平成28年11月8日(日本時間同9日)ドナルド・トランプ氏がヒラリー・クリントン氏を破り、第45代アメリカ合衆国大統領に就任することが確定しました。
トランプ氏は選挙戦の頃から日本に対し、過激な発言をしてきました。
米国と日本の防衛に係る事項としては大きく3つあり、それぞれについてトランプ氏の実際の発言と併せて今後の日本における防衛の流れを考えてみたいと思います。
在日米軍撤退
1つ目は
「日本や韓国は駐留経費を満足に払っていない」
「駐留経費は当事国が全額負担すべきであり、払わなければ撤退もあり得る」
との発言です。
平成28年度の在日米軍関係経費は約5,566億円(防衛省ホームページより)です。
この内訳としては、在日米軍の駐留に関連する経費+SACO関係経費+米軍再編関係経費が含まれます。
これ以外にも基地交付金及び提供財産借上料が約2,046億円あり、合計で日本は7,612億円を負担しております。
これに対し、在日米軍に対するアメリカの支出は米国予算上約5,830億円であります。
日本が駐留経費の増額を要求される事はあるかもしれませんが、在日米軍の早期完全撤退は無いと分析します。
理由としては下記の3つです。
理由:1
米国防省は「4年毎の国防計画の見直し」(QDR)を2014年に議会報告しており、2012年に策定された「国防戦略指針」の内容を踏襲し具体化したものとなっております。
この中で「アジア太平洋地域を重視し、同地域へのプレゼンス強化」を謳っております。
これからも、大きな情勢の変化がない限りは在日米軍の早期完全撤退はあり得ないでしょう。
もし撤退する場合は中長期の大掛かりな計画が必要になる上、少なくとも2年後2018年まで了承されている「国防計画」を挿げ替えることは大統領といえど難しいと考えられます。
撤退が段階的に開始されるとしたら、2年後以降でしょう。
理由:2
前述のQDRでは在日米軍の存在は「米国の国益に繋がるもの」であるとされています。
その真意を理解していただければ、応分の支出は納得出来るものでしょう。
選挙戦はあくまでアメリカ国内有権者のための政策を強調する機会であり、就任後は発言を修正し外交的なバランスを重視せざるを得ないのではとの見方が一般的です。
理由:3
在日米軍は「日米安全保障条約(以後、日米安保条約)」の根幹に係る事項であり、その存在無くしては本条約の有効性が欠けてしまいます。
日本独自の防衛戦力について考えてみると、現在不足している部分は「核戦力」と「策源地(さくげんち)攻撃」の能力でしょう。
「策源地」とは前線の部隊に対して、必要物資の補給など支援を行う後方基地のことです。
これは、実際の戦力が不足しているという意味だけではなく、専守防衛を採用している日本の政策によっても制限を受けている「攻撃する能力」です。
「核戦力」については後述しますが、「策源地攻撃」については駐留している在日米軍よりもグアムやハワイの「ストライクフォース」がより有効であると考えられます。
在日米軍については日本のみならず米国の防衛という観点からも必要性を感じて配備しているものと考えられます。
ただし、これらの理由はあくまで米国が日本を守るという「日米安保条約」に則った考え方であり、トランプ氏はこの条約についても「見直し」に言及しています。
次回はこの「日米安保条約」についてのトランプ氏の発言と、併せて「日本の核保有」についての発言をピックアップします。