災害関連死とは、地震などによる建物の倒壊や津波、火災等、災害そのものが直接的な死因ではなく、災害後の長引く避難生活や精神的なダメージなどが原因で死亡することをいいます。
過去の大地震でも、この災害(震災)関連死は大きな社会問題となっています。
災害に見舞われても助かった命を、その後の避難生活で失ってしまうのは、とても悲しいことです。
災害から命を守り、さらには災害後も健康的に命をつなげていくための具体的な対策をお伝えします。
なぜ災害(震災)関連死が起こるのか?
昨年(2016年)の熊本地震をはじめ、東日本大震災など過去の大きな災害時には、長引く避難所生活などが原因で死亡された方が数多くいました。地震発生直後には建物や家具の下敷きにならず、火災にも巻き込まれず、生き延びることができたにもかかわらず、なぜ、その後の避難生活で命を落とすようなことになってしまうのでしょうか?
避難生活における体調の悪化
災害関連死の主な原因は、避難生活における体調の悪化が主な要因です。
災害関連死は阪神淡路大震災で初めて注目されました。神戸市によれば、全犠牲者の14%(921名)が災害関連死で、避難所でインフルエンザの集団感染が発生したほか、誤嚥性肺炎で亡くなる方が多数発生しました。
また、新潟県中越地震や熊本地震の際は、長引く避難所生活でエコノミー症候群を発症する人が続出しました。
特に、高齢者は免疫力が低下しているため、環境が著しく変化する避難生活に耐えきれないという傾向があります。
さらに、災害による病院機能のマヒが、災害後の病状悪化につながるケースも多いようです。
災害後も健康的に生きるために
誤飲性肺炎
では、災害後も健康的に生活を送れるようにするために、どのような対策が必要になるのでしょうか?
阪神淡路大震災において多数発生した「誤嚥性肺炎」。これは、水不足や口内ケアの不足のために口の中に雑菌が繁殖し、その雑菌が気管に入ることで発症する肺炎です。特に、ものがうまく飲み込めない高齢者に多いとされていますが、誤嚥は誰にでも起こりうる症状であり、注意が必要です。
大震災後は様々な対策が取られ、その後の大地震においては誤嚥性肺炎による死亡者数は減少傾向にあるようですが、口内ケアの備えは非常に重要であることがわかります。
「別に歯磨きくらいしなくたって・・・」と軽く考えている方が多いと思いますが、口内を不潔にしておくと、誤嚥性肺炎やその他の感染症のリスクが高まり、特に高齢者や小さなお子様の健康を奪う恐れがあります。お口のケアは、災害発生時も大切にしていきたいものですね。
エコノミー症候群
そして、避難所生活では他人との共同生活となり、トイレに行くのも我慢してしまう方も多いようです。トイレを我慢したり、トイレがまめになるからという理由で水を我慢することによって、エコノミー症候群のリスクは非常に高くなるといわれています。
自分の健康は自分で維持していかねばなりません。関連死の原因をよく知り、健康維持に努めることが重要ではないでしょうか?
具体的な備えを今すぐしよう!
では、具体的にどのような備えをしておけば、災害後も適切なケアができるのでしょうか。今回は特に、口内ケアと飲食物、トイレについて考えてみたいと思います。
口内ケア
災害時は水が不足することが多いため、歯ブラシだけでは不十分です。液体で口をゆすぐだけの液体歯磨きや口内洗浄液を用意しておくとベストです。または、歯磨きシートというものも市販されていますので、ポーチや非常用袋に入れておくのも良いでしょう。それも難しい場合は、オーラルケア効果のあるガムを用意しておくことでも、口内ケア対策につながるでしょう。
トイレ対策
においが気になる、和式では用が足せない、など、トイレ問題は非常に複雑です。震災関連死を防ぐには、「トイレを我慢しないで済む」環境づくりが重要です。
自宅が倒壊していない、または大きな損傷をしていないようなら、断水時でも自宅でトイレを使用しましょう。非常用トイレとして市販されている特殊な砂を入れると固まるものを利用すれば、いつもと同じ環境で用を足すことが可能です。浴槽にためておいた水を流す方法もありますが、地震後等は下水管が損傷している可能性もありますので、水を流すのは控えた方が良いでしょう。特にマンション等共同住宅の場合は、水漏れなどのトラブルにもつながりますので注意しましょう。
また、非常用トイレは洋式の簡易トイレとして使えるものも市販されていますし、段ボールなどを使って簡易トイレを作成しても良いでしょう。
避難所でのトイレはプライバシーをしっかり確保できるよう、男性用と女性用に分ける、人目につきにくい場所に設置する、など、避難所での対策も大切になってきます。いざという時は、ご自分がリーダーとなって、トイレの設営や使い方などを決め、誰もが使いやすいトイレにすることは可能です。
使いやすいトイレは、災害関連死の予防に直結します。ぜひ、率先して備えていきましょう。
③飲食物について
水が足りないから、トイレが心配だから、という理由で水分を取らないことによる体調の悪化が懸念されます。水分は、運動をしていなくても摂取することが重要です。水分の不足によって、エコノミー症候群が引き起こされたり、血管が詰まって脳卒中や心筋梗塞などにつながるリスクが高まります。意識的に水分を取ること、そして、自分の分は自分で備えておくことが重要です。
避難所では、遠慮して自分の分をもらえないという方も多いようです。であれば、自分の分は自分で備えておき、避難所に行かずとも、3日程度は備えで賄えるという状況であれば、気を使うことなく災害後の生活が可能です。
ぜひ、ご自宅の耐震性を確保したうえで、食糧や水の確保をしていきましょう。
まとめ
・口の中を清潔にしておくことは、災害発生時は特に重要!
・水分を取ることは、災害後も健康的な生活を送るうえで最も大切!意識的に水分を取り、トイレは我慢しないこと!
・災害後も口内ケアができる備え、水分を取れる備えを考えよう!
参考サイト
◆西日本新聞 災害関連死対策急務 熊本地震 エコノミー症候群、感染症
2016年4月23日記事
◆サンスター 防災にオーラルケア