2016年10月7日、前年の12月に自殺した大手広告企業の電通にて努めていた女性が過労による自殺だったと三田労働基準監督署が労働災害と認定しました。
長時間の労務によるストレスと疲れにより自殺に追い込まれてしまった事件ですが、同様の事が災害時にも発生します。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)という精神的な病です。災害が及ぼす物理的被害とは別にある精神的な被害を調べてみました。
PTSDの被害
苦痛により社会復帰が出来ない場合も
PTSDは極度のストレス環境に置かれる事で、誰もが発症する可能性のあるストレス性障害です。
PTSDという言葉が生まれ、歴史的に注目されたのは今から100年前の1914年に起きた第一次世界大戦の時です。
当時シェルショックと呼ばれていたストレス障害は、臆病者の言い訳と見られていましたが、余りに多くの患者が出る事から精神医学的に研究されて、戦闘時に於ける極度のストレス環境に置かれた事が原因と分かりました。
今も戦闘によるPTSDは確認され続けていますが、日本では2011年3月11日に起きた東日本大震災で被災者だけでなく救助に従事した警官や消防士、自衛官が病んでいる事が判明しています。
当時、目の前で津波に流される光景を目撃したり、ご遺体に直接関わった方がかかるケースが多い様です。
また、原発事故に伴う放射線に対する恐怖や長期間続く避難生活による影響もあります。
主な症状としては、思い出したくない当時の光景を突然思い出したり、音や光に過敏な反応を見せる、逆に感情が麻痺した状態になっている事が、原因となる体験から1ヶ月以上経過しても起きる事が特徴です。特に当時の光景を思い出す事をフラッシュバックと言い、ストレス状態を継続させる要因となります。
酷い場合はパニックを起こしたり、身体的な障害を引き起こす場合があります。
PTSDの患者はストレスから逃れる為にアルコール依存症などの嗜癖行動を伴う場合があり、治療を必要とする場合があります。
PTSDの予防方法
ストレスを溜め込まない
PTSDにかからないためには、どの様な方法があるでしょうか。
絶対的な方法ではありませんが、「ストレスを溜め込まない」事が重要です。
避難生活を続けていれば、ストレスを感じる事も多いでしょうが、避難所の皆さんで、一緒に作業をしたり、簡単な体操やヨガ等でもストレスを発散する一助になるでしょう。
災害派遣で活動している自衛官も同様です。
テレビで見ているだけでも現場の大変さは伝わって来ますが、映像からは主に視覚しか伝わって来ません。
東日本大震災後の救難・捜索活動においては、寒さに加えて嗅覚にまで強い刺激を受ける状態でした。
その様な状況で活動しても一人も見つける事が出来なかった時は、「自分達が行っている事は意味のあるものだろうか」等、様々な気持ちが沸き上がってくるものでした。
活動が終わっても、汚れた服装のまま簡易ベッドで休息すれば、健全な人間でもストレスが蓄積してきます。
このような時に、行っていた事が「解除ミーティング」と呼ばれるものです。
日々の活動終了時に、一人一人が自分の思いを話し心の内を発散して、それに対し指導者が「皆の行った事は無駄な事ではなく、こんなに有意義な事だったんだ」と意識付ける事によってストレスを減じて溜め込ませないようにするものです。
PTSDの治療方法
長い時間を掛ける必要がある
PTSDの様な心理的問題は、一度に治療出来るものではなく、長い時間を掛けて治療していく方法があります。
心理療法として認知行動療法というものがあり、長居時間を掛けてPTSDの原因となった体験(トラウマ)に慣らしていく方法で、熟知したセラピストが行わないと逆効果になる場合があります。
他に薬物療法もありますが、副作用の影響が考えられる事から最終的な手段と考えられており、通常は推奨されていません。
災害に伴うPTSDの治療は長い時間を掛けてじっくり行う必要がありますが、再び被災してしまい症状を悪化させるケースもあり、対応が難しい問題です。
治療の為には家族や周囲の人々による理解も重要になるので、もしも身近に同じ様な方が居たら家族に話を伺うなどして協力する様にしましょう。
まとめ
・PTSDは災害などで強烈な体験をし、極度のストレスを受ける事で患う
・ストレスを溜め込まない事が最大の予防となる
・治療の為には長い時間をかけて、じっくり対応する必要がある
参考サイト等
◆東日本大震災の救援者の心的外傷後ストレス障害に関する調査:災害後のPTSD予防に向けて
◆「自衛隊のPTSD対策:東日本大震災から学ぶストレスの克服」内外出版株式会社、2012年4月