東日本大震災では津波によって数多の尊い命が奪われました。津波対策は行政を中心に強化されつつありますが、一人ひとりが津波から逃げるための方法を学んでおくことも重要なのではないでしょうか。今回は津波から逃げる時の方法についてご紹介しますので、この機会に再確認しておきましょう。
高い所へ逃げる!
津波は地震による海底の変化によって、海面が変動し発生します。津波は通常の波とは異なり、海底から海面までの海水が固まりとなって襲ってきます。波長は数キロメートルから数百キロメートルに及ぶため、一度に襲ってくる海水の量が多く、威力が非常に強いです。また津波の速度は水深が深いところでは速く、浅くなるにつれて遅くなります。そのため陸地に近づくにつれて複数の津波が重なり、津波の高さが高くなるという特徴があります。
津波は強力で、かつ高い波が襲ってきます。ですから津波から逃げる時は急いで高い所に逃げてください。津波が地面を駆けあがる高さは、津波の高さの2倍~4倍になると考えられています(海岸で2メートルの津波は最大で8メートルになります)。高い所に逃げたからといって安心するのではなく、より一層高い所へ逃げることも忘れないようにしましょう。いざという時のために、津波ハザードマップで自宅・勤務先・子どもが通う学校等が津波浸水想定区域に指定されていないかを調べるとともに、最寄りの津波避難場所・津波避難ビルを確認しておくことも大切です。
すぐに逃げる
海岸付近の津波は、時速36キロメートル程度の速さで襲ってきます。この速度は陸上の短距離選手並みの速さであるため、津波を目視してから走って逃げるのは難しいです。津波から命を守るためには津波を目視してから逃げるのではなく、津波が海岸付近に押し寄せる前に避難を開始する必要があります。
まず津波警報・津波注意報が発令された時はすぐさま避難を開始してください。「津波の高さ 巨大」と発表された時は、東日本大震災クラスの津波が襲ってくることが予想されます。急いで高い所へ避難してください。
震源地が近い時は、地震発生から間をおかずに津波が襲来する可能性があります。また、津波は地震の揺れの大小に関わらず発生することがあります。地震が発生した時は津波がくることを想定し、津波警報・注意報が発令されていないか情報収集するとともに、いち早く避難を開始することを心がけましょう。
川から離れる・近づかない
津波が発生した時は川にも注意しましょう。津波は陸よりも先に川に入り込む性質があります。東日本大震災の時、宮城県多賀城市では津波が砂押川を駆けあがり、大きな被害をもたらしました。
津波警報・注意報が発令されている時は川に近づかないようにするのが大原則です。津波から逃げる時も「川に近づかない・川の方向に逃げない」ことを徹底してください。
戻らない・振り返らない―「津波てんでんこ」の教え―
津波は繰り返し襲ってきます。第一波が必ず大きいわけではなく、後からより大きな津波が襲ってくることもあります。津波から逃げるときは後ろを振り返ったりせず、高い所に逃げることを何よりも優先してください。
そうは言っても、「子どもがちゃんと避難できているか」など、家族の安否が気になることがあるでしょう。ですが東日本大震災では家族を助けに戻った方が命を落としています。1つでも多くの命を守るためにも、自分が逃げることを優先し、決して戻らないようにしましょう。
三陸地方には「津波てんでんこ」と呼ばれる教えがあります。「津波てんでんこ」は、津波が発生した時は自分の命を守るために、各々が真っ先に逃げることを説いています。「津波てんでんこ」の教えにある“各々が自分の命を守ること”は、「家族を探しているうちに津波に襲われた」「指示を待っている最中に津波に襲われた」といった共倒れの被害を防ぐことになり、結果としてより多くの命を守ることに繋がるのではないでしょうか。東日本大震災では、岩手県釜石市の小中学生がこの教えに基づき素早く避難をし、結果として多くの生徒の命が助かっています。津波から逃げる時は家族を心配して戻るのではなく、「家族を信頼し各々が逃げる」ことが大事であり、それを成し遂げるためには家庭や地域でこの教えを共有し、いざという時に実践できるようにしておくことが大事と言えるでしょう。
まとめ
・津波が来たら高い所へ逃げる
・津波警報・注意報が発令された時はすぐに逃げる
・逃げる時は川に近づかない
・逃げる時は振り返らない、戻らない
参考サイト
◆内閣府:「防災情報のページ「特集 東日本大震災」」
◆内閣府:「防災情報のページ「津波について知ろう」」
◆気象庁:「津波防災啓発ビデオ『津波からにげる』」
◆防仁学:「『津波てんでんこ』『命てんでんこ』…釜石の奇跡から学ぶ『防災教育』とは」