みなさんは、シンクを介して食中毒が発生していることをご存知でしょうか。食中毒は、2013年に東京都北区の寮で発生しました。感染源は、野菜サラダです。シンクの中で豚肉を扱った後、シンクを洗浄したり消毒することなく、そのまま生野菜を洗浄したことが食中毒につながりました。この時検出された菌はエルシニア・エンテロコリチカで、豚肉が保菌していることが多いものです。
シンクによる食中毒は、家庭でも発生する危険性があります。シンクからの二次汚染で食中毒にならない為にも、食中毒の実態を知り、対策に努めましょう。
シンクからの二次汚染により食中毒が発生する恐れがある

シンクからの二次汚染で、食中毒が発生した事例は、東京都北区保健所によると、2013年4月、某予備校の寮で寮生92名のうち52名が野菜サラダによって食中毒を発症しました。52名全てが男性でした。まかないとして食べた2名の調理従事者からも上記の菌が検出されています。
検便により検出された菌は、エルシニア・エンテロコリチカです。エルシニア・エンテロコリチカによる食中毒は、主に豚肉が原因になることが多いでしょう。東京都北区の食中毒では、豚肉を扱ったシンクで野菜を洗浄していました。これにより、シンクを介して二次汚染されたとみられています。エルシニア・エンテロコリチカが原因による食中毒は、生肉から直接間接するだけではなく、生肉を切った調理器具からも感染します。他にも、ペットが触った食品が原因になることもあります。
東京都北区で発生した食中毒の主な症状は、発熱や腹痛、下痢、頭痛等です。食中毒に感染したと思われる日の夕食から発症するまでは、37~175.5時間の潜伏期間を経ています。エルシニア・エンテロコリチカの潜伏期間は、一般的に食後2~5日と言われています。
シンクからの二次汚染を予防する方法

シンクを介して二次汚染する危険性があるので、シンクが2漕ある場合は用途別、食品別に分けて使うと二次汚染を予防できます。1漕の場合は、シンクに直接食品を触れさせないようにしましょう。生野菜を扱うときは、ボールやザルを使用します。また、加熱しない食品を先に扱うという調理の順番にも気をつけましょう。
日々、シンクを洗浄したり消毒することも必要です。東京都北区保健所が行ったシンクの洗浄実験によると、シンクは洗浄しているつもりでもオーバーフロー(溜めた水が溢れないようについた水抜けの穴)や排水口周囲の汚れは残りやすいことが判明しました。細菌数を見ると、洗浄のみを行った場合、細菌数は減っていたもののゼロにはなりませんでした。洗浄をせず、アルコール消毒のみ行った場合も同様の結果となりました。ただし、洗浄とアルコール消毒を行った場合は、オーバーフロー以外の箇所では細菌数がゼロになったようです。
シンクを清潔に保つには、洗浄と消毒の二つが大切だということが分かります。二次汚染を防ぐ為にも、生野菜を扱う前は念入りに洗浄するといいでしょう。
今回はシンクによる二次汚染を紹介しましたが、生肉や生魚を扱った調理器具が原因となる食中毒も発生しているので、シンクだけではなく調理場全体の衛生管理を徹底させましょう。食中毒は飲食店や給食施設以外でも起こりうるので、注意が必要なのです。
まとめ
・シンクを介して食品が二次汚染されたことで食中毒が発生した
・シンクが2槽ある場合は用途別、食品別で使う
・シンクが1槽の場合はシンクに直接食品が触れないように気をつける
・食品を扱う順番にも気をつける
・シンクを清潔に保つには洗浄と消毒の二つが大切
参考サイト
◆東京都北区「シンクからの二次汚染にご注意を!!」
◆NIID国立感染症研究所「野菜サラダを原因食品としたYersinia enterocolitica O8 による食中毒事例―東京都」
◆農林水産省「エルシニア・エンテロコリチカ(細菌)[Yersinia enterocolitica]」