私たちは働いている時間の間に、何がしかの ケガを負うことがあります。
このときには、「仕事をしている最中に起きたケガである」として、特別な保障がなされることもあります。
災害が発生したときは、ケガをする可能性も高まるので保障があるかは気になりますね。
今回はそんな「特別な保障」である「公務災害」と「労務災害」について見ていきましょう。
公務災害とは何か
公務災害とは、公務員が公務の最中に負った災害を言います。
これが認められる条件としては、「公務中、もしくはそれに準じる状況下で」「本人の不注意や故意ではない状態で起こったものである」という2つの要件が求められます。
そのため、「保障をされたいために、自分自身でわざと骨を折った」「家にいるときにケガをした」などのようなときには、当然認められません。
ただし、「公務上」の解釈というのは、一般の人が考えるよりもずっと広いと思われます。
たとえば、レクレーションに参加(参加を命じられた大会であり、練習は含まれない)しているときや、通勤(早出や深夜勤などを含む)のときにしたケガ、あるいは勤め先の設備の老朽化などによってケガをした場合も、公務災害として認められることがあります。
ちなみに、「個人的に金を貸していた相手が、勤務時間中に襲ってきてケガをさせられた」というようなケースでは認められませんが、「昔自分が逮捕した相手が、逆恨みをして襲ってきた」という場合は認められます。
上記では「ケガ」を中心としてお話をしてきましたが、「病気」の場合は少し厄介です。たとえば、心筋梗塞。これを起こす原因はさまざまなものがあり、一つだとは特定できません。
そのため、認めるか、それとも認めないかという判断はなかなか難しいものがあります。国家公務員である自衛官が「命じられた訓練をしている時」に心筋梗塞が原因で死亡した場合も、訓練と心筋梗塞の関係が確認できなければ公務災害として認定されない場合があります。
(※設定基準としては、「公務が原因となっている、と明らかに認められる場合」とされています)
「労災」とは違うもの
ここまで公務災害について見てきましたが、これはいわゆる「労働災害(以下「労災」で統一)」とは少し異なるものです。労災は労働基準監督署の管轄ですが、前者の場合は、地方公務員災害補償基金や人事院などの管轄です。そのため、一般的な民間企業に勤める人が、労働中にけがケガを負ったとしても、「公務災害」が適用されることはありません。
ただし、その性質は両者ともとても似ています。
労災でも、仕事中のケガをした場合はこれが認められます。たとえば、「機械に挟まれてケガをした」「ビルの建設作業中に、高いところから落下した」などです。また、古くは昭和35年に、「じん肺法」が設立された経緯もあります。これは、粉じんを吸い込みすぎたことによって起こった健康被害であり、労災の対象となっています。
また、これも立証や因果関係を認めることは少し難しい部分もありますが、仕事を原因とするうつ病や身体の病気(腱鞘炎など)も労災として認定されている案件もあります。
また、これは私自身の経験でもあるのですが、 「 食器の洗いすぎで手に異常が出た、と言われても、それが本当に職場のものだけによるのかどうかが立証できない」とされて差し戻されるケースもありますから、必ず認められるとは言い切れません。
ちなみに、通勤途中のケガも労災として認められます。ただしこの場合は、「家から職場まで向かう途中であり、ほかのところに寄り道をしていたら認められないこともある」という点に注意が必要です。
これらが認められると、医療費が支払われたり、休んでいる間にもお金(8割程度)が支払われたりします。また、後遺症が残った場合は一時金が受け取れます。
公務災害や労災を受けることは、労働者の権利です。もちろんそのすべてが認められるわけではありませんが、労働者を守ってくれるきまりの一つだと覚えておきましょう。
仕事中にケガをするケースとしては公務員であれば災害対策活動、普通の人であれば被災地の支援業務などで起こる可能性があります 。
いざという時に備えて勉強しておきたいですね。
まとめ
・公務上のケガの場合は、公務災害認定を受けられる
・民間企業の場合は労災である。
・それぞれに判断基準がある
参考
青葉法律事務所「労災って何? 読めばわかる弁護士による解説」
「じん肺法」
厚生労働省「じん肺と労災補償」
弁護士ドットコム「労働災害と公務災害」
労働新聞社「公務災害と労災災害補償とでは扱いが違うか」
京都府「公務災害とは」
法人保険PRO「労災保険っていくらもらえるの?」