毎日の様に報道される交通事故。自分で事故を起こそうと思いながら運転している人はいないと思います。それなのに、何故、交通事故は起こってしまうのでしょうか。
交通事故の中でも衝突事故についてまとめてみました。
衝突とは何か?
衝突とは、2つの物体が接触し互いに強いエネルギーを受けることであります。
衝突事故が起これば御存知のとおり、物体は壊れ、人は死傷する事があります。
そのエネルギーは、物理で習ったようにE=MV²であり、速度の二乗に比例する為、速度が速ければ速い程、被害は大きくなります。
何故、衝突事故は起きるのか?
事故を起こした人に聞くと、「気が付かなかった。」又は「気付いても避ける余裕がなかった。」などの答えが返ってきます。
誰しも、事故を起こそうとして起こしている訳ではなく、刑法用語でいうところの「過失」で起きてしまう事故がその大多数を占めております。
衝突のメカニズム
互いに動いている時、または、どちらか一方が動いている時、「ぶつかりそうだな。」と感じたら衝突を避ける為の行動を取る事は当然であり、この回避行動までのプロセスは次の様な流れになります。
発見→認識→判断→回避
①発見:人間の視力は意外に弱いものです。
中心視力(目の中心部の視力、通常の視力検査で測る視力)が1.2の人でも、視点の中心から、たった5度ずれるだけで0.1になってしまいます。
車を運転する時は、前方だけではなく、左右、後方も確認し、適切な注意配分で見張る事が必要です。
②認識:「心ここに在らざれば、見れども見えず、聞こえども…」と言われるように、折角、自分の眼に映っているはずなのに、その情報を認識できなければ役に立ちません。
飛び回っている虫は小さな虫でも、すぐ気付きますが、一方で止まっている虫は目に映っているはずなのに見つけ難いものです。
等速直線運動している2つの物体が衝突する時にはLOP(位置角:自分から見える相手の方位角)が変化しないため見かけ上、止まっているように見えます。このため目には映っているものの、認識し難くなります。
③判断:次に、情報が入って来た後は、その情報を基に次に行う動作を決定しなければなりません。「このまま進むと衝突するのか、しないのか。」「ハンドルは右に切るべきか左に切るべきか。」「ブレーキを踏むべきか。」車を運転している時は、瞬時に判断をし続けなくてはなりません。
皆様も車を運転している時は意識しなくても、この様な判断を続けていると思います。
因みに戦闘機操縦者が目視を主体に空中戦(戦闘訓練)を実施する時は、互いに音速に近い速度(遷音速)で接近すれば、すれ違う30秒前は約20kmも離れた位置にありながらも、どの様に攻撃をするべきか判断して行動しております。
相手を遠くで発見する事が出来る戦闘機パイロットは30km以上の距離でも相手を見付け、先手を打って攻撃します。
④回避:判断に基づいて回避操作を実施していくわけですが、判断が適切であっても、操作が不適切であると衝突事故は起こってしまいます。
路面状態や、駆動輪がFF・FRによっても回避のし方は変わります。自分で運転する車独自の特性の違い等について十分理解して、回避操作を適切に行う事が必要です。
自分の安全を守るため
最近、運転アシストシステムが発達し「衝突被害軽減ブレーキ」や「はみ出し警報」等、自分の安全を守るための機能を搭載した車が増えております。
これらの機能に頼り切ってしまうのではなく、あくまでも自分の運転を補助してくれる装置である事を意識しながら運転しなければなりません。
また、「ぶつからない車」は「ぶつけられない車」ではない事も頭に入れておかなければなりません。
交通安全週間の時に体験された方もいらっしゃると思いますが、衝突体験機では、時速5km程度で衝突しても自分の身体を支える事は難しかったはずです。必要なシートベルトは装着し、安全運転に気を付けて下さい。
また、「ボ~ット」していたのでは過失事故を起こす可能性が増えてしまいます。眠気を覚まし、意識した操作をする事が重要です。
余談
刑法は元来、社会生活の秩序を維持するため「この様な悪い事をしたら、この様な罰を与えます。だから、悪い事はしてはいけませんよ。」という趣旨で定められております。このため、刑法第38条には
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
と定められております。過失犯は基本的に処罰されない法体系になっているものの、数多い交通事故を減らす為には最低限、普通通りの注意を払って、普通通りの回避動作をしてもらわなければならなく、それを怠った場合に過失犯規定が盛り込まれているものであります。
まとめ
・交通事故を回避するため運転中は常に注意を払い、事故防止に努めなければならない
・注意散漫時、眠い時は休憩しよう
・目に映っているはずなのに、見えない(認識出来ない)時がある
・耳に入っているはずなのに、聴こえない(認識出来ない)時がある
・運転する車の特性を良く理解して適切な操作をしなければならない
・意識した操作(運転)を実施する