火災が起きた場合、煙に巻き込まれると非常に危険な状況に陥ってしまいます。火災の時にとるべき行動について、自分ではよく理解しているつもりでも「イザ」という時に素早く行動できなければ、危険な状況に取り残されてしまうでしょう。そこで、今回は改めて火災時の避難訓練を実施してみましょう。みなさんも是非、座学の後に用意してある「避難のしかた」に挑戦してみてください。
煙の恐ろしさを知っておこう
火災時に発生する煙には「有毒なガス」が、たくさん含まれています。ですから、火災時にはこの煙を、できるだけ吸わないようにする工夫が必要なのです。煙が階段などを通じて、上に進むスピードは毎秒3m~5mで、横に広がるスピードは、毎秒0.5m~1mです。つまり煙は、上に進むスピードがとても速いという訳です。実際にどのくらいのスピードかと言うと、大人が駆け足で走っても、直ぐに追い抜かれてしまうスピードと把握してください。階段などを登りながらだと、直ぐに煙に巻き込まれることとなってしまいますので要注意です。
煙の中を逃げる方法
ではそんな恐ろしい煙の中を、逃げることはできるのでしょうか?建物の中では、上の階に逃げることは「ほぼNG」となりますが、水平に逃げることは難しくありません。姿勢を低くして、ハンカチなどで口と鼻を覆って、「お・か・し・も」を実行しながら逃げるようにしましょう。「お・か・し・も」とは、「お:おさない」「か:かけない」「し:しゃべらない」「も:もどらない」です。
煙の特製について知っておこう
火災で命を亡くす要素は、大きく2つあります。1つは「一酸化炭素中毒」で、2つ目は「やけど」にあります。ですが、火災で死亡する際の順番を敢えて言うと、まずは「一酸化炭素中毒」にて身動きが取れなくなり、そのまま死に至り、さらに火の手によって体を焼かれてしまいます。ですから、最も恐ろしいのは「煙による一酸化炭素中毒」と言えるでしょう。
一酸化炭素中毒による症状
一酸化炭素中毒の症状は、空気中の濃度によって異なってきます。当然ながら、煙が充満すればするほど、濃度が濃くなると覚えておきましょう。
・0.02%~0.03%:5~6時間で頭痛、耳鳴りがし、目に強い光が走ったりする
・0.03%~0.06%:4~5時間で激しい頭痛、吐き気がし皮膚がピンク色になり、やがて体の自由がきかなくなる
・0.07%~0.10%:3~4時間で脈が速く呼吸数が多くなり、やがて意識がもうろうとする
・0.11%~0.15%:1.5~3時間で呼吸がおかしくなり(深い呼吸と浅い呼吸を繰り返す)、痙攣を起こし、意識を失い、大小便をもらしたりする
・0.16%~0.30%:1~1.5時間で呼吸が弱くなり、心臓の働きが弱まり血圧が低下し、時に死亡する
・0.50%~1.00%:1~2分で刺激に対する反応が低下し、呼吸ができなくなり死亡する
火災が起きた際の避難時5つのポイント
万一、火災が起きた場合は次の5つのポイントを思い出して、冷静に避難するように普段から心がけてください。
①避難口の廊下や出入口付近には、物を置かない
②出入口が1ヵ所の場合は、方向の違う2ヵ所以上の避難口を確保する
③乳幼児や高齢者は、1階など避難が容易にできる場所で就寝する
④避難の時期を失わないように、服装や持ち物にこだわらずできるだけ早く避難すること。避難を始めたら戻ってはいけない
⑤エレベーターは停電などで停止してしまうことがあるので、使用せず必ず歩いて避難する。下の階や水平方向へも逃げられない場合は、いったん屋上に避難し消防隊の助けを待とう
避難口誘導灯などについて
「非常口 EXIT」と文字が書かれて、緑色と白色で表示されている「避難口誘導灯」ですが、実はこの誘導灯には2つ種類があるのをご存じでしょうか?それには大きな違いがあるので、是非とも覚えておきましょう。「白地に、矢印・ドアの形・走る人間・非常口 EXITの文字が、緑色で表示されている誘導灯」は、「非常口や避難口までの通路や経路」を示しています。なので、この白地に緑色の誘導灯が設置されている場所には、まだ避難口はナイと言うことです。逆に、「緑地に白のドアの形・非常口 EXITの文字がある誘導灯」の場所には、「避難口・非常口」があります。この違いを覚えておくと、外出時に火災に遭遇しても落ち着いて、非常口や避難口から脱出することができますよ。
「避難のしかた」に挑戦してみよう
チェック1:火災の際、安全に避難するための準備として正しいのはどっち?
①避難口は1ヵ所にしておく
②廊下や出入口付近は整理整頓しておく
正解は「①廊下や出入口付近は整理整頓しておく」です。以前ニュースでも報じられていましたが、非常階段のドア付近に荷物を積んでいたために、避難できずにビル火災で人命が失われています。廊下や出入り口付近は、常に整理整頓しておく必要があります。
チェック2:自宅が火災に遭ってしまいました。あなたはどのようにして避難しますか?
①身の回りのモノを全てまとめてから避難する
②服装や持ち物にこだわらず、できるだけ早く避難する
正解は「②服装や持ち物にこだわらず、できるだけ早く避難する」です。これは、みなさん正解でしたでしょう。煙に巻かれる前に逃げることが、火災時に最も必要な行動となります。また、避難を始めたら絶対に戻ってはいけません。逃げる時は煙を吸わないように、姿勢を低くして口や鼻をハンカチなどで覆って避難することも大切です。
チェック3:デパートで買い物をしていると、火災が発生しました。あなたは、どのようにして避難しますか?
①避難口誘導灯を確認しながら歩いて避難する
②エレベーターを使って素早く非難する
正解は「①避難口誘導灯を確認しながら歩いて避難する」です。火災時にエレベーターを利用すると、停電によってエレベーターに閉じ込められるケースもあります。また、到着した階が既に煙が充満していたり、酷い火災現場になっていたりする可能性もあるので、避難口誘導灯を確認しながら、歩いて避難するようにしましょう。
チェック4:煙が広がる速さは、垂直方向と水平方向、速いのはどっち?
①水平方向
②垂直方向
正解は「②垂直方向」です。付け加えれば上方向となります。垂直方向・上方向へのスピードは、大人が歩く速さの3~4倍と非常に速くて危険ですから、落ち着いて素早く避難しましょう。
チェック5:非常口がココにあるとの意味を示している誘導灯はどっち?
①白地に緑色で、矢印・ドアの形・走る人間・非常口 EXITの文字が表示されている
②緑地に白色でドアの形・非常口 EXITの文字が表示されている
正解は「②緑地に白色のドアの形・非常口 EXITの文字が表示されている」です。1の誘導灯は、非常口へ導くために経路の途中に設置されています。2の誘導灯まで辿り着けば、外へ避難することができます。
まとめ
・火災時には煙による一酸化炭素中毒が最も怖い
・火災時には服装や持ち物にこだわらず、できるだけ早く避難する
・煙は上方向に大人が歩く速さの3~4倍のスピードで進む
・緑地に白色のドアの形・非常口 EXITの文字が表示されている誘導灯の下に非常口がある