これまでに、多くの人命や財産が火災によって奪われてきました。
ちょっとした不注意や人為的なミスが原因で火災が発生し、その結果として人の命が奪われてしまうのは本当に残念なことです。
今後そのような火災事故による被害を出さないために、私たちには何ができるでしょうか。
先日、明治神宮外苑で行われたイベント「東京デザインウィーク」の木製ジャングルジム展示物火災事故を振り返ります。
東京デザインウィークの展示物火災とは
事故概要
発生日時は2016年11月6日午後5時20分頃でした。
東京都新宿区の明治神宮外宛にある野球場で開催されていたイベントの最中に、木製ジャングルジムの展示物が突然燃えあがりました。
ジャングルジムの中で遊んでいた5才の男の子1人が死亡し、その救助にあたった40代の父親が負傷しました。
日本工業大学の学生らが製作した木製のジャングルジムは、誰でも自由に中で遊べるように展示されていました。
出火原因
警視庁は、日本工業大学の学生らが製作した木製のジャングルジムが、夜間に展示物をライトアップするために使用していた白熱灯の投光器の発する熱によって発火した可能性が高いとみて捜査を進めています。
また、木製ジャングルジムの飾りとして、発火しやすい木くずが使用されていたことが明らかになっています。
(2016年11月24日現在)
わずか5才の男の子が犠牲となったこの痛ましい火災事故ですが、イベントの主催者や学生が所属する日本工業大学の管理責任を問う声が多数あがっています。
とはいえ、この火災の直接的な原因は、展示物を設置した学生達やその場に立ち会った関係者が火災の危険を察知できなかったことにあります。
木くずで装飾のほどこされた非常に発火しやすい木製展示物の中に、高熱を発する白熱灯の投光器を設置したということが捜査により分かっています。
そこで疑問が生じます。
実際にこの作業を行った生徒は、自分の判断や行動に少しの違和感も感じなかったのでしょうか?
また、その光景を目にしていたはずの別の生徒や関係者は、その状況を見て火災の危険を察知することはできなかったのでしょうか?
この火災の原因になったとみられる投光器の他にも、ジャングルジムの中央上部に内部に照明用としてLEDライトが用いられていたことが調査により分かっています。
一般社団法人照明学会のLED照明に関するサイトによると
LED光源が搭載される器具の放射性能によりますが、照明器具中のLEDパッケージの発熱は50~80℃程度になります。
<引用元:一般社団法人 照明学会>
と説明されています。
また、LEDランプ製造メーカーの安全上の注意書きには
器具は点灯中高温となりますので、可燃材が近接するところでは使用しないでください。火災のおそれがあります
<引用元:岩崎電気株式会社>
と記載されています。
これらの点に加えて、展示物の中に照明の電源としてコンセントが設置されていたことも明らかになっています。
ですから、火災が発生したこの展示物の中には「熱源」と「可燃物」という火事が生じる原因となるものが1つではなく、いくつも存在していたことになります。
警視庁の調べに対し展示物を作成した学生は、投光器を使用しても展示物が「燃えると思わなかった」と話していると報道されています。
将来の建築のスペシャリストを育てる日本工業大学では、建設現場における安全に関する授業も行われていたことでしょう。
それにもかかわらずモノづくりの中で最も重要な「安全に対する意識」が高度な技術や創造的なデザインを追及するうちに失われてしまったのだとすれば、それは非常に残念なことです。
ここまでで「東京デザインウィーク」の展示物火災の事故の概要と、現時点で考えられる火災要因について考えることができました。
後編では、同じような事故を繰り返さないための「危機管理」について考えます。
「東京デザインウィーク・木製ジャングルジム展示物火災-後編」
まとめ
◆事故概要:2016年11月6日午後5時20分頃、明治神宮外苑で行われたイベント「東京デザインウィーク」で、男の子1人が死亡する展示物火災が発生した
◆事故要因:事故発生時、展示物の中には白熱灯投光器・LED照明・コンセントなどの「熱源」と、木製ジャングルジム・木くずといった「可燃物」がそれぞれ複数あり、それらが火災の要因とみられる