大規模な地震が発生した際に、家屋倒壊やタンスなどの大きな家具が倒れて、それらの下敷きになって身動きが取れなくなってしまう人が出てしまう可能性があります。
避難する中、または家族の捜索をする中で、下敷きになった人を発見する場合もあり得るでしょう。
その時、どのように対処するかによって、命が助かる確率が変化する場合があるのをご存知でしょうか?
一刻も早く上の瓦礫(ガレキ)や家具を取り払い助け出そうと考える人も少なくないと思いますが、それが下敷きになった人の命を救うことに繋がらない場合があります。
いざという時のために、その理由と対処法について知っておきましょう。
むやみに救出すると突然死の危険が
ガレキからの救助後に危険な「クラッシュ症候群」
地震が発生し、瓦礫や家具の下敷きになった状態から助け出された後に体調が悪化し、最悪の場合死亡する可能性がある「クラッシュ症候群」と呼ばれる症状があります。
重いものが腰や腕や太ももなどにのしかかったままの状態で長時間が経過した場合、圧迫され続けた部分の細胞が壊死したり障害を起こすことがあり、それと壊れた筋細胞から血液中に「カリウム」という物質が大量に放出されます。
そのような状態になった後に救助されて圧迫から解放されると、急激に血流が高まり、その血液に乗って大量のカリウムが全身に回る可能性があるのです。
カリウムは人間にとって必要な元素のひとつですが、大量のカリウムは心臓の機能を悪化させるために突然死の危険が高まるのです。
また一時的には助かったとしても、クラッシュ症候群は後々まで体に影響をあたえることもある恐ろしい症状なのです。
そのため近年では「クラッシュ症候群」対策をふまえ、要救助者が瓦礫の中にいる状態で医師の治療が施してから救出されることがあります。
下敷きになった命を助ける対応とは
圧迫後、どれくらいの時間が経過しているのかが重要
多くの場合、地震発生直後から瓦礫や家具の下敷きになり圧迫された状態になるでしょう。
圧迫され続けた時間が長ければクラッシュ症候群の可能性が高まるため、地震発生からどれくらいの時間が経過しているかは重要なポイントとなります。
クラッシュ症候群が疑われるのは、圧迫されてから2時間以上が経過している場合と言われています。
(※この時間は筋肉壊死の時間的なおおよその目安です。状態によって時間等は異なります)
それ以上の時間が経過している場合には、すぐに救助を始めることを避ける必要があるかもしれません。
むやみに助け出さないという選択肢を
地震発生後、長い時間が経過した状態で瓦礫の下に生存者を発見した場合、たとえすぐに瓦礫を取り去って救出することができそうだったとしても、むやみに救助することが最善とは言い切れません。
まずは救急隊員やレスキュー隊員などに連絡をするというのが、確実な対応と考えられます。
そのような対応をしながら負傷者を安心させるような声掛けなどをするのが、一般市民としてできる安全な対処法という場合もあるのです。
万が一すぐに救助しなければ命の危険があると考えられた場合には、救助後早急に医師の処置を受ける必要があるということを覚えておきましょう。
また、正しい止血方法を知っていれば、止血帯を使用し血液が体幹へと流れないように処置をしましょう。
さらなる倒壊の恐れがある場合や、火災が迫っている場合など、あくまで緊急にその場から避難する場合の処置です。
応急処置としてできること
地震発生後にクラッシュ症候群が疑われる負傷者を発見した場合にできることは、水分補給です。
血液中のカリウム濃度を低下させるために役立ちます。
圧迫から解放された後に、クラッシュ症候群の症状の発生を遅らせることができるとも言われています。
無理に飲ませるのではなく、負傷者の状態を見て水分補給を促してみると良いでしょう。
また、体温低下を避けるために毛布など掛けてあげるのも有効な対処法でしょう。
負傷者の体力消耗を防ぐことにもつながります。
救助が到着したら、圧迫され続けた時間がどれぐらいだったか、そしてクラッシュ症候群の可能性があることを伝えましょう。
まとめ
・地震後に瓦礫や家具で体が圧迫されることで起こるクラッシュ症候群について知っておく
・地震発生後に圧迫されてか2時間以上たっているとクラッシュ症候群を起こす危険性が高まる
・クラッシュ症候群の可能性があれば、簡単に救出ができる場合にもまずは救助隊の要請を考える
・水分補給と防寒対策で応急処置をしつつ、できるだけ早く医師や救助隊によるクラッシュ症候群への処置を受けさせる