この記事の前編では「東京デザインウィーク」の木製ジャングルジム展示物火災事故の概要と火災原因について調べました。
では、今後同じような事故を繰り返さないためにどんな防火対策を取ることができるのでしょうか?
私たちが事故の加害者や被害者とならないようにするためには、何が必要でしょうか?
これらの点について、後編で具体的に考えていきましょう。
前回の記事「東京デザインウィーク・木製ジャングルジム展示物火災-前編」
加害者にならないために
今回の火災事故から考える危機管理対策
この記事の前編でも述べましたが、「東京デザインウィーク」の展示物火災事故に関してはイベント主催者側の管理責任を問う声があがっています。
主催者側のコメントとして「全部で600点ある作品の一つ一つを詳しく調べるのは困難だった」という発言があります。
その発言に対して「無責任だ」とする声が、ネット上に少なからず見られます。
確かに、イベントの開催期間中に主催者側が展示物すべての安全性を毎日しっかりと確かめていれば、事故当日に火災の原因となった投光器などの存在に気づき、事故を未然に防ぐことができたかもしれません。
とはいえ、それは本当に現実的だったでしょうか?
このイベントの開催期間は7日間だったようですが、毎日変化するイベント会場の状況を完璧に把握することは、主催者とはいえ難しかったことでしょう。
もちろん、結果的に発生してしまった火災事故に対して、監督する立場にあった主催側がその責任を取るのは当然のことです。
とはいえ、このような想定外の事故を防ぐうえで最も大切なのは、個々の安全に対する認識や危険を察知する「危機管理」ではないでしょうか。
展示を行っていた学生や現場の方々に足りなかったのは、この「危機管理能力」であったと思います。
危機管理能力を育てるには
安全に対する認識や危険を察知する感覚はどのように培われるのか
危機管理のカギとなるのは「習慣」です。
例えば、優秀な企業の建設現場では毎朝必ず安全意識を高めるためのミーティングが行われます。
そのミーティングで現場の作業員達は、その日の作業にはどんな危険が予測されるのか、その危険に対してどんな安全対策を講じることができるのかを話し合います。
そういった毎日の習慣によって、作業員達は安全の重要性を繰り返し考え、高いレベルの危機管理意識を保つことができます。
私たちも毎日の生活の中でその模範に倣うことができます。
例えば車の運転に関して、
「最近の自分の運転の仕方は安全といえるだろうか」
「急いでいる時でも、落ち着いて運転しているか」
「友人や家族は私の運転する車に安心して同乗しているだろうか」
とトラブルの原因に立ち返り、考えることを習慣にできます。
家事を行う時には
「料理で火を使う時に、火から目を離して他のことをすることはないか」
「家の中に、家族にとって危険な状況が存在してないか」
「私や家族は万一の事態が生じた時に、冷静に対処できる備えができているだろうか」
と考えることを習慣にできます。
またお子さんのいらっしゃる方であれば、子供たちが安全に対する正しい認識を持っているかを定期的に確認することです。
「登下校時に交通事故に巻き込まれないために、具体的に何ができるか」
「万一、不審な人に声を掛けられたらどうしたらよいか」
「友達から危険なことをするように誘われたら、どうするか」
といった点を、子供と一緒に考えることを習慣にできます。
親がこのように子供の危機管理をサポートするなら、子供は成長と共に危険の原因を把握し察知する能力や、自分の身を守るために必要な判断力や行動力を培っていくことができるでしょう。
生活のあらゆる場面で少しの時間を取って、自分や家族の安全意識を確認することを「習慣」にしましょう。
毎日のニュースを聞き流すことなく、もしも自分や家族の身に起こったらどうするかしっかり想像しておきましょう。
そうすることによって、自分や家族の身の回りで事故が起きることを未然に防ぎ、事故の加害者や被害者になることをできるだけ避けることができるでしょう。
安全意識・危険察知能力・危機管理能力は「習慣」によって養われるのです。
この記事を読んだ方が改めて今回の木製ジャングルジム展示物火災について考え・話し合い、教訓としていただければ幸いです。
何の罪もないのに事故に巻き込まれた犠牲者のご冥福をお祈りいたします。
2度とこのような事故が起きないよう、注意喚起していきましょう。
まとめ
◆毎日の生活の中で、トラブルの原因に立ち返り身の回りの安全について考えることを習慣にする
◆子供の安全意識や危険察知能力・危機管理能力を定期的に確認し、それを培うことができるように助ける