昨日・今日と台風が続けざまに日本に上陸し、全国各地で被害が出ています。
先日2016年8月17日に関東・東北・北海道を通り抜けた台風7号は18日には温帯低気圧となりました。
昨日8月21日に北海道に上陸した台風11号も同日午後11時過ぎには温帯低気圧に変わりました。
しかし北海道では台風が消えた後も大雨が降り、川が氾濫し床上浸水が起こるなどの被害が出ています。
また本日8月22日、今まさに関東に上陸しようとしている台風9号(追記・その後8月22日12:43千葉県に上陸)は東北・北海道へと北上するとみられ、まだ北海道付近にある台風から変わった温帯低気圧にも影響を与え、東日本では大雨が降ると予想されています。
台風通過中の被害にも十分な警戒が必要ですが、台風が通過し消滅した後にも台風の影響が残り大雨が降る可能性がありますので十分にご注意ください。
では、なぜ台風が通過し、しかも消えた後にも激しい雨が降り続ける恐れがあるのでしょうか?
また今回、北海道に大雨が集中した理由はどこにあるのでしょうか?
台風の消滅に伴う大雨のメカニズムを調べてみました。
台風が消えたあとの大雨にも注意
温帯低気圧として残された雲の行方
台風は熱帯低気圧が発達していく事で誕生しますが、日本の上空で気温が下がり勢いが弱まっていくと温帯低気圧というものに変わっていきます。
温帯低気圧は台風の中の暖かい空気が北の冷たい空気と混ざり合い、台風とは異なり暖かい空気が進んでいる温暖前線と冷たい空気が進んでいる寒冷前線という二種類の温度が違う境界線が生まれます。
この二つの前線はどちらも雨雲を発達させながら回転します。
前線は北半球では地球の自転による影響で半時計回りに動き、前線が重なった場所では雨雲が発達し易くなります。
温帯低気圧は時間経過とともに次第に弱まっていき、消滅していきます。
二つの前線が重なった場所を閉塞前線といい、通常は寒冷前線が温暖前線に追いついて起こります。
閉塞前線が起きるまでは雨雲が発達し続けて、広範囲に雨が降り続けます。
日本では台風が最後に行き着く北海道付近が温帯低気圧による被害を受ける事が多いのです。
今回北海道に大雨が集中しているのは台風そのものの影響と、台風の残骸ともいえる温帯低気圧の影響、さらにその温帯低気圧に別の台風が刺激を与えている状況が連鎖したことが原因です。
台風が残す大雨のメカニズム
雨雲が次々と新しい雨雲を呼ぶ。
台風が通過したあとは、気圧の谷と呼ばれる空白が発生して高気圧が流れ込む事によって天気が良くなります。
台風一過と呼ばれるからっとした晴天は台風が呼び込んだ高気圧によってもたらされています。
しかし台風が通過したあとも積乱雲が残っている場合、台風の雲から流れ出る冷気外出流という空気の流れを受けて積乱雲が成長していき大雨を降らせる場合があります。
これをバックビルディング現象といい、勢力が弱まった積乱雲が収縮していく時に出来る気流で他の積乱雲を成長させ、次々と雨雲が発生して同じ地域に大雨を降らせ続ける集中豪雨の発生メカニズムと同じものになります。
過去には2004年の台風10号が中国地方を通過した翌日に徳島県で豪雨を降らしています。
2014年には沖縄を通過した台風8号が通過した後に大雨特別警報が発表されており、過去の事例からも台風の通過したあとにも大雨が降る事が分かります。
バックビルディング現象は台風が通過したあとだけではなく、通常の雨雲が密集して生まれた場合も起こる現象です。
その為、夏場に積乱雲が立て続けに発生したときに一つが雨雲となって降りだすと、次々と雨雲へ発達して長時間にわたって狭い範囲にだけ豪雨が降り続ける事もあります。
これが集中豪雨と言われるもので、日本では梅雨に起こり易い現象です。
鬼怒川の氾濫で大きな被害を及ぼした2015年9月関東・東北豪雨では、温帯低気圧となった台風18号を台風17号が押す形となり、大気層の下へ暖かい湿った空気が断続的に送り込まれて温帯低気圧の積乱雲が発達していきました。
「線状降水帯」と呼ばれるバックビルディング現象が立て続けに起こり、集中豪雨を起こす雲の流れが多数発生してしまったのが原因と言われています。
大雨が降るとしばらく天気が崩れやすくなりますが、その背景にはこの様な自然現象があった訳です。
台風が折り重なって通過する場合も突発的な豪雨が発生しやすい状況にあると言えます。
集中豪雨はある程度は天気予報で推測する事が出来ますし、危険だと気象庁が判断すれば大雨特別警報が発表されます。
現在、台風が立て続けに上陸していますので集中豪雨には警戒が必要です。
しばらくは天気予報やニュースでこまめに台風や警報などの情報をチェックするよう心がけてください。
まとめ
- 台風が消えても温帯低気圧となって大雨になる可能性がある。
- 台風が通り過ぎても、バックビルディング現象により豪雨が続く恐れがある。
- ニュース・天気予報で台風情報・大雨特別警報は必ずチェックする様にしましょう。
参考リンク
- 気象庁 局地的大雨から身を守るために
- 損保ジャパン日本興亜RMレポート117台風通過後の警戒への必要性
- 気象庁 温帯低気圧と台風