今日、8月15日は終戦の日です。
第二次世界大戦の終戦から71年が経過しました。
この71年の間、核実験は2,000回以上・少なくとも8カ国で行われました。
米ソ冷戦の終結した現在でも、世界中の批判を浴びながら北朝鮮やインド、パキスタンなどが核開発を積極的に進行しています。
アメリカの「マンハッタン計画」により生み出された原子爆弾・核兵器はどの様に使われ、私たちの世界に影響を与えていったのでしょうか?
前回の「終戦特集(1)原子爆弾・核兵器の誕生」に引き続き、核兵器の威力と影響に関して調べてみました。
広島と長崎、被害範囲の違いは?
地形が分けた破壊の影響
広島に投下された原子爆弾によって亡くなられた方は約14万人、長崎では約7.4万人でした。
犠牲者は広島のほうが多かったのですが、どちらの核兵器の威力が強力だったかというと、実は長崎に投下された「ファットマン」の方が広島の「リトルボーイ」よりも強力な爆弾でした。
具体的な数字で説明します。
広島に投下された原子爆弾リトルボーイはTNT火薬に換算して1万5千トン分の威力である15kt(キロトン)であるのに対して、長崎に投下されたファットマンは22ktにも及びました。
およそ1.5倍の威力を持つファットマンでしたが、実際に破壊した面積は670万平方mで広島の1320万平方mより半分ほどの範囲でした。
威力が高かったのに破壊範囲が狭かった理由は、長崎が山に囲まれていたからです。
もし、山が周囲を囲んでいなければ熱線や衝撃波がより広域に広がり、もっと多くの犠牲者が出ていたと考えられています。
また都市の中心から原子爆弾がそれて投下されたのも、大きな要因の一つです。
原子爆弾が爆発したら
熱線・衝撃波、そして放射線
では、原子爆弾などの核兵器が及ぼす破壊のエネルギーにどの様な種類があるのでしょうか?
広島と長崎ともに共通して発生した事象を調べると、爆発後に3つの事象が発生することがわかりました。
まず、核兵器が爆発してから真っ先に放出されるのが「熱線」です。
これは核分裂で発生する膨大なエネルギーが光・熱となり放出されるもので、爆心地付近では瞬く間に3,000℃を越える熱エネルギーが放出されます。
物陰に隠れているもの以外は、光・熱を浴びた有機物を一瞬で蒸発させるほどでした。
その凄まじさは立っていた人を蒸発して消し去り、その影だけを地面に焼け付けるほどでした。
おそらく、痛みを感じる間もなかったでしょう。
爆心地から離れていた場所であっても、直接熱線を浴びてしまった方は強烈な火傷を負わされました。
更に、爆心地付近では猛烈な「衝撃波」が押し寄せます。
爆発によって一瞬で膨張した空気は音速を超えるスピードの衝撃波を作り出し、周囲の建物を一気になぎ倒してしまいます。
たまたま物陰に隠れていたため熱線を直接浴びなくても、衝撃波そのものを受けてしまったことや建物の崩壊による犠牲者も多く出たと推察されます。
そして、もっとも犠牲者を拡大させる原因となる「放射線」が発生します。
特にガンマ線と中性子線という透過性(物を貫く能力)が高い放射線が大量に地表へ届き、人々の細胞を破壊し殺傷しました。
更に、中性子線は「放射化」といわれる普通の物質を放射性物質へ変えてしまう現象を起こし、広島と長崎を放射線汚染させたのです。
これは、後々に爆心地へ入った人や被爆者と接触した人にも放射線の被害を及ぼす事になりました。
一度に大量の放射線を浴びた人は「放射能症」と呼ばれる深刻な症状を起こします。
細胞が急速に破壊され、最初は嘔吐や発熱から始まります。
2週間後には全身の毛が抜け落ちていき、さらに1ヶ月以内に殆どの放射能症患者が死に至ります。
そこまで重度の放射線を浴びていない人でも「放射線症」と呼ばれる症状は長期間にわたり徐々に身体をむしばむことがあります。
最悪の場合、数カ月から数年のうちに血液のがんと呼ばれる白血病を患うことがあります。
白血病は白血球という血液の中で病原菌と戦い免疫を担うものが、異常に増加して酸素を運ぶ赤血球などが減少していき、最後は白血球自体も減少して死に至る病気です。
がんや白血病といった細胞の異常は、細胞分裂が早く起きる若い年齢の人の方が悪化し易いもので、多くの被爆者の方が長い時間苦しめられました。
被爆者が長い期間「白血病」などで苦しみ続けることは、原爆を投下したアメリカにも想定外だったと思われます。
なぜなら、広島・長崎の前に核実験は1回(しかもたった1カ月ほど前)しか行われていなかったため、放射能の影響がどれくらい残るかが正確に分かっていませんでした。
事実、初回の核実験では想定が甘かったせいで実験施設の周辺住民の「白血病」発症率が異常に高まり、放射能の影響と思われる健康被害を巻き起こしています。
ヒロシマ・ナガサキが世界に残した影響
実際に敵国への攻撃手段として用いられた核兵器の威力と被害の情報は世界に拡散しました。
爆発の威力もさることながら、非人道的な放射線による長期の健康被害が発生することは衝撃を与えました。
ヒロシマ・ナガサキの甚大な被害に世界中がおののき、第二次世界大戦後の世界のあり方に大きな影響を残しました。
結果、大国は核兵器を使うことも使われることも恐れ「冷戦」や「代理戦争」という新しい戦いの方法を生み出したのです。
まとめ
- 原子爆弾の威力は広島よりも長崎のほうが約1.5倍大きかった
- 被害範囲は地形などの影響で長崎よりも広島のほうが約2倍広く、犠牲者も約2倍ほど多かった
- 原子爆弾が爆発すると熱線・衝撃波だけではなく、放射線も発生する
- 放射線は長い期間被爆地・被爆者を苦しませ続けた