前回の記事では「対価型のセクシャルハラスメント」について見ていきましたが、ここからはそれと対になって語られることの多い「環境型セクシュアルハラスメント(以下「環境型セクハラ」)について見ていきましょう。
環境型セクハラとはどんなもの?
環境型セクハラは、「解雇」「降格」「減給」「人事異動」といった直接的な人事処置は伴いません。
ただ、だからといって軽視してよいものではありません。
環境型セクハラの場合、「職場内において、本来は相応しくない性的な言動が繰り返されることで労働意欲が著しく低下する」という問題が生じるからです。
たとえば、
「毎日上司に髪の毛を触られることが嫌で、仕事に集中できなくなってしまった」
「ヌードポスターを会社に飾る風潮が流行っており、それによって苦痛を受けて仕事のモチベーションが低下してしまっている」
「恋愛経験を根掘り葉掘り聞かれて、その上司と仕事で組むのが苦しくなってしまい労働効率が落ちてしまった」
などのケースです。
環境型セクハラの難しさ
おそらく、上で書かれた「例」を見て、何人かの人は「たったそれだけのことで」「今の新入社員は繊細すぎて扱いにくい」と感じたのではないでしょうか。
ここに、環境型セクハラの難しさがあります。
何を不快だと思うかは、人によって異なります。
環境型セクハラの場合、対価型とは異なり、だれの目から見ても不自然さが明らかだ、というものではありません。そのため、事態を軽く見た上層部や同僚などに軽く扱われてしまいがちです。
ただ、環境型セクハラは決して見過ごしていい問題ではありません。職場の倫理観も問われますし、何よりも、「仕事の意欲が落ちている人」を抱えることは会社としてマイナスです。また、あまりにもこれが苦痛で心身を病んでしまう人もいます。また、仕事上のミスも起きやすくなります。危険な業務に従事している人は特に危険です。
分かりやすい「人事的なマイナス査定やマイナス処置」がないからといって、決して軽く見ていてはいけないのです。
まとめ
・環境型セクハラは、セクハラ行為によって仕事のモチベーションや能力が著しく低下することを指す
・人事的な異動などを伴わないため、ケースによっては分かりにくい
・モチベーションの低下は、けがなども招くので企業側はしっかりと対策をすべき