平成30年12月16日夜、札幌市で2階建ての建物が爆発・倒壊し、火災が発生する事故が起こりました。この事故はスプレー缶の処分方法を誤ったことによって起こったと考えられています。
この事例に限らず、スプレー缶の処分方法をめぐる事故は、身近なところでも起こっています。大事故を起こさないためにも、スプレー缶の正しい処分方法について理解を深めておきましょう。
スプレー缶をめぐる事故とは
スプレー缶はLPGガスと呼ばれるガスの圧力を利用して、中身を噴射する構造になっています。このLPGガスは可燃性のガスであることから、スプレー缶の使用法・処分法を間違えると火災や事故につながります。
横浜市消防局によると、平成22年から平成26年の5年間の間に、スプレー缶による火災事故が70件発生しています。そのうち、スプレー缶の処分にまつわる過程(ガス抜き作業・穴開け作業)で発生したと思われる事故は17件(24.3パーセント)にのぼります。
東京消防庁の調査によると、平成18年から平成22年の5年間の間に、スプレー缶由来の火災・事故で負傷した人の36パーセントが、廃棄の際の穴あけ作業で負傷しています。
スプレー缶の処分方法を間違えると容器破損・爆発・火災などが発生し、怪我ややけどを負う危険が高まります。場合によっては命を落とす可能性もあります。正しい処分法を身につけることは、自分の身を守ることにもつながるのです。
スプレー缶の処分方法
① 中身を使い切る
中身が残った状態で処分をすると、事故の危険性が高まります。スプレー缶を処分する時は、中身を使い切るようにしましょう。やむを得ず中身が使い切れない場合は、「商品に記載されている販売元に問い合わせる」「自治体に相談する」などし、指示をあおぎましょう。
② 中身が残っていないか確認する
自分では使い切ったと思っていても、まだ残っていることがあります。スプレー缶を処分する時は、中身を使い切ったかどうか、今一度確認するようにしましょう。
日本エアゾール協会によると、中身が残っているスプレー缶は、上下に振った時に「シャカシャカ」「チャプチャプ」といった音がするようです。
③ ガス抜き作業を行う
スプレー缶を処分する時はガス抜き作業を行う必要があります。ガス抜きキャップが付属している製品はこれを使ってガスを抜きます。ガス抜きキャップを使用する時は製品に記載されているガス抜き方法を読み、正しい手順で行いましょう。ガス抜きキャップがない場合は、ボタンを押して完全にガスを抜きます。
ガス抜き作業を行う時は風通しが良く火器のない屋外で行ってください。札幌の事故は屋内で大量のスプレー缶の使用・ガス抜きを行ったことで起こりました。事故を防ぐためにも、「風通しの良い屋外」「火器のない場所」というルールを守ってください。
④ 穴開け作業の有無を確認し、実行する
スプレー缶を処分する際に穴あけの工程が必要かどうかは、自治体によって変わります。必ず自分が住んでいる自治体に問い合わせたうえで行いましょう。
※穴あけ作業が必要と指示された場合の穴あけ法※
自治体から穴あけ作業が必要と指示された場合は、穴あけ作業を行います。穴あけ作業を行う時はスプレー缶のガス抜き作業を完了させたうえで、風通しがよく火器のない屋外で行います。中身が残った状態での穴あけ作業や室内での穴あけ作業は危険です。絶対に行わないようにしてください。
穴あけ作業に必要な道具は、ホームセンター等で購入することができます。
⑤ 自治体で定められたルールを守ってゴミに出す

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スプレー缶をゴミに出す時は、自治体が定める分別のルールを守りましょう。
中身が残ったスプレー缶をゴミに出す行為・ガス抜き作業を行わずにゴミに出す行為は、ゴミ収集車やゴミ処理場での爆発事故につながることがあります。東京消防庁の調査によると、中身が残ったままゴミに出されたスプレー缶が原因でゴミ回収車から発火する事故が、3日に1回のペースで発生しています。スプレー缶の処分方法を守ることは、ゴミとして捨てられた後に起こる事故を防止することにもつながります。必ず自治体で定められた処分法や分別のルールを守りましょう。
まとめ
・スプレー缶の処分法を誤ると事故や火災につながる
・処分をする時は中身を使い切る
・ガス抜き作業を行う
・穴あけ作業が必要かどうか、自治体の指示をあおぐ
・自治体のルールに従ってゴミ回収へ出す
参考サイト
◆横浜市消防局:「スプレー缶製品の取扱いに注意!!」
◆東京消防庁:「エアゾール缶等の火災や事故に注意!」
◆一般社団法人:「日本エアゾール協会「正しいゴミへの出し方」」