2016年8月下旬に日本に被害をもたらした台風10号は、「伊勢湾台風」という戦後で一番大きな被害をもたらした台風と同じくらいの強さを持つと言われていました。
強い警戒をされていたのですが、進路予測が日本に上陸するか西に逸れるかはっきりしませんでした。
発生からしばらく、台風10号は一般的な台風進路のように北東に向かわず、真逆の南西へ向かっていたため予測が困難でした。
何故、そのような奇妙な動きをしたのか調べてみると、「モンスーン渦」という存在の影響があることがわかりました。
台風10号とモンスーン渦について詳しく調べてみました。
台風の動きと、気流と自転の関係
台風が通常、弧を描く様に北東へ進む理由
台風は南方の暖かい海域で、湿って暖められた上昇気流から発達して誕生します。
東南アジア地域では「偏東風」という西に向かって流れる強力な気流があります。
この風に吹かれながら、太平洋高気圧の縁に沿うようにして移動する為、台風は沖縄付近までは北西の方向へ進んでいきます。
そして、日本に近づくと今度は「偏西風」という東向きに流れるジェット気流という強烈な風に流されて、今度は北東へと台風はカーブするのです。
この様に周囲の気圧や風向きの影響で台風の進路は決まりますが、台風自身も「ベータドリフト」という北へ移動させる風を発生させます。
「ベータドリフト」は地球が自転する事で発生する「コリオリ力」という力の働きが北側と南側で異なる事によって発生します。
台風が反時計回りに回っているのも「コリオリ力」による影響です。
モンスーン渦ってなに?
台風10号の動きを抑える力
通常であれば、風の力や気圧の影響で台風は東南アジア付近から日本や中国へ向かって動きますが、台風10号は沖縄付近で東南アジア方向に向かい、発生から数日経ってからようやくゆっくり本州に向かって北上し始めています。
どうしてこの様な奇妙な動きをしているかと言うと、「モンスーン渦」という台風10号の東側で発生している気象現象と日本の東西を挟む様に発生している高気圧が原因のようです。
「モンスーン」という言葉はもともとアラビア語で「季節」を意味する言葉が変化し、「季節風」という意味で用いられる様になりました。
季節風は暖かく冷めやすい陸地と、暖まりにくく冷めにくい海との気温差で発生します。
しかし「モンスーン渦」とは「季節風」とは違い、低気圧の塊です。
この低気圧の塊が反時計回りに回っている現象を「モンスーン渦」といい、台風がモンスーン渦に沿うようにして幾つも生まれる事があります。
モンスーン渦の直径は約2,500kmにおよび、東南アジアで8月と9月によく発生しますが、その発生メカニズムはまだ解明されていません。
今年を例にすると台風5・6・7号がモンスーン渦を受けて発生した台風です。
8月立て続けに日本に上陸した台風9号と11号、そして今話題になっている台風10号も「モンスーン渦」の強い影響を受けています。
台風10号はモンスーン渦の縁を沿うようにして南西へ進んだと考えられています。
加えて「モンスーン渦」は高気圧にも大きな影響を与えています。
関東近辺にあった高気圧を押しのけ、さらに中国大陸の高気圧も押しのける事で日本上空に台風が通りやすい気圧の空間を作り出しているのです。
まとめ
- 台風は弧を描く様にして南西から北東へ向けて移動していく事が多い。
- モンスーン渦により複数の台風が生まれる事がある。
- モンスーン渦によって台風の進路が変わる事がある。