地震、台風などなど、災害が多いと言われる日本列島。そんな日本列島で、災害後の住宅修理や保険金申請代行について詐欺と疑われる事例が発生しています。公的機関等への相談件数も、2018年度~2021年度までのデータで増加傾向にあるため、注意が必要です。
本記事では、災害後の住宅修理や保険金申請代行にまつわる詐欺と疑われる事例の具体的な内容や被害に遭わないための対策を見ていきます。是非、備えとして知っておいてください。また、他の詐欺等から推測すると、お年寄りの方や障害のある方が、今後新たなターゲットになる可能性もあります。周囲の人たちで、気配りもしてください。
災害後に住宅修理や保険金申請について詐欺と疑われる事例が発生
・住宅修理にまつわるものの概要
住宅の修理にまつわるものでは、訪問や電話の勧誘等で住宅修理業者に「保険金が下りるから住宅の修理をした方が良い」と持ちかけられるのが定番の一つで、保険金が降りるならいいかと住宅修理の契約をしてしまうのです。
でもよく思えば、保険金が降りるか降りないかを決めるのは住宅修理業者ではありません。その後、実際には保険金が降りない場合も当然あります。その場合に、「保険金が下りないなら修理は止める」と言っても、違約金の名目で高額請求をされたり、その他にも住宅修理の契約書には修理を止めるなら何等かの高額の支払いをしなければならない記載があったりもするのです。
・保険金の申請代行にまつわるものの概要
保険金申請代行に関するものの事例では、保険金申請代行業者を名乗る者や上の住宅修理業者等が、「保険金が降りるようにサポートするから保険金が降りた場合は数十%を報酬としていただく」等と持ち掛けてくるのが定番の一つです。電話の場合も訪問の場合もあります。
ですが、保険金の申請なんて、保険金申請代行業者に依頼しなくても保険会社に電話等すれば申請方法のこと等をあれこれと教えてくれる場合も多いです。保険金申請代行業者に依頼した場合、報酬が10%として、もし保険金が100万円降りたなら10万円も申請代行業者に支払うことになります。保険会社に自分で電話して申請方法を教われば0円の支払いです。あまりにも割に合わない高額報酬とも言えます。
・発生件数
PIO-NETに登録された「「保険金が使える」と勧誘する住宅修理サービスに関する相談件数」は、2018年度は1,759件、2019年度は2,691件、2020年度は5,447件、2021年7月31日までの件数は1,465件です。
対処法
・住宅修理にまつわるものへの対処法
まずは、「保険等が降りるので実質無料で住宅修理をできる」という定番文言に注意しましょう。
その上で、住宅修理については、複数業者に見積もりを取ってもらうことからはじめることが重要です。これは、今回の詐欺と疑われる事例に遭わないためのみならず、ある業者の修理だと高額なのに、違う業者の修理だと少額ということも多々あります。
また、見積もりの際は、修理の実行ではなくて見積もりであることをはっきりとさせることも重要です。事例として、修理の見積もりのつもりで業者を呼んだところ、業者が修理の作業をはじめたため慌てて止めたところ、「部品も揃えたし作業も多少行った」として高額請求された、というものもあります。
・保険金申請代行にまつわるものへの対処法
まずは、「保険金の申請を代行するから保険金が降りたら報酬で数十%いただく」という定番の文言にご注意ください。
また、保険については自身と保険会社でやり取りすることを基本として、むやみに代行業者等を間に入れないようにしましょう。保険会社は電話相談窓口等を設置している場合も多く、代行業者等を入れなくても自力で申請等をできるようにサポートしてくれる場合も多いです。
ご高齢であること等から、どうしても保険金の申請は無理である上に、ご家族等助けてくれる人も側にいないのなら、信頼をできる代行業者やサポート業者等を高齢の方一人で決めずに、ご家族等と相談して決めましょう。
・住宅修理にまつわるものも保険の申請代行にまつわるものも
住宅修理の場合についても保険金申請代行の場合についても、契約は即断即決をしないことです。場合によって数十万円以上を支払う契約にもなります。契約前に自分以外の誰かと相談した上で、契約しましょう。
以上の上で、住宅修理や保険金申請代行を依頼するのであれば、契約する際に契約書の交付を受け、契約内容や業者名、住所、解約の条件等を必ず確認しましょう。
不安に思った場合やトラブルに遭った場合は、早めに消費生活センター等に相談しましょう。また、訪問勧誘や電話勧誘で契約した場合は、契約書面を受け取った日を含めて8日間はクーリング・オフできます。
具体例
次のものは、国民生活センターのサイトに掲載されている事例です。
昨日、「台風や地震で建物の被害がないか近所を調査している」と事業者が訪問してきた。その事業者から「3年前の大型台風で損害を受けている部分があるかもしれない。火災保険の請求期限が迫っている。調査費用は無料なので、調査だけでも受けてはどうか。調査して、火災保険が利用できることが分かれば申請手続を代行し、その保険金の一定割合を手数料でもらう。保険金が出なければ負担はない」と言われた。とりあえず調査だけでもと思い業務委託契約書に署名したが、以前保険会社に大型台風の件で問い合わせたところ、保険金の支払いは難しいと言われたことを思い出し、昨日の勧誘自体が不審に思われてきた。契約書裏面にクーリング・オフについての記載があったが、クーリング・オフできるか。
(2021年5月受付 60歳代、男性)
「火災保険を使って屋根や外壁の工事の見積もりをする」とのインターネット広告を見つけ、事業者へ連絡を取ったところ、後日自宅に来訪することになった。訪問した事業者から「修理代を上回る保険金が受け取れる。手数料は40%だが損はない」と言われ、損がないならと契約することにした。受け取った書面には、修理箇所と損傷の程度を判断して見積もりを作成するサービスで、保険金が下りたらその40%を事業者に支払うと書いてある。よく考えると、保険会社の査定が見積もり通りとは限らないと思い、解約を申し出たが、解約できないと言われた。どうすればいいか。
(2021年4月受付 60歳代、男性)
自身の加入している保険を時々はチェック
以上のような詐欺と疑われる事例に遭わないためにも、自身の加入している保険の内容を、時々チェックすることも重要です。どんな条件で保険は降りるのか、保険に関する質問を無料で答えてくれる等の相談サービスは有るのか等日頃からチェックしておきましょう。
すると、近年増加している自然災害に対して、このシチュエーションだと保険が降りるのか?降りないなら違う保険も加えないといけないか?等と、備えにもつながります。
まとめ
・災害後の住宅修理や保険金申請代行について詐欺と疑われる事例が発生しており、公的機関等への相談件数も2018年度~2021年度までのデータで増加傾向にある。
・お年寄りの方や障害のある方が、今後新たなターゲットになる可能性もあり。周囲の人たちで気配りも必要。
・「保険等が降りるので実質無料で住宅修理をできる」「保険金の申請を代行するから保険金が降りたら報酬で数十%いただく」という定番文言に注意。
・住宅修理は複数業者に見積もりを取ってもらうことからはじめることが重要、保険については自身と保険会社でやり取りすることを基本とする。
・住宅修理の場合についても保険金申請代行の場合についても契約は即断即決をせず、契約後に不安に思った場合やトラブルに遭った場合は、早めに消費生活センター等に相談。
参考サイト
◆一般社団法人日本損害保険協会「住宅の修理などに関するトラブルにご注意」
◆国民生活センター「保険金で住宅修理ができると勧誘する事業者に注意!-申請サポートを受ける前に、損害保険会社に連絡を 保険金の請求は、加入者ご自身で!!-」
◆千葉県「災害に便乗した悪質商法にご注意ください」
◆消費者庁「災害に便乗した悪質商法に注意!」
◆損保ジャパン「火災保険の自然災害ガイド 台風・竜巻等による損害」