車の中で避難生活を送る「車中泊避難」は、災害時における避難方法の一つとして認知されています。「プライバシーが確保できる」「ペットを連れたまま避難できる」といったメリットがある一方で、東日本大震災、熊本地震では車中泊避難における様々な課題点が浮き彫りとなりました。
災害発生時に車中泊避難をすることになった場合、どのような点に気をつければよいのでしょうか。今回は車中泊避難をする時に気をつけるべき注意点について4つご紹介します。
エコノミー症候群
車中泊は車内で長時間同じ姿勢を取り続ける必要があります。長時間同じ姿勢でいると、静脈に血栓(血の固まり)ができる「エコノミー症候群」を発症しやすくなります。エコノミー症候群は下肢の痛みや腫れなどの症状を引き起こし、重症化すると血栓が肺に詰まって死亡する危険があります。熊本地震では車中泊避難中にエコノミー症候群を発症し、亡くなられた方がいます。車中泊避難をする時はエコノミー症候群の危険があることを認知し、積極的に予防する必要があると言えるでしょう。
エコノミー症候群の予防のためには、「長時間同じ姿勢をとらない」「小まめに水分補給をする」「軽い運動や足をマッサージする」といった行動を心がけましょう。
一酸化炭素中毒
車中泊をする時は環境を良くするために、アイドリングをしながら暖房や冷房を入れることがあるでしょう。冷暖房で体温調節をすることは体調管理をする上で大切な行為ですが、アイドリングは一酸化炭素中毒に陥る危険があるので注意が必要です。
車の排気ガスには一酸化炭素が含まれています。一酸化炭素はマフラーから外へ排出されますが、車を狭い場所に駐車していたり、マフラー部分や車体が草・塀・雪などの障害物で覆われていたりすると、外に逃げるはずの一酸化炭素が車内に充満しやすくなります。また、エアコンは外気導入と内気循環の2つのモードがあります。外気導入モードにしていると、車外に充満している一酸化炭素を車内に取りこんでしまい、一酸化炭素中毒の危険が増します。車中泊をする時は車を駐車させる場所に気をつけるとともに、長時間のアイドリングは避けるようにしましょう。短時間のエアコン使用ならば、内気循環に切り替えるのも1つの方法です。
熱中症
車中泊避難には熱中症のリスクもあります。密閉された車内は外気よりも高温になりやすく、熱中症に罹る確率がグッと増します。「小まめに水分補給をする」「窓を少し開けておく」「直射日光が当たらない比較的涼しい場所に車を止める」といった対策は必須です。高温になりがちな日中は車外に避難し、車中に留まらないようにするのもいいですね。
また、子どもはわずかな時間でも熱中症に陥りやすいです。災害時のケースではありませんが、車内に待機していた乳幼児が熱中症で死亡する事故は、毎年のように起こっています。子どもを伴って車中泊避難をする時は、子どもが熱中症に陥らないように目を配ることを忘れないでください。
熱中症というと夏のイメージがありますが、JAFの調査では春や秋でも車内温度が50度程度になることが証明されています。車中泊避難における熱中症の危険は夏特有のものではありません。年間を通して気をつけるようにしましょう。
積極的な交流を持つ
大規模災害時に人知れず車中泊を続けていると、安否確認が遅れてしまうことが懸念されます。また人の目が届きにくい分、「支援物資が届かない」「炊き出しに参加できなかった」など、孤立する原因となる可能性も考えられます。
これらの課題解決に向けて、車中泊避難をする時は周囲の人や近くの避難所と積極的な交流を持つことが必要なのではないでしょうか。周囲の車中泊避難者と良好な関係を築くことは、「みんなで体操をしてエコノミー症候群の予防に努める」「一酸化炭素中毒や熱中症になっていないか声を掛け合う」といった、車中泊の問題点を解決するきっかけにもなるでしょう。
まとめ
・長時間同じ姿勢になりがちな車中泊では、エコノミー症候群になりやすい
・アイドリングによる一酸化炭素中毒に注意する
・車内は高温になりやすいため、熱中症対策を取り入れる
・孤立しがちな車中泊では、周囲と積極的にコミュニケーションを取ることも大事である