2016年9月29日、アメリカ合衆国のニューヨークにほど近いニュージャージー州ホーボーケン駅にて通勤列車がスピードを緩めずにホームへ突入して車両止めを乗り越えた上で壁に激突、ホームにいて崩れた駅舎の破片に当たった女性が1名亡くなられ、邦人を含む114人が負傷するという事故がありました。
2007年に日本で起きた福知山線脱線事故の様な107名もの死者が出る大惨事になる可能性があった事もあり、国家運輸安全委員会(NTSB)が中心となって事故原因を調査していました。
この様な列車事故がどうして起こってしまったか、そして列車事故から身を守るためにはどうすればいいのか、現在考えられる原因と対策を調べました。
安全関連設備の欠如
速度を制限するシステムの導入が進んでいなかった
今回の事故原因として明白に分かっている事は、駅のホームが近づいているにも関わらず列車が減速を行う事を出来なかった事です。
日本では速度超過を地上に設置された機械が検出すると非常ブレーキが作動する自動列車停止装置(ATS)があります。
同じようにアメリカではPTCという安全システムを、本来であれば去年までに全ての路線へ導入することを行政が義務付けていました。
しかしコスト面の問題から鉄道業界団体が反発したせいで、再来年末までに導入期限を延期した矢先の事故でした。
今回事故を起こした鉄道会社「ニュージャージー・トランジット社」ではPTCの導入が全く行われておらず、安全のためのシステムが不足していた事が一つの大きな事故原因とされています。
運転士に事故原因はあるのか?
過去には職員のよそ見で大事故も
アメリカでは2008年にもカルフォルニア州ロサンゼルス近郊にて通勤列車と貨物列車の正面衝突事故が発生しており、25人の方が亡くなられ135人がケガを負うという大事故となりました。
その時に列車の運転士が携帯電話を操作してよそ見運転をしていた事が明らかになっています。
日本でも「スマホをいじっていた」「電話していた」などと列車の乗務員の勤務態度が問題となっている事が多々ありますよね。
そういった勤務態度も原因かもしれませんが、居眠りや焦りなどの過労プレッシャーが原因となることもあります。
日本の福知山線脱線事故の場合、運転手がダイヤを少しでも遅延すると厳しく業務責任を問われるというプレッシャーのかかる勤務体制でした。
事故当日はダイヤが遅れてしまっていたために、遅れを取り戻そうと無謀な速度で運行を行っていたということが分かっています。
今回の事故に関して運転手や勤務体制に何らかの問題があったのかは、今後調査が進むにつれ明らかになると思われます。
もしも列車事故に遭ったら
衝撃から身を守るための行動とは
事故はどんな原因で、いつ起こるかは分かりません。
列車に乗っている時やホームで待っている時、万が一事故に巻き込まれてしまったらどうしたら良いのでしょうか?
なかなかとっさの判断は難しいと思いますが、まずは「衝撃から身を守ること」が重要です。
可能であれば体を屈めて、対ショック姿勢を素早く作れると良いでしょう。
席が空いている時はできるだけ座りましょう。
立っている時は無精せずに、普段からつり革や手すりなどを掴むように心がけましょう。
掴んでいるものがあるのと無いのとでは、身体に受ける衝撃の大きさがかなり変わります。
急なブレーキや衝撃があった場合は、掴んでいるものを離さないようにしたほうが怪我をする可能性が低くなります。
ゲームや読書などで両手を使いたい場合は、必ず席に座ってからにしましょう。
ホームで電車を待っていて止まるはずなのに勢いよく走って来る列車を見かけた場合は、できるだけ線路から離れる様にしましょう。
普段から列車の進入速度には気を付けましょう。
決して撮影しようと身を乗り出したり、事故直後の現場に近づいたりすることは止めてください。
今回の事故で不幸にも亡くなられた方は乗客ではなく、ホームにいた方でした。
列車が飛散させた破片に当たってしまった事が致命傷になったと言われています。
「危ない!」と感じたら可能であれば身をかがめ、カバンなどで落下物から頭を守りましょう。
そしてできるだけ速やかにホームの「緊急停車ボタン」や、踏切であれば「異常通知ボタン」を押して二次災害を防ぎましょう。
福知山線脱線事故では近隣住民がこれらのボタンを押した事で後続の列車が追突する事態を避ける事が出来ました。
今回アメリカで起きた列車事故の現場では、駅員やその場に居合わせた乗客が助け合って救助活動を行いました。
緊急時には助け合うことが尊い人命を助ける為の要因となることもあります。
もちろん現場が危険な場合もありますので、分からない事があれば駅員に指示を仰ぐなどして安全を確保しつつ、できるだけ積極的に救命活動に参加しましょう。
まとめ
- 列車事故は設備不足・スタッフの勤務体系など、様々な原因で起こる可能性がある
- 不意の事故に備えるために、列車に乗っている時はできるだけ座るか、つり革・手すりを掴んでおくこと
- ホームにいる時も進入してくる列車の速度には気を配っておくこと