近年、豪雨災害が増加傾向にあります。豪雨災害では、道路が冠水して自動車が水没、車内に取り残されて命を落とすといった痛ましい事故が発生しています。ある程度の水量であれば、ドアを開けて外に脱出することが可能です。ですが、急激に水カサが増すとドアを開けることが難しくなり、車内に取り残されるという事態に陥ってしまいます。では自動車が水没した際、どのようにして脱出すればいいのでしょうか。今回は災害時の自動車からの脱出方法について、脱出用ハンマーの有効性も含めてご紹介いたします。いざという時の為に、知識を深めましょう。
豪雨災害による車内での被害が増加している
道路が冠水し自動車が水没、車内に閉じ込められて死亡するケースが増えています。令和元年に発生した台風19号では、他の災害と比べて屋外の犠牲者の多くが車内で被害にあっていたことが判明しています。
近年、大雨による自然災害が増加しています。気象庁が1901年から2020年までの約120年のデータを解析した結果、1日の降水量が200ミリ以上を観測した日数が増加傾向にありました。200ミリという数値は東京の9月中の降水量に相当します。また、降り方にも変化がありました。1976年以降の統計によると、1時間あたり50ミリ以上の雨量を観測する頻度が高くなっていることが判明したのです。1時間あたり50ミリという雨量は、滝に例えられるほど非常に激しい雨。傘は役に立たず、車の運転も危険です。
このように、大雨の頻度が高まっているのは地球温暖化の影響があると考えられています。今後地球温暖化が進むと、更に大雨による災害が増えることが懸念されます。自動車の中に閉じ込められて命を落とすことがないよう対策することが大切です。
脱出用ハンマーの必要性
水位が上昇するほど、車のドアや窓を開けることは困難になります。ドアが開かない時は、窓を割って外部に脱出する必要があります。脱出する為には、脱出用ハンマーが必要です。
5,000人を対象に行われた消費者アンケートによると、緊急脱出ハンマーを知っていて、尚且つ自動車に常備している人は876人となり、全体の約22.1%でした。ですが、脱出用ハンマーをトランクに積載していても、万が一の時に取り出せない状態にある人が約5.5%だったのです。
では、脱出用ハンマー以外の物で窓ガラスを割ることはできないのでしょうか。JAFが2014年に車内にありそうなもので窓ガラスを割ることが可能か、実験を行っています。
実験には次の物が使われました。
・ヘッドレスト
・小銭を入れたビニール袋
・スマートフォン
・ビニール傘
・車のキー
・脱出用ハンマー(ポンチタイプ、小型ポンチタイプ、金槌タイプ)
実験結果によると、脱出用ハンマー以外では窓ガラスを割ることができませんでした。水没している時は水の抵抗も加わるので、更に車からの脱出が困難だと想定できます。
ただし、フロントガラスは合わせガラスなので脱出用ハンマーを使用しても割ることはできませんでした。また車種によっては、静粛性の為にフロントガラス以外にも合わせガラスを使用していることがあります。この場合は、脱出用ハンマーを使用しても割れません。自車の窓ガラスはどのようになっているのか、事前確認が必要です。
大雨による自然災害が増加傾向にある昨今、いざという時の対策が必要不可欠です。自動車が合わせガラスではない場合は、手が届くところに脱出用ハンマーを常備しておくことか必要でしょう。もし脱出用ハンマーが使用でいない場合は、急激に水かさが増した道路への侵入は止めることが大切です。
まとめ
・台風19号では車内で被害にあっているケースが目立つ
・近年1 日の降水量が200ミリ以上、そして1時間あたり50ミリ以上という雨量を観測する頻度が高くなっている
・水位が上昇するほど車のドアや窓を開けることは難しくなる
・車から脱出するには脱出用ハンマーが必要
・車種によっては合わせガラスの為に脱出用ハンマーが使えないことがある
参考サイト
◆独立行政法人国民生活センター 自動車用緊急脱出ハンマーによるガラスの破砕-万が一の水没事故に備えましょう-
◆JAF 水没時、何を使えば窓が割れるのか?(JAFユーザーテスト)
◆国土交通省 気象庁 特集 激甚化する豪雨災害から命と暮らしを守るために