日本では2020年に東京オリンピックを控えており、首都圏の安全確保が急務となっています。
東京では22年前の1995年3月20日に世界初の化学兵器を用いた同時多発テロである「地下鉄サリン事件」が発生しました。
今回は地下鉄サリン事件から考えるテロリズムの脅威と実態を調べていきます。
地下鉄サリン事件とは
捜査かく乱目的のテロ
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防衛白書 地下鉄サリン事件
テロリズムとは、何かしらの目的を達成する為に武力などを用いた危害を加える行動を行う事です。
2001年にアメリカで起こった9.11同時多発テロは他国に対して政治的なメッセージを与えた事例の一つと言えます。
地下鉄サリン事件の場合は1994年6月27日、長野県松本市の裁判官宿舎付近にてサリンガスを散布した「松本サリン事件」による「オウム真理教教団施設」への強制捜査の矛先を逸らす目的で行われました。
これによって、霞ヶ関駅を通過する日比谷線、千代田線及び丸ノ内線の各列車にサリンガスを封入したビニール袋を配置し、実行犯が傘の先端で突き破らせ散布しました。
12名の尊い命が奪われると共に、約5000人に及ぶ負傷者を招く結果となりました。
地下鉄サリン事件の問題点
対応した装備の調達が遅れていた
当時、未曾有の化学テロ事件に対応したのは「警視庁」および「東京消防庁」そして「自衛隊」でした。
救助に当たった医療関係者に正確な情報が伝達されていなかったため、救助に従事した者にも被害が拡大した事が問題となりました。
また当時サリンに対し組織的に対応できるのは自衛隊だけでありました。
自衛隊からは日本でも数少ない化学戦の専門部隊であり当時大宮に配備されていた「第101化学防護隊」が中心となり都内の「第32普通科連隊」が加わり除染作業に参加しています。
しかし専門家となる化学科隊員の人数が少なかった為、作業の中心を担ったのは専門的教育を受けていなかった一般の隊員達でした。
これとは逆に、自衛隊の医務官は事件の前に教育を受けていたため、派遣先の病院において主導的に活動を実施して早期治療に貢献しておりました。
現在の対応
公的機関が協力し化学テロへの対応を進める
現在、内閣府は国内で大規模化学テロが発生した場合に備えて公的機関を取りまとめる危機管理対策に取り組んでいます。
特に化学テロの再発を防ぐ為に、「原料となる物質の購入に対する規制」や「警備体制の強化」が行われ、万が一発生してしまった場合に備えた「医療体制の強化」と「化学戦対応部隊の設立」が行われました。
東京都では「警視庁の化学防護隊」および「東京消防庁の化学機動中隊」が該当します。
自衛隊でも化学テロ対策に力を注いでいて、第101化学防護隊を改編し、「中央特殊武器防護隊」と「特殊武器衛生隊」の編制を行いました。
彼らは日本の化学戦に於ける中心戦力として増強され2011年の東日本大震災に於ける福島第一原発の事故対応にも出動しています。
トランプ大統領の就任を契機に、今も活動を続けるイスラム教武装組織ISILやアルカイダ、といったテロリスト集団が活動を活発化させる可能性があると共に、北朝鮮の特殊部隊といった高度な訓練を受けた武装組織が日本国内でテロを行う可能性が全く無いと言える訳ではありません。
アメリカと同盟関係にある以上は、トランプ大統領が打ち出すと考えられる強硬的外交路線の影響を受けることもあるでしょうし、仮に同盟でなかったとしても増え続けるテロの脅威に備える必要があるでしょう。
オウム真理教による地下鉄サリン事件から22年を迎え、3年後に東京オリンピックを控えた今、改めてテロリズムに対する備えを確認していく必要があります。
まとめ
・地下鉄サリン事件は世界最初の同時多発化学テロ
・当時は「装備の不足」や「知識不足」に悩まされたが、今は対応が進んでいる
・今後、不安定化する国際情勢を契機としたテロの脅威に備える必要がある
参考サイト
◆平成8年 警察白書 新しい組織犯罪への対応 ~オウム真理教関連事件を回顧して~
◆生かされなかった教訓 ~松本サリン・20年後の真実~ NHK クローズアップ現代
◆地下鉄サリン事件を踏まえた政府の主な対応 他 内閣官房
◆オウム真理教 公安調査庁
◆『地下鉄サリン事件戦記―1995年3月20日、その時、首都は「戦場」となった』 広仁会:広島大学医学部同窓会