが発見され、地名にちなんでノーウォークウィルスと呼ばれるようになりました。
4年後の1972年にはこのウイルスが電子顕微鏡で詳しく観察され、非常に小さな小型球形ウイルスである事や、世界各地で同じようなウイルスが食中毒を引き起こしていることが明らかになりました。
日本では北海道札幌市で見つかったサッポロ型というタイプも存在する事が分かりました。
2002年に第12回国際ウイルス学会にて、それまでは「ノーウォーク様ウイルス属」と呼ばれていたものを「ノロウイルス属 (Norovirus)」と呼ぶことになりました。
このノロウイルスは培養が非常に難しく、対策方法の研究がなかなか進まない事が特徴です。
現在まだノロウイルスに有効なワクチンは開発途中で、自然に治癒させるための対処療法しか打つ手がありません。
糞便や唾液などのしぶきに触れた手で食事をしたり、汚染された食品を食べたりといった経口摂取により感染します。
乾燥した環境でも20℃程度の気温があれば4週間以上も感染力を失わないとされており、飲食の際には十分に注意が必要です。
前述の通り、冬場は感染力が強くなり流行する傾向があります。
特に12月から1月がピークですので、お気を付けください。
2015年だけでもノロウイルスによる食中毒事件は481件発生し、14,876名もの方々が苦しめられました。
ノロウイルスは大腸菌と異なり毒素を出しませんが、腸管の中で増殖して腹痛やおう吐、下痢、38℃前後の発熱を引き起こします。
24時間~48時間ほどの短い潜伏期間があり、発症すると1~2日ほど非常につらい症状が続きます。
幼児や高齢者の方は自己治癒能力が低いので、症状が重くなる傾向があり注意が必要です。
ノロウイルス予防方法
衛生的な環境を保つ
ノロウイルスに対する予防策として効果的なのが、清潔な環境を保つ事です。
手から口への感染が最も可能性が高いので「口に入れるもの」と「手で触れるもの」それぞれへの対策が重要です。
例えば「口に入れるもの」の対策だと、食器や調理器具を熱湯で洗ったり、汚れを拭き取ったりしておく事が大切です。
台所にある台拭き・ふきん・手ぬぐいなどはこまめに消毒殺菌するようにしましょう。
ノロウイルスは熱に弱いので、熱湯につけたりアイロンをあてたりするのが効果的です。
食材では生貝や外国産の漬物などに付着している場合が多いのですが、どんな食材でも調理・加工した人の手洗いが不十分な場合は付着してしまうことがあります。
基本的には85℃以上の熱で1分加熱されれば感染しなくなります。
ただし、今年10月に冷凍メンチカツの中心部に火が通らずO-157による食中毒を誘発した事件がありました。
冷凍食品は凍ったまま調理を開始すると内部まで熱が通るまでに時間がかかる場合がありますので、事前にレンジや自然解凍などで温めてから調理したほうがより安全でしょう。
「手で触れるもの」の対策は、なんといっても手洗いです。
普段から感染する可能性を減らすために、外出から帰った際やトイレから出た時、赤ちゃんのおむつを替えた時などは忘れずに手洗いをする事が大切です。
温かいお湯を使う事で手洗いの効果を高める事が出来ます。
消毒用アルコールや石鹸自体にはノロウイルスを倒す効果はありませんが、手指から落としやすくする効果はあります。
手洗いを行う時は手をしっかり濡らしてすすいでから、よく石鹸を泡立ててしっかり洗い流す様にしましょう。
すすいでから消毒するのが効果的です。
コンビニのあんまんや肉まんがとっても美味しい季節ですが、食べる時は直接手で触らないように注意しましょう。
万が一ノロウイルスにかかってしまった人が家族や会社で出てしまった場合、トイレ・ドアノブ・蛇口などには直接手で触れないようにしましょう。
感染を拡大させないためには、十分に汚れを拭きとってから消毒する必要があります。
吐しゃ物などがあった場合はマスクをしたうえで手で触れないようにして速やかに拭きとり、消毒もしっかり行いましょう。
ノロウイルスが本格的に流行り出す時期に差し掛かっています。
食卓の安全を守って、楽しい年末年始を過ごしましょう。
まとめ
◆ノロウイルスは感染力が強く食中毒を引き起こす
◆手洗いをしっかり行い、清潔を保って予防しよう
◆食品はよく火を通して殺菌しよう