カレーライスは大人にも子供にも人気があるメニューのひとつ。夏場には、頻繁にカレーが食卓に並ぶというご家庭は多いのではないでしょうか。しかも、カレーは作りたてよりも、二日目のカレーの方が好みだという人は多数いますよね。
しかしカレーの作り置きは、ウエルシュ菌という細菌に感染するリスクを高めます。正しく取り扱わなければ感染し、健康被害を生じるかもしれないのです。
今回は意外と知られていないウエルシュ菌についてご紹介いたします。ウエルシュ菌は、カレーだけではなくシチューや煮物にも潜んでいるので、年中感染リスクがありますよ。
ウエルシュ菌とは
ウエルシュ菌は、ヒトや動物の腸内や土壌、下水、河川、海など自然界に広く生息しています。健康な人の体内にも存在しているのですが、保菌率は人によって異なります。年齢で見ると、高齢者の保菌率が高い傾向にあるようです。
またウエルシュ菌は牛や豚、鶏などの家畜の便からも検出されているため、これらの食品が汚染されている可能性があります。
ウエルシュ菌の感染について

ウエルシュ菌は熱に強く、高温でも殺菌することはできません。100℃で6時間でも死滅しないとも言われているので、調理時に食品を高温で煮込んでもウエルシュ菌だけが生き残るでしょう。
そして、ウエルシュ菌は12~50℃、特に43~45℃が適温とされており、料理が冷めていく段階で環境が整うと、一気に細菌が増殖します。またウエルシュ菌は空気がない環境を好むので、加熱調理によって中に含まれる酸素が無くなることも細菌が増殖する原因となります。
細菌が大量に増殖した料理を食べると、人の小腸内でさらに増殖します。その際毒素を出すので、健康障害を引き起こすのです。
感染時期は他の食中毒と同じように7~9月に多発していますが、春や冬の感染もあるので、年中注意しなければなりません。
ウエルシュ菌に感染する原因

ウエルシュ菌による感染は、肉や魚、野菜などの煮込み料理が原因になることが多いでしょう。別名“給食病”と呼ばれるように、大量の料理を作る施設や旅館で感染するケースが目立っています。施設内で調理したものが原因となるので、集団で感染する事例が多くなります。一つの事件で、平均83.7名の患者数がいるようです。
施設では前日に大量に料理を作り、次の日まで鍋に入れた状態で放っておくことがあるので、菌が増殖してしまうことが推測できます。加熱すれば殺菌できるという考えがあるのかもしれませんが、先述の通りウエルシュ菌は加熱処理では死滅しません。
感染すると6~18時間程度、平均10時間の潜伏期間を経て、腹痛や下痢を引き起こします。症状は軽度で、食中毒に多い発熱や嘔吐という症状は現れません。一般的に1~2日程度で回復すると言われています。ただし、子どもや高齢者は重症化する可能性があるので注意が必要です。
ウエルシュ菌に感染しないための対策とは
ウエルシュ菌に感染しないようにするためには、加熱調理したものであっても可能な限り早く食べるようにしましょう。熱を加える時は、空気を含ませるようにするといいですよ。
また、出来上がった料理を緩やかに冷ましてしまうとその段階で細菌が増殖してしまうので、食べきれないものは小分けにして速やかに冷ましましょう。氷や保冷剤を使うと、冷えるまでの時間が短くなりますよ。
細菌は気がつかないうちに増殖し、身体に悪影響を与えます。加熱しているから安全だと安易に考えずに、取扱いに気をつけましょう。
まとめ
・ウエルシュ菌は耐熱性
・料理が冷める段階で環境が整うと急速に菌が増える
・小腸内で増殖して毒素を出す
・煮込み料理が原因となることが多い
・施設で調理されたもので感染するケースが目立っている
・大量に作った料理は小分けにして速やかに冷ます
参考サイト
◆東京都福祉保健局「ウェルシュ菌」
◆食品安全委員会「ウエルシュ菌食中毒」
◆NIID国立感染症研究所「ウエルシュ菌感染症とは」