前回に引き続き、次期米国大統領に当選したドナルド・トランプ氏が選挙期間中に行った日本の防衛に関連する発言についてピックアップし、今後の日本がどのような防衛体制に移行する可能性があるのかを考察いたしました。
日米安全保障条約
2つ目は
「日米安保条約は片務的条約であり、日本が攻撃されれば、米国は助けに行かなければならない。だが米国が攻撃を受けても、日本は助ける必要はない。日米安保条約は不公平だ」
との発言です。
日米安全保障条約は東アジアの秩序を維持する為に有効な条約であり、アメリカの国益にも資するものです。
また安倍政権は昨年「安全保障関連法」を成立させており、決して「片務的」「不公平」なものではなくなって来ています。
この「片務的」「不公平」という考え方は日本が防衛力のみならず「攻撃力」を持つことを促す考え方でもあり、日本が米国の指示のもと戦後一貫して「専守防衛」を目指してきた歴史を覆すものです。
条約の見直しがあるとすれば歴史的な大変革になることは間違いありませんので、東アジアのみならず世界全体に混乱を招く可能性が十二分にありえます。
このリスクについては計算に入れていない発言であると推察されますので、就任後は実情を鑑みた上で発言を修正するのではないかと思われます。
日本の核保有に関して
最後は
「日韓が防衛のため自身で保有する事は選択肢の一つであり、米国にとってそれ程悪い事ではない」
との発言です。
発言の真意については定かではありませんが、日本は一定の核対処能力を保有しており、後は「核攻撃を抑止する為の核兵器保有をどうするか」という日本国内の議論になると思います。
日本は米国によって世界唯一の被爆国になったことを考えると実に皮肉な発言ではありますが、この発言によって日本の核保有はかの国に指示されて「決めてもらう」ような受動的な問題ではなくなりました。
米国の「核の傘」をアテにできなくなることも想定される今、日本国内でより活発に「防衛」「核保有」について議論を深める必要があるということだと思います。
トランプ氏が大統領に就任した機会を感情的に「危機」と考えるよりも、国民一人一人が日本の防衛について改めて考え直す「好機」と捉え、良い国を作る努力をしていく事が重要ではないでしょうか。
まとめ
◆在日米軍が1~2年で早期撤退する可能性は、現状ほぼない
◆日米安全保障条約は見直され続けており、トランプ氏が言う「不公平」な内容ではなくなりつつある
◆核兵器保有に関しては日本側での議論が必要
◆トランプ氏が大統領に就任する事を、日本の防衛を見直す好機と捉えて努力する事が大切