2018年12月16日、札幌でスプレー缶による大規模な爆発事故が起こりました。日本では、他に類を見ない衝撃的な事故だったので、みなさんの記憶に強く残ったのではないでしょうか。現場となった不動産会社は爆発によって跡形もないほど全焼し、周囲の飲食店にも多大なる損害を与えました。奇跡的に死者は出なかったものの重傷者が1名、けが人が多数出る被害となったのです。
これらは全て、スプレー缶の危険性についての認識の甘さが原因と言えるでしょう。正しい処理をしていれば、爆発事故を防ぐことができたはずです。
そうとはいえ、スプレー缶製品は身近なところに溢れているので、危険性はないものだと認識してしまっている人が少なくありません。つまり誰でもスプレー缶による事故を起こしてしまう可能性があるということです。
そこで今回は、スプレー缶の危険性と安全に取り扱う方法についてご紹介します。
スプレー缶の危険性について

東京消防庁の資料から平成30年(11月30日まで)の速報値を見てみると、スプレー缶による火災状況は79件起きていることが分かります。これは、平成29年(1月1日から12月末まで)の72件よりも多いという結果です。平成25年の129件と比べると火災件数は減っているものの、依然としてスプレー缶による事故は起きています。
負傷者を見てみると平成30年では48人、29年では負傷者は41人となり、死者が1名出ています。死傷者が出ていることで、スプレー缶はどれほど危険なものなのか分かりますよね。
次に火災発生の要因についてですが、最も多いのがスプレー缶を廃棄する際に穴開けをした際の事故です。平成30年のスプレー缶による火災発生件数79件のうち、19件が廃棄時の穴開けによるものだという結果が出ています。
スプレー缶の種類はカセットこんろ用燃料ボンベが1番多く、カセットこんろに燃料ボンベを間違った方法で装着してしまい、そこからガスが漏れて出火したというケースがありました。
それ以外にも廃棄する際、ガステーブルや暖房器具を使用中に近くでスプレー缶に穴開けをしたことが原因で出火してしまったり、制汗スプレーを使用後にタバコを吸ったことで火災発生という事故もあるようです。中には、調理中に殺虫剤を使用したことで引火という事故もありました。
スプレー缶には「火器と高温に注意」という注意書きがありますが、取り扱い方法についてじっくり見てから使う人は少なく、何も考えずに使用し、処分する人の方が多いのが実情です。
しかし、スプレー缶は可燃性のガス。つまり小さなプロパンガスボンベです。使用方法によっては札幌の爆発事故のような重大な被害を招くことがあることを理解しなければなりません。
スプレー缶の安全な取り扱い方法

スプレー缶製品はヘアスプレー、殺虫剤、制汗スプレー、カセットこんろ用燃料ボンベなど様々あります。10月から1月にかけて火災発生件数が多いという結果が出ているのですが、スプレー製品は1年中使うものが多いので春や夏であっても注意しなければなりません。
事故を防ぎ、安全に使うためにも燃料ボンベは正しく装着しましょう。また、どのスプレー缶製品も絶対に火器の近くで使ってはいけません。
廃棄するときは、最後まで使い切ってから捨てることが必要ですが、穴あけに関しては各自治体の指示に従いましょう。もし使い切れないときは、通気性のいい屋外で噴射して中身を空にします。
また暖房器具の近くに置いていると、スプレー缶が熱によって破裂して中身が漏れてしまいます。そこから引火する危険性があるので注意しましょう。
まとめ
・スプレー缶による火災発生の主因は廃棄時の穴開け
・スプレー缶は小さなプロパンガス
・カセットこんろ用燃料ボンベの事故が多いので使用する際は正しく装着する
・中身を空にするときは通気性のいい屋外で行う
・火器の近くで使用しない
・高温になる場所で保管しない
参考サイト
◆北海道新聞:「札幌・平岸で爆発、飲食店など倒壊41人が重軽傷」
◆東京消防庁:「報道発表資料」
◆横浜市消防局:「消防局からのお知らせ」