愛知県名古屋市は海抜より土地が低い街で1959年9月にやってきた伊勢湾台風では市の大半が水没するといった大きな被害を受けました。
そして近年でも台風や集中豪雨といった被害が大きく悩まされ続けています。
そこで名古屋市が現在進めている計画が名古屋中央雨水調整池という巨大な地下空間の作成です。
調整池といった水害に備えた施設は東京の地下にもあります、日本の水害を抑える技術である治水施設に関して調べてみました。
治水とはなに?
古くから日本で行われてきた最古の防災
日本は昔から田畑を用いた農耕が盛んに行われている国ですが、田んぼを作る為には川から水を引いてくる必要があり、洪水といった水害の被害を受けやすい環境でした。
その為、人々は水害から作物や命を守る為に堤防や堀江という水を逃す水路を作るという事を古墳時代の西暦400年頃から行っていました。
明治に入ると西欧の治水技術も入りダムによって川をせき止めて、洪水のリスクを減らすといった事が行われるようになります。
水の流れを治めて、水害を防ぎながら恩恵を受けるというのが治水なのです。
治水施設の種類
世界でも有数の設備を持つ
日本が持つ治水施設で特に巨大で印象的なものに首都圏外郭放水路という施設があります。
これは地下50mの深さにある巨大な地下空間で、全長約6.3km直径10mというトンネルを通して雨で増水した中川や倉松川の水を江戸川へ流水量を調整しながら排水するという施設で、調圧水槽という設備は長さ177m×幅78mという広大な地下空間を形成しており、一見地下神殿の様な光景を作っています。
埼玉県春日部市にあるのですが、一部施設は予約をすれば見学する事が出来るので、観に行ってみるのもいいでしょう。
名古屋市で進められている名古屋中央雨水調整池も同様の施設で、地下60mまで掘り下げ全長5kmに渡る地下トンネルを作成し、名古屋市内に注ぎ込んだ雨水を一時的に貯めこみ近くにある中川運河へポンプで汲み上げて放水します。
この施設が完成すれば、名古屋市で今まで起きていた集中豪雨による水没被害を防ぐ事が期待されています。
調整池は公園などにもあり、放水路と組み合わせられる事で溜まった大量の水を少しずつ流す事で水害を防ぐ事に役立っています。
ダム
治水施設としてはダムも巨大な建造物です。
ダムは河川の上流で水を貯めてダム湖を作る事で、洪水による被害を抑え込む事に役立ちます。
高さ186mを誇る富山県の黒部ダムが有名ですがこれは発電の為に作られたダムで、貯水量も日本最大ではありません。
日本最大のダムは治水と水資源確保の為に作られた岐阜県の徳山ダムが最大になります。
徳山村という村を完全に水没させて作られたこのダムは貯水量6憶6000万立方mという大きさを誇り、木曽川水系に属する揖斐川(いびがわ)が起こす水害を防ぐ為に出来ました。
日本には、全国で約3000か所のダムがあるとされており、治水から水不足対策まで幅広く活躍しています。
堤防
より昔からある治水の手法としては堤防があります。
河川の堤防は計画高水位という安全に流せる水量に見合う水位が定められ、普段見えている川原が水没しても堤防で水を抑えられるように設計されています。
特に、スーパー堤防と言われるものは川と反対に面する斜面が3%ほどの緩やかな傾斜を描くように作られており、堤防に急な水流による力が掛かっても決壊しないように作られています。
千葉県栄町矢口(やこう)に流れる利根川流域に作られたものが代表的で現在50kmほどの範囲が完成しているとされています。
堤防の後ろにある土地を再開発する必要がある為、2010年に事業仕分けの対象として廃止される予定でしたが、2011年の東日本大震災の結果を踏まえ、全長120kmほどの範囲の建設を続ける事になっています。
殆どの河川には堤防が設けられ、水害の被害を最小限にする事に役立っています。
まとめ
・古くから日本では水害を防ぐ為に治水という技術が発達してきた
・地下にある巨大な治水施設として放水路や調整池が水害を抑えている
・ダムは貯水施設としてだけでなく、治水施設としても役割を担っている
・堤防は古くから日本の治水で役割を果たし、全国の河川で役割を果たしている
参考サイト
◆特集:洪水から都市を守る 日本の国土と治水事業
◆建設関連の新工法・ニューアイテム・工事情報など小ネタ速報 21年度完成へ本格着手/地下50mにシールド/名古屋中央雨水調整池
◆名古屋市:浸水実績図(暮らしの情報)
◆国土交通省江戸川河川事務所 首都圏外郭放水路