2017年11月1日から南海トラフ地震の新たな対応が暫定的に始まっています。「大規模地震対策特別処置法(大震法)」に基づくこれまでの防災態勢が約40年ぶりに変わりました。そこで今回は、新聞報道などから内容を整理してみます。
これまでの経緯
昭和53年「大規模地震対策特別処置法(大震法)」を制定
平成24年 政府は南海トラフ地震の被害想定を公表し東海偏重だった防災戦略を変換
平成25年 政府は南海トラフ地震の「確度の高い予測は困難」と結論付け予知の科学的根拠を否定平成
28年 政府は大震法の見直しを視野に中央防災会議の作業部会を設置し新たな防災対応の議論開始
平成29年8月25日 同作業部会は予知を前提とする防災対応の見直しを柱とする報告書案を了承(同報告書案は科学だけではなく防災行政の観点からも現行体制の問題を指摘)
平成29年9月26日 中央防災会議は新たな防災対応を決定
平成29年10月26日 気象庁は新たな情報発信態勢を公表
平成29年11月1日 新たな防災対応(暫定)の運用開始
新たな対応の特徴
①「予知」を前提としていないこと
東海地震の直前予知を前提とする従来の対応に代わり、予知を前提とせず南海トラフ沿いで発生した前震や異常現象に基づく地震情報を発表して住民に注意を促す対応である。
②「警戒宣言」がないこと。
従来のように「東海地震予知情報」と「警戒宣言」がセットになって強い拘束力を伴う防災対応(住民避難や新幹線の運行停止などの厳戒態勢)は定められていない。
③暫定的な処置であること。
具体的な対応がまだ定まっておらず今後検討していくため、現段階では暫定的な処置として情報発表時に地震への備えの再確認を促す程度にとどめている。
④対象地域が広範囲であること。
南海トラフ地震の対象地域(対策推進地域)は東海地震に比べて格段に広くなった。※茨城県から沖縄県に至る1都2府26県の707市町村
どのように変わったのか?
南海トラフで異常が発生した時の情報発表は次のような流れになります。
①想定震源域内で比較的大きい地震が発生した場合や、東海地震の震源域で地殻変動を捉えた場合、新設された「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を臨時に開催する。※発表例:「今回の現象と想定される大規模地震との関連性について調査を開始しました。」など
②気象庁は、発生30分後程度に「南海トラフ地震に関する情報(臨時)第1号」として検討会の開催を発表する。※第1号は検討会の開催を知らせるものであって、2時間後をめどに出される第2号で「可能性高まる」という結論が出るとは限らない点に注意。
③検討会が「大規模地震の可能性高まる」と結論した場合気象庁は、発生から最短2時間後に「南海トラフ地震に関する情報(臨時)第2号」として検討会の出した結果を発表する。※発表例:「大規模地震発生の可能性が平常時に比べて相対的に高まっていると考えられます。」など
④警戒を呼びかけ地震津波対策を再確認するよう求める。
⑤その後も随時情報を出し、地震発生の恐れが高い状況を脱したと評価されれば発表を終了する。
住民はどのような対応が求められるのか?
地域での具体的な対応は国や自治体などで今後協議していくため、現段階での国の対応は「情報発表時には日頃からの地震への備えの再確認を促す程度にとどまる」とされています。
備えの例として「家具の固定」「避難場所や経路の確認」「家族間で安否確認手段を決めておく」「備蓄品の確認」など。
つまり、現時点ではこれまでと同様に普段から行っている防災準備を基本とし、今後国や自治体から具体的な対応が示されたらそれに従うことになります。
まとめ
・新たな対応では「予知」を前提としない「南海トラフ地震情報」を発表
・対象地域は東海地震に比べて広範囲(1都2府26県の707市町村)
・現時点での住民対応は、これまでと同様に普段から防災準備をしておくことが基本